ラベル 上の廊下周辺 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 上の廊下周辺 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年8月17日金曜日

黒部川 口元ノタル沢









北アルプスのど真ん中に鎮座する赤牛岳へ突上げる口元ノタル沢は赤い花崗岩に秀麗な小滝を幾つも落とす秀渓である。地形図では入り口からゴルジュ記号が付いているが進退に窮するような地形ではない。全体的に調子よく小滝を登り時々大滝を高巻く感じである。夏期の場合2000m二俣付近から雪渓が現われるが、谷の形状もあってかそれ程悪いことにはならないと思う。これで終わりかと思っていた上部では天国への階段かと思うような気持ちのよい滝が現われる。ここはすこぶる爽快なのでロバートプラントばりにシャウトしたくなる。上部のガレには閉口するが、山頂が余りに素晴らしいので苦労は直ぐに忘れてしまうだろう。遡行の小気味よさと3000mクラスの山頂へ突上げるスケール感が魅力だ。

赤牛岳からの縦走もすばらしいが、温泉沢を直接下降すると面白い(登山道ではなく沢を降りる)。沢の中の岩盤は安山岩質のマグマに取り込まれた石がぽこぽこと川床を覆っているのだ。


これらの石は川原の石が火山活動によって流出したマグマに取り込まれたのだろう。雲ノ平火山が活動する以前、黒部川の本流は現在の東沢だったそうだ。河川略奪の歴史に思いを馳せつつ、その原因となった火山の温泉に浸かる。これ以上幸せな時間ってあるのだろうか。

<アプローチ>
上の廊下を遡行するか、下降して取り付くのが簡単である。幕営適地は随所にある。1740m付近には岩小屋ルーフに守られた完璧な場所がある。


2100m以下ならば薪はどこも豊富で幕営は快適だ。

<装備>
カム少々、或いは適当なパッシブプロテクション。

<快適登攀可能季節>
7月下旬~10月。標高が高いので秋は寒いかもしれない。

上ノ黒ビンガ正面壁 







夏の黒部川上流はバラエティに富んだ朗らかな登山計画を組める山域である。縦走、沢登り、岩登り、釣り。どれも明るくて爽やかで壮大なスケールが魅力だ。その岩登りパートの重要な位置を占めるのが上ノ黒ビンガである。ハングだらけで弱点の無い下ノ黒ビンガに対し、上ノ黒ビンガは6ピッチ程度のフリークライミングが楽しめる今風の壁である。下部2ピッチはスラブクライミングだ。特に2ピッチ目はすっきりとした緊張感の有るスラブで(5.8~5.9?)興味深い。ここはスモールカムとボールナッツが有効である。その後ちょっと草付きっぽいところから気持ちの良いハンドクラックを4m登り、ハング帯の下、外傾大テラスへ至る。ここは右へトラバースし顕著なフレークのあるルンゼに入り、藪っぽいところを越えて、大チムニーのあるテラスに出た。この見た目恐ろしい大チムニーは実は簡単で面白い。後日調べたら、だいたい正面壁オリジナルルート付近を登ったようであった。適当にフリーで弱点を突いていくと似たようなライン取りになるのだろう。現代のクライミング感覚から言えば難しくないので(脆い岩の処理、支点構築の技術は要する)もっと登られてもよい壁だと思う。何せ富山市内の壁だしね。

この壁を登る事そのものより、どこから来てどこへ繋げるかを考えるのが面白い。周辺には素晴らしい頂上の数々の他、高層湿原に温泉、カール地形と興味深い場所が沢山ある。黒部五郎カール内でボルダリングするのも気持ちが良い。これらを一筆書きにすることで、ひとつひとつの心象は一層鮮やかに刻まれる。そんなわけで、登山計画のアクセントとして上ノ黒ビンガ周辺の岩場を取り入れてみてはいかがだろうか。

<アプローチ>
上の廊下を遡行するか、下降して取り付くのが簡単である。スゴ二ノ谷を遡行してからスゴ沢を下降するのも面白いアプローチである。登攀終了後は同ルート下降が安牌。下部スラブ帯はピトンかナッツを使って下降する。左岩壁側を歩いて下降する事も可能だと思う。中ノタル沢付近が幕営適地と言える。天候が良ければ壁の近くで泊まる事もできるだろう。

<装備>
カム1.5セット、ナッツ少々、トライカム少々、ピトン数枚、ボールナッツの小さいサイズが有効。キャメロット#4~5は必要ない(あったら使えるけど)。

<快適登攀可能季節>
無雪期の壁を楽しむのであれば8月~10月。なお、冬期の正面壁は下記写真のようになっている。南東向きなのでコンディションを掴むのは非常に難しいが、下部スラブ帯にベルグラがしっかり張れば楽しい登攀となるだろう。このとき、筆者らは正面壁と右岩壁を分かつルンゼを登った。



2015年12月10日木曜日

上ノ廊下







沢登りの醍醐味が詰った・・・とか、日本でも指折りの沢登りルート・・・・とか。様々な形容詞が飛び交うのが上ノ廊下である。筆者は1度登り、1度下った。只管川原歩きが続く冗長なルートであるのは間違いない。大らかな気持ちで稀有な自然に親しむのがこのルートの良さなんだと思う。続けて縦走するのが楽しそうだ。水量が多い年で渡渉が厳しいと盛り上がる。水量の少ないならば登るより下ったほうが楽しいのではないかと思う。

<アプローチ>
黒部ダムから奥黒部ヒュッテまで歩く。この路が半端ではなくダルい。湖岸をウネウネと迂回し、高巻くので、気が狂いそうになる。折立で終了する場合は真夏の登山シーズンのバスを利用すると良い。

<装備>
フローティングロープだけで良いと思う。あとスリング少し。

<快適登攀可能季節>
8月~9月

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ


2015年10月24日土曜日

上の廊下周辺のピーク









黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳など北アルプスの中でも行きにくいピークを縦走するのも良いでしょう。ただ歩くだけとは言え、稜線は厳しく美しい。12月~3月の場合どのピークもきっと人は居ません。静かな山です。いたら友達になって一緒に登ると良いでしょう。

<アプローチ>
鷲羽、水晶、赤牛を登る場合ブナ立尾根から縦走するとピストンはしんどそうだし、稜線行動が長いので天候によっては殆ど行動できない。烏帽子から南沢岳へ縦走し、奥黒部ヒュッテへ下降。読売新道を登り、黒部五郎まで縦走して打保に降りるのは楽しそうだ。
新穂高周辺のバリエーションルートから入山するのも興味深い。以前に抜戸南尾根から上の廊下入りしたが、登攀要素も織り交ぜれるので最高だった。笠ヶ岳の雪稜を辿るのも良い。

富山大学から葛温泉まで下道でおよそ4時間くらい、糸魚川まで高速を使うと2時間30分くらい。
新穂高までは多く見積もって2時間。


<装備>
歩くだけならば、ピッケルは一本で良いと思う。念のため各自スリング3本ほど。細引き程度で良いのでロープは持っていったほうが良い。バリエーション入山の場合はルートによる。

<快適登攀可能季節>
12月下旬~4月中旬。冬の稜線は行動できる天気が限られる。晴れていても風が強すぎる場合は厳しい。春ならば稜線漫歩で最高の山旅になるはず。

<温泉>
打保に降りる場合は割石温泉。





上の黒ビンガ







上の廊下の遡行者は多いが、上の黒ビンガを登ったという話は聞かない。確かにこんな山奥に鉄の塊を持っていくのはしんどい。でも担いで行ったなら、神様の機嫌次第で素晴らしい経験が出来るに違いない。我々は正面壁右のルンゼを登った。正面壁本体の冬季は未だ為されていない。岩は硬い印象を受けた。正面壁上は巨大雪田があり雪崩の危険性が非常に高い。それもこの壁の魅力を倍増させている。ルンゼならば氷が少しは有る。3月はどうなっているのだろう。正面壁のスラブ帯は埋まっていると考えられるが傾斜の強い場所は露出していると思う。



<アプローチ>
入山場所はいくらでも考えられるが、我々は安易なブナ立尾根を選択した。車は葛温泉にお願いして駐車した。1日500円だったかな?正直に申告しましょう。大町側は比較的積雪が少なく乾いている(当県比)、富山側の湿雪ハードラッセルが初日に無いのは嬉しい。そこから赤牛岳まで縦走し薬師見平へ地形図の緩傾斜帯を狙い下降。歩きを交えながら懸垂3回でビンガだ。登攀終了後にどこへ降りるかは色々。我々は鍬崎山へ縦走しあわすのスキー場へ下降した。

富山大学から葛温泉まで下道でおよそ4時間くらい、糸魚川まで高速を使うと2時間30分くらい。

<装備>
どこを登るにしろ残置物は一切期待しない方がよい。季節によるがカム1.5セット、トライカム少々、ナッツ小さいの、ピトン各種。スクリュー1本くらいが適当か。もちろんひん曲がった今風のアックスが有効。

<快適登攀可能季節>
12月下旬~3月上旬。南面のため、高曇り時が良いでしょう。

<温泉>
ホテル森の風立山、吉峰グリーンパーク(いずれもあわすの下山の場合)
車回収時に葛温泉に入るのも一興。そして帰りは大町の登山博物館へGO。


















薬師岳東面第2稜







冬の上の廊下周辺ほど山らしい場所はそうそう無い。薬師の東面はスッキリとした雪稜が幾筋も伸びている。一見して一番難しそうな第2稜だったが、スタカットしたピッチは3Pでさほど困難ではなかった。でもそんなことはどうでも良くて、深い山でモゾモゾする出来るお勧めの場所なのです。
薬師東面を登り、スバリ岳西面、針の木西面を登り大町へ抜けるのも魅力的な計画だろう。


<アプローチ>
入山場所はいくらでも考えられるので割愛する。2稜は立石から取り付くので、高天原で岩苔小谷を横切って下降するか、高天原峠から立石に伸びる尾根が最短となる。赤牛岳を踏んでから下るのも良い。我々は飛越トンネルから入山し雲の平を経て後者の尾根からアプローチしたが、藪と細い岩稜で以外に時間が掛かった。

飛越トンネルの場合、打保の集落まで車が入る。そこから徒歩でトンネルまで。一切除雪されていないのでラッセルがきつい。富山大学から打保の集落まで1時間40分。

<装備>
薬師東面であれば特別の岩のギアは必要ない。スリングを各自6本あれば十分。ピッケルも攻撃的なものは必要ない。緩やかな山なのでスノーシューが有効。

<快適登攀可能季節>
12月下旬~5月上旬。

<温泉>
割石温泉(神岡に下山する場合)