2020年3月14日土曜日

穴毛谷 本谷中央壁(右峰)







 数ある穴毛谷の岩壁の中でもすっきりとして見栄えがするのが中央壁(右峰岩峰)である。穴毛谷の岩壁は呼称が統一されていない場所があるが、この岩壁もそうである。中央壁というのは岐阜登攀倶楽部によって命名されたようだが、登山大系では右峰岩壁となっている。穴毛谷の真ん中に位置して存在感があること、左峰とはアプローチする谷が異なることを勘案すると中央壁を推したくなるが本稿では併記しておく。
 中央壁(右峰岩峰)は、地形図で「雷鳥岩」の記載がある相似峰の北側が右峰、その直下に高差250mスケールで広がっている。幅広の壁で下流側から取り付くほど登高距離は長くなる。岩質は流紋岩質の溶結凝灰岩で概ね固いが、スラブ状なので弱点に乏しい。ルンゼ状にはベルグラが張り付いているが日当たりが良い立地のため、心もとない色をしている。そのうえ、雪田上部からの雪崩が頻発するのでベルグラの利用は天候を踏まえて慎重に判断するのが賢明だ。
 筆者らは壁中央の凹状を辿りながら右上しつつ、上部の岩壁へ到達後は傾斜の強い小リッジから草付きへを登り右峰直下の稜線へと抜けた。草付き交じりではあるが、部分的に傾斜の強い岩場もあり興味深い登攀であった。雪の要素が多いので、迅速な処理ができないと思いがけず時間がかかるだろう。東面のため、雪のコンディションが悪いことが多く侮れない。稜線直下の雪庇越えも醍醐味となるが崩壊を誘発させないように細心の注意を払いたい。
 アイゼン登攀には難儀な壁ではあるものの、カンテラインやベルグララインは魅力的であった。さらに対岸のドーム壁も大迫力で垂涎ものである。週末一日でここまでスリリングな登山ができる山はそうそう有るもんじゃない。アプローチとする本谷は実に雪崩が怖い谷ではあるが、きっとまた訪れるだろう。穴毛谷にはまだ謎が沢山あるからね。

<アプローチ>
地形図で示されている蒲田川へ分岐する手前から川を渡ると都合がいい。あとは地形図通り二ノ沢本谷を詰める。下山はクリヤ谷が早い。雪が閉まっていればクリヤの頭から谷へと一直線。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン少々、ラインによってはスクリュー

<快適登攀可能季節>
1月~3月。高曇りの日を狙いたい。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2020年3月3日火曜日

穴毛谷第二尾根









穴毛谷第二尾根はスケールのある雪稜登攀が楽しめる好ルート。掘削の苦労を伴うキノコ雪は連続する訳ではなく、2~3軽いアクセントとして登場する程度なので、爽やかな雪尾根歩きがメインとなる。崩壊ルンゼを上がってからP3付近までが少々ややこしい箇所だ。知らず知らずの内に傾斜の強い箇所や氷化した場所に出くわすのでアイゼンへの履き替えやロープの結束は早めに行いたい。ラインの繋がりが分かり難い場所もあるのでルートファインディングにも注意を払いたい。P4からコルへは雪を支点にした懸垂下降となる。以降ルートは明瞭で時々現れる急雪壁をダブルアックスで適宜こなしていく。P1への登りは右側は凹状になっていて雪崩のリスクが有るので尾根側を注意して登りたいところだ。P1を超えると稜線まではもうあと一息。稜線は岩稜ではなく難しくはないが、雪庇の張り出しには十分注意したい。週末一泊二日で第二尾根から笠ヶ岳を登ることができれば中々の充実感を味わえることだろう。

<アプローチ>
地形図で示されている蒲田川へ分岐する手前から川を渡ると都合がいい。崩壊ルンゼは新穂高からも一目瞭然だが、取り付きは暗いと分かりにくいかもしれない。幕営場所は東面で風が弱い上、適地が随所にあるので困ることはないだろう。2199mの右稜と左稜のジャンクションピーク付近が幕営点としてはちょうどいい。一泊二日でトップアウトしてから笠ヶ岳へ行くには結構な頑張りが必要となる。下山はクリヤ谷が早い。雪が閉まっていればクリヤの頭から谷へと一直線。

<装備>
P4の懸垂用に竹ペグか土嚢袋が必要。藪が豊富なのでスリングのみでOK。

<快適登攀可能季節>
1月~4月中旬。雪が安定している時期とタイミングでないと取り付きにくい。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。