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2019年5月13日月曜日

中華人民共和国 雲南省 黎明の岩場







旅はいいものだ。見たことのない景色、出会ったことの無い人と文化に触れる度にそう思う。しかし、旅には目的が必要だと思う。観光地を巡って消費するだけの旅は全体の印象が薄くなってしまい何だか味気なく、出逢いの心象は弛緩したものとなってしまう。確固とした目的があることで、その手段となった旅に対する感受性が涵養され、出会いに滋味に富んだ解釈が生まれる気がするのである。

その点、フリークライミングは目的として最高だ。山登りが目的の場合、多くのリスク管理を必要とするため時間と頭が目一杯になることが多いが、フリークライミングならば余裕がある。さらに、登山対象となる山は無くても岩は世界中にあるのだ。筆者は岩登りを激烈に嗜好するわけでもないのだが、旅のきっかけとして楽しんでいる。

中国南西部の雲南省その山あいにある村である黎明には大規模な砂岩の岩場がある。岩は素晴らしいクラックが発達しているため、トラッドクライミングに最適だ。フィンガー~ワイドまであらゆるサイズのクラックが幅広いグレードで多数存在している。ここのクラックはインディアンクリークのように同じサイズがずっと続くのではなく、狭くなったり大きくなったりする。と、ユタ州から来たアメリカ人が言っていた。筆者の活動する中部地区には砂岩自体があまり存在しないので、この砂岩の岩壁を見ただけで無茶苦茶感動した。4月から5月の日本の大型連休期がクライミングシーズンという点も会社員にはありがたい。

町から千亀山へのトレッキング、各谷へのトレッキングも面白い。クライミングを少ししかやらない人でも黎明に訪れる価値は十分にある。お隣さん、中国への旅いかがでしょうか。最近日本は迎えるばかりだしね。

<アプローチ>
まず、重要な事は中国ではGoogle、Yahoo、LINEなどは一切使えないという事である。メールの受信すら不可となる。その他SNSなども一切使えない。日本で百度、微信などの中国で使用可能なアプリをインストールしておこう。

昆明長水国際空港から寝台列車で麗江へ、或いは仁川、香港などの空港から麗江三儀空港へ行く。麗江からは乗り合いバスで黎明へ向う。寝台列車を使用する場合C-Trip(trip.com)から座席ネット予約が可能である。ここで予め予約しておけば中国語での説明が必要ないので非常に有効だ。寝台列車内に車内販売があるが、基本カップラーメンしかない。お湯が出るので乗客は皆食べている。麗江のバスの乗り場はホテルで尋ねればわかる。我々は親切なホテルの方に現地まで送っていただいた。乗り合いバスと言っても、ただの中国車のバン。黎明までは大体3時間くらいで到着する。帰りもこのバンに乗って帰る。途中の町の市場で休憩したり買い物をしたりできる。

黎明にはいくつかホテルがあるが、クライマーにはホテルは千里之外(faraway hotel)がお勧めである。

ここでは最新のトポの在庫が常に置いてあるし、The Guardian valleyなど車がないと遠いエリアへは無料で車で送ってくれる。加えて英語でのコミュニケーションが可能だ。二人部屋で1泊50元程度だったと記憶している。部屋の予約はメール、C-trip(trip.com)どちらからも可能。部屋のクオリティは程々。Wifiも飛んでいる。

朝晩の食事は黎明の食堂でとても美味しい食事が安く味わえる。四川系の食事なので基本脂っこくて辛い。メニューは存在せず、食材を指差しで適当に調理して貰う形式なので、食べたい料理の中国語発音を覚えておいたほうが良い。食料品や日用品は売店が幾つもあるので困らない。なので、日本から食糧を持ち込む必要は無い。こういった商店と食堂では一切英語が通じない(One,twoすら)ので頑張る必要がある。

黎明の夜は暗い。唯一のナイトライフは広場で行われる少数民族音楽に合わせた踊りだ。夜、クライマー以外の観光客は全員この広場に居ると考えて間違いない。


黎明の町にはATMがあるので、VISA,Masterなどクレジットカードキャッシングで現金は下ろすことが可能。商店や食堂ではクレジットカード支払いは不可だった。

<装備>
フリークライミング用具一式。トポはネットでも購入可。https://exploreclimbrepeat.com/

<快適登攀可能季節>
ベストシーズンは3月~5月だそう。11月~2月は寒いけど日向はいいらしい。それ以外のシーズンはモンスーンの影響を受ける雨季となり適さない。

<博物館など>



昆明市博物館
昆明市内には反日の香りが漂っている。それはかつて、第二次世界大戦時に日本軍との戦闘のための空軍基地があったからだ。アメリカ軍と中国軍の連合部隊でその名も「FLYING TIGER」。昆明市博物館ではFLYING TIGERが常設の大きな展示となっており、反日教育の拠点となっている感がある。定期的にFLYING TIGERの功績を称えるイベントを催しているようだ。博物館にはそのほか、美術品や沈没船からの遺品などを展示している。科学系の展示が少ないのが残念であった。





麗江古城:世界遺産である。千と千尋の神隠しの町並みモデルとなったとも言われる不思議な城下町。商店は勿論、仏教と道教が混合した仏画やお城もあり見所満載である。個人的には城の周りに沢山置いてある盆栽に感動した。盆栽も純粋な日本文化ではないのだと改めて感じた次第である。なお、ここで土産を購入すると高くつく。古城外でも大体同じものが安く売っている。

2016年6月7日火曜日

尼厳山の岩場






クラックを利用して登る下部壁とボルトルートの上部壁からなる岩場。下部壁は#5までの大き目カムで支点を取るが、登り自体は意外にフェース的である。そのため、カムの構造としくみを学びながら登るのにぴったり。時々ジャミングを求められる点もよい。上部壁も高難度ルートは無いが面白いルートが多いと思う。終了点が無いルートもあるので、懸垂下降をするつもりで取り付いたほうが無難。

岩場から周囲を眺めた時、山並みから切り離された不思議な山が見える。かの有名な皆神山である。海底火山由来のこの山は、低重力地帯があったり、ピラミッドがあったり、旧日本軍の塹壕があったり、クロサンショウウオが生息していたりと、月刊ムー的な場所で隅に置けない山だ。

<アプローチ>
最短では国道8号線から148号線で白馬を経由し山越えで長野市に入る。上越まで行って国道18号線を利用すると遠いが片側二車線で快適。美しい海岸線のドライブも情緒があってよい。前者で3時間30分、後者は4時間で駐車場に着く。駐車は池田の宮を利用させていただいた。より広い場所が望ましいが、どこに駐車すればいいのかはよくわからなかった。登山道を20分ほど歩いて岩場に向う。

<快適登攀可能季節>
南面で藪も多く6月以降は不快と考えられる。晩秋と春先が良さそう。

<博物館など>
池田満寿夫美術館:池田満寿夫は長野市出身の多彩な芸術家である。ぶちまけてくる感じの作風で時に会心の一撃をくらう。

真田宝物館:池田満寿夫美術館のお隣。屏風に甲冑に茶道具と縁の品にお目にかかれる。

北斎館:小布施町にある葛飾北斎専門美術館。北斎は富嶽百景だけではない。北斎最晩年の大作、祭屋台の龍&鳳凰、男浪&女浪を観るだけでも訪れる価値はあると思う。とても80代が描いたとは思えない。

北野美術館:日本画、西洋画、蒔絵にギリシヤの陶器まで展示している美術館。企画展も四季を意識した風流なものが多く落ち着いた雰囲気。

水野美術館:キノコで有名なホクト株式会社が運営する日本画の美術館。横山大観の無我を所蔵していることで有名。庭園も素敵である。菱田春草の絵が印象に残った。市街地にあるので行くには渋滞覚悟で気合がいる。

<温泉>
松代荘:酸化鉄の析出が凄い塩分濃度の高い温泉。浴槽の入り口は析出によってハング帯を形成しており入浴時の足運びが難しい。加えて浴槽内は濁っており底が見えないので、慎重にクライムダウンして着水するようにしたい。

2016年6月1日水曜日

敦賀門ヶ崎 海の岩場







沢のせせらぎも風情があるが、潮騒も又格別な情趣がある。それがクライミングと一緒ならば殊更素晴らしいものだ。とは言っても、城ヶ崎、大堂海岸、神須ノ鼻といった代表的シークリフは富山から非常に遠い。北陸3県では福井に蘇洞門や門ヶ崎に東尋坊といった海岸の岩場がある。その辺のエリアについて、クライミングの内容とスケールはさておき風情は特級品で間違いない。門ヶ崎の岩場は花崗岩質の岩場で、風化により脆い部分が多いものの、節理が豊富なのでラインは適当に選ぶことが出来る。探検気分で岩塔に立てば気分爽快。稜線の風も良いが潮風もまた格別なのである。

<アプローチ>
富山からは高速を利用して敦賀まで行き、白木海水浴場へ。漁港に駐車し、海岸線を西にトラバースすると岩場にたどり着く。うっかり水際に荷物を置くと潮にさらわれそうになるので注意。

<装備>
そこらじゅうにクラックが有るので、カムやナッツを持っていけば適当に登る頃が出来る。風化が激しいので、よく見極めて取り付きたい。ボルト支点のチェックは慎重に行いたい。釣り好きならば竿を持っていくと良い。

<快適登攀可能季節>
波が高くないとき。あんまり暑くないとき。

<博物館など>
敦賀原子力館:門ヶ崎の直ぐ近くには高速増殖炉もんじゅがある。原発の利用は賛否が有るだろうが、その原理と工学的な機構は興味深い。冷媒にナトリウムやカリウムを使用する合理的で大胆な発想に感心した。漏れちゃったけど。

2016年5月22日日曜日

青海の岩場


北陸で石灰岩のフリークライミングが楽しめる大変貴重な場所。取り付まで、アプローチ徒歩15歩という雑穀谷を凌ぐ驚異的な利便性である。不肖者でフリークライミングのルートの良し悪しを語れるほど登りこんではいないが、楽しい岩場だと思う。

石灰岩地帯の土壌および河川のpHは塩基性に傾いている。土壌のpH平衡は凄く複雑だろうが、炭酸カルシウムが雨水と二酸化炭素によって
CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
と反応し、さらにCa(HCO3)2が電離してCa(OH)2となって塩基性に傾いていると勝手に理解している。

加えてカルシウムイオンは他の陽イオンより陰イオンと結合しやすいので、土壌は植物体に必要なリン、鉄などの元素が少なくなりがち。そのような環境下で生育可能な植物のみ生き残るので、石灰岩地帯の植物は一風変わっている。直ぐ横の黒姫山はドリーネ地形を擁しており植物観察にはもってこいの山である。

さらに忘れてならないのはマイマイ類である。蝸牛の殻は主として炭酸カルシウムで構成され、その原料が豊富な石灰岩地帯には多くの種が生息している。そして日本の石灰岩地帯は分断されているので、生物の移動が極端に制限される。それゆえ石灰岩地帯では地域ごとの固有種が多い。

ポケットホールドが豊富なルートのキーポケットに蝸牛が鎮座していた。優しく手に取り、あっさりテンションして観察。フィボナッチ数の潜む螺旋は息を呑む美しさで震えた。ロープなんかぶった切って、指を鳴らし、腰をくゆらし、タップを踏んで、シャウトしながら大地を賛美をしたい苛烈な激情に襲われるが、堪えた。この岩場は人の往来が激しいので注意が必要である。

<快適登攀可能季節>
3月~5月、9月~11月。午前中は日が当り暑い。午後は風も抜けて涼しい。

<グルメ>
糸魚川では近頃ブラック焼きそばなるB級グルメの普及に勤めている。初めて食べたが、イカ墨パスタのようで美味しかった。

<博物館>
翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

2016年5月17日火曜日

雑穀谷の岩場







岩資源に乏しい北陸のクライマーにはおなじみの場所で、休日はとても賑わう。常連が多いのでさながらサロン。コンパクトに纏まった岩場ながら多彩なルートが楽しめる。アプローチ0分、ロケーション最高なので、ただのんびりしに行くにも良いし、家族連れもお勧めできる。紅葉の時期は本当に素晴らしい。昨年から堰堤工事の計画が持ち上がっていて、この貴重な岩場がいつ埋まってしまうか解らない状況である。自由登攀人の存在を主張するために、是非県外・遠方の方も訪れて頂きたい。

<装備>
ボルトルートだが節理が豊富なので多くのルートがカムやナッツで登れるルートが多い。

<快適登攀可能季節>
4月中旬~11月。暑くても登れないことは無いが、オロロが出没する時期はお勧めしない。

<温泉>
ホテル森の風立山、吉峰グリーンパーク

<博物館>
立山博物館:別館まんだら遊園の異空間を一度は味わってほしい。
カルデラ砂防博物館:僕の好きな、治水の恩人ヨハネスデレーケの展示もある。

2016年4月25日月曜日

冠着山 坊抱岩






春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえてすずしかりけり。と詠んだのは道元禅師で、直感的ながら実に滋味に富み、お気に入りの句である。滅多矢鱈とルートガイドに掲載されるようなルートを登ったり、未踏の場所で極端にリスクの高い山登りだけをやっていては、四季折々自然の恵を知らない野暮天と化すのは必定。峻峭と甘美、どちらも知ってこそ粋といえよう。

坊抱岩がある千曲市はあんずの栽培が盛んで、春には桃色の花を一斉に開花させる。その眺望は一目十万本といわれるほどで、筆舌に尽くしがたい。クライミングがどうのというより、この景色を楽しみに行く。岩登りを口実に山里の美しい春を感じに行ってはいかがだろうか。冠着山はお月見の名所としても古くから親しまれている。春宵、月明かりのナイトハイクも歴史情趣があってよい。



<アプローチ>
最短では国道8号線から148号線で白馬を経由し山越えで長野市に入る。上越まで行って国道18号線を利用すると遠いが片側二車線で快適。美しい海岸線のドライブも情緒があってよい。坊城平キャンプ場を利用すると静かでいい。

<快適登攀可能季節>
ぼこだき岩本体は日当たりがよくて暑いことが多い。岩はちょっと脆い所もあり注意したほうがよさそう。山頂へは岩場経由でも行けるが、手前トラバース道を使ったほうが解りやすい。

<博物館など>
あんずの里:地区で最も広いあんず畑。普通の時間に訪れると人が多すぎるし、駐車料金も取られる。早朝に行けば無料で桃色の海を独り占めできる。

長野県立歴史館:各時代を再現した大掛かりな展示が見所。信濃の国で発達した物流方法、中馬が興味深い。

つつじ山公園:国道18号沿線豊野にあるつつじ公園。新緑とのコントラストが鮮やか。あんずの花が終わると、次はこちらのつつじが楽しみになる。

長野県は美術館、博物館、科学館などの数が全国で東京に次いで第2位。雨が降っても退屈しない。雨降らないかな、とさえ思う。

<温泉>
万葉超音波温泉:戸倉上山田温泉街にある温泉銭湯。リーズナブルな価格と謎のネーミングがいかす。

2016年4月10日日曜日

瓢ヶ岳






仏師界のニコラ・ジャジェールこと円空上人は瓢ヶ岳の麓、美並村で生を受けた。木食戒誓願達成のため各地を遊行し、その逗留した土地の信仰に合致した仏像や神像を残した。64歳で入定し即身仏となったという。作風は作成時期によって異なるが、概ね簡素化された造形と、木目の暖かさが特徴でほっこりするものが多い。その理不尽なまでの荒行、愚直な生き様に憧れを抱く人は多いはずだ。私もその一人である。

瓢ヶ岳、高賀山、今淵ヶ岳は高賀三山信仰の場である。かつて修験者が修行に励んだ場所だ。溶結凝灰岩の岩屋に身を横たえ、修行に勤しんだのだろうか。今や瓢ヶ岳はハイカー、ボルダラーに人気の山となっている。山頂は開けていて展望が良い。道もよく整備されていて心地よくクライミングのレストがてらハイキングにおすすめ。

<アプローチ>
下道で高山からせせらぎ街道(県道73号)経由で郡上まで。さらに国道156号を経由して片知渓谷に入る。富山からおよそ4時間。

<装備>
クライミングシューズが有ればボルダリングを楽しめる。どちらかというと、ボルダリングのついでに山頂に行く感覚。課題はどれも面白い。さすが日本屈指のボルダリングエリア。

<快適登攀可能季節>
3月~11月。あまり概念が無いので何とも言えないけど。紅葉の時期は素晴らしかった。

<博物館など>
美並円空ふるさと館:作品を年代別に並べてあり、作品の変遷を辿ることが出来る。併設されている美並生活資料館も充実している。

円空研究センター:作品の展示は無いが、円空の足跡や信仰についてのパネル展示が纏まっており円空の人となり全体像を把握するにはよい展示。

千光寺:高山にある寺院。傑作、両面宿儺を所蔵。マイフェイバリット神像である。

関市円空館:同じ関市に洞戸円空記念館があるが別物。展示はこじんまりとしている。近くの弥勒寺に入定塚があるので円空フリークならば64歳円空の最期の場所は訪れるべき場所。