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2025年2月10日月曜日

ウメコバ沢 中央岩峰正面凹角

 








富山から行ける冬のクライミングゲレンデといえば言わずもがな錫杖。近年、早朝駐車場の便が悪くなったとはいえ明神2263峰周辺を要する上高地もよい練習場である。しかし、北アルプスでのクライミングは氷雪の影響を強く受けるがゆえ、フッキングやフットホールドに乗る感触を確かめるように登のが難しいのも事実である。

その点において足尾の岩場は気候はマイルドかつ純粋な岩登りとなるので、爪先の感覚を研ぎ澄ますことに集中できるのがいい。ウメコバ沢中央岩峰正面凹角(大凹角とも呼ばれる)は足尾の看板ルートと称される。登ってみて正しくその通り、ラインの合理性、内容、難易度どれをとっても特級品で楽しいの一語に尽きる。1~3ピッチはクライミングは相応に難しいもののラインは明瞭だし、プロテクションは抜群に良いので悪さは感じない。ドライツーリングするために岩があるのではないかという位に掛かりのいい岩が気持ちよく、とろけそう。4ピッチ目がルートファインディングが必要となり、ラインを誤ると大変難しくなりしかも岩が脆いところに入る。正規ラインでも支点が取りづらくなるようで、実質の核心は4ピッチ目なのではないだろうか。あとは比較的優しいクライミングを2ピッチで稜上へ抜ける。

充実のクライミングの内容と特異な景色は足尾ならでは。このルートが北関東の冬壁愛好家のスタンダードなのだろうか。足尾でマルチピッチ難しい冬壁シリーズが拓かれると面白そうだ。

<アプローチ>
富山からは言わずもがな遠い。上越から下道に降りて湯沢インターから沼田まで行き、山越えで銅親水公園まで行く。大体5時間半くらい。ベースは割と自由に設営できる。かつて鉱毒汚染された川も今は飲水可能である。ウメコバ沢内は要所にフィックスが張ってあるものの傾斜が強いところが多いので出合でアイゼンを履いたほうがいい。クライミング後はフィックスロープの方向へ下降していくと、懸垂下降用のフィックスが現れる。このフィックスで懸垂した後は歩いて取りつきに戻れる。

<装備>
カムを1セット+2番までをもうワンセットあるとよい。トライカムは要らない。ピトンはあったら使える。

<快適登攀可能季節>
多分年中楽しめる。


2023年1月25日水曜日

足尾松木川の岩場 ウメコバ沢 チャンピオン岩稜












足尾銅山は日本公害史に名を刻む地である。一帯は鉱山からの排煙(亜硫酸)による酸性雨や精錬による伐採により禿山となったため出現したという。人間の活動により脈々と続いた自然環境が一瞬で亡くなるのは何だか寂しい。酸性土壌において生じる金属イオン溶出は生物にどのような影響を及ぼすのだろうか。酸性イオン種にも依るだろうが、亜硫酸ガス起因とするならばカルシウムイオンが固定がされると推察される。さらにアルミニウムイオンが溶出することでリン欠乏が生じる可能性も高い。後述するように酸性岩類である足尾では一旦酸性化した土壌はそうそう元に戻ら無さそうである。そうなると植物根の伸長は阻害される。鉱滓由来の高濃度の重金属イオンの存在も見逃せない。さりとて、自然はしなやかで強かである。酸性土壌と化した当地の細菌および真菌といった微生物相は他の地域とは異なっているだろう。特異的な土壌環境が維持されているとすればこの先一風変わった動植物相が現れ、ここにしかない貴重な自然環境となる可能性だってある。この辺は気がかりなのでいずれ文献を調べてみたい。環境を考察するためには無機化学、植物生理、地質など考えることが多く実に楽しい。

松木川沿いの岩場も公害によって出現した岩場だそうだ。ウメコバ沢の岩場は日本とは思えない物凄い景観をなしており、クライミングもとても面白い。白亜紀後期の流紋岩という岩は白山山域を含む岐阜に広く分布している濃飛流紋岩と似ている。松木川の岩場は白山と異なり雪崩によって磨かれていない事、南側からの圧力(少し南は付加体)によりクライミング向きの岩場になったのかもしれない。

チャンピオン岩稜はこの地を代表する看板岩稜。クライミングの内容と景観は素晴らしい。Ⅳ~Ⅴが6ピッチ続いたのち、5.11クラスの岩壁が現れる。以前は5.9程度だったらしいが崩壊により難しくなったとのこと。時間の都合で4ピッチ程で戻ったのでこの岩稜を全て味わっていない。富山からは遠いけど、錫杖とはまた違った味わいのある岩場で頑張ってくる価値は十分ある。何にも増して目新しい環境は想像力を掻き立てられるもので、旅の良さを味わう事が出来る。日光観光と合わせてどうぞ。

<アプローチ>
富山からは言わずもがな遠い。柏崎から一旦国道へ降りて小千谷ICより沼田へ。更に県道を使って山を越えて国道122を経て銅親水公園駐車場へ。そこから工事中の林道を歩いたのち、登山道と化した旧林道を歩く。広い川原の松木沢本谷を歩いてウメコバ沢へ入り口へ。ここは渡渉となる。ウメコバ沢内は大変ありがたいことに、しっかりフィックスが張られている。とはいえ急傾斜の谷を登り、へつるので中々緊張する。チャンピオン岩稜への取り付きは非常に複雑である。中央岩峰正面の比較的広いルンゼを70mくらい詰めてコルへ至り、一旦歩いて下降すると漸く取り付き。各ピッチの終了点にはハンガーボルトが埋設されており分かり易い。下降はクライマーズライトとなるルンゼを利用する。ルンゼ内で傾斜が強いところは懸垂となる。

<装備>
4番までのカムをワンセットで何とかなる。+αで持つならば1番以下が有効。ピトンは使用しなかったが有ったら使えるかも。

<快適登攀可能季節>
多分年中楽しめる。

足尾松木沢の岩場 ジャンダルム左ルート

 




 富山から遠い足尾の中でもウメコバ沢はちょっぴり遠くて億劫。帰りの運転も長いしなぁ~となったらジャンダルムで遊ぶのがいい。ジャンダルムの明確な概念図というのは現状流通していないそうだ。ジャンダルムには中央壁、右壁があるそうだが筆者も良く解っていない。有難いことに大体登れそうなところを行ったら、30mくらいでハンガーボルトの終了点があるの。左ルートの取り付きは浅い凹角から。ハングに抑えられた箇所を右にトラバースする。続くもう一ピッチで壁中の大スラブと呼ばれる領域に達する。ここは中央壁のルートが合流する地点であり、左右にずれることですべてのルートが楽しめる。大スラブ地帯は直上ルートを登ったが、ダブルクラックのスラブがとても面白い。最後の岩峰はげんこつ岩や拳岩と呼ばれている。時間の都合で左から簡単な凹角を登ったが、直登もできるそうだ。クライミング終了後の下降も整備されており、15分で取り付きに戻ることができる。アプローチが容易で終了点のみ明確化されている整備の距離感がとてもありがたい。地元の有志の活動が栃木クライマーのレベル向上につながっているのだろう。

ウメコバ沢のルートは長く難しいものが多い。ジャンダルムは少し短いけど各ピッチの充実感はウメコバ沢と同等である。大人のジャングルジムと思って観光と合わせて気軽に訪れるのが吉。

<アプローチ>
富山からは言わずもがな遠い。柏崎から一旦国道へ降りて小千谷ICより沼田へ。更に県道を使って山を越えて国道122を経て銅親水公園駐車場へ。そこから工事中の林道を歩いたのち、登山道と化した旧林道を歩く。工事中の林道だが先々観光用道路としての活用が検討されているようなので今後の動向は注視したい。ジャンダルムはアプローチで最初に現れる岩場で分かり易い。適当に踏みあとを辿って取り付きまで行き、登り切った後は赤テープと踏みあとを頼りに歩きと懸垂(懸垂用FIXあり)で下山する。

<装備>
4番までのカムをワンセットで何とかなる。+αで持つならば1番以下が有効。ピトンは使用しなかったが有ったら使えるかも。

<快適登攀可能季節>
多分年中楽しめる。