2016年2月27日土曜日

古川岩屋谷










池原ダム周辺はゴルジュと大滝の宝庫。硬い岩と適度な傾斜が沢ヤの全身の細胞から登攀意欲を掻き立てるのだ。古川岩屋谷の出合い滝はダムの湖岸道路沿いの橋からその秀麗な姿を望める。F1から続く連瀑はスケールも見栄えも一級品。どれもフリークライミングで楽しめる。日当たりも良いので遡行は快適そのもので、小気味良く登れるお勧めの沢。

<アプローチ>
富山からは大阪周り、名古屋周りどちらも遠い。大阪から国道309号で行った。紀伊自動車道が出来て名古屋周りのほうが早いかもしれない。

<装備>
カム一式、ナッツ、ピトン各種、あぶみ(一応)、クライミングシューズ

<快適登攀可能季節>
7月~10月。良く知らないけど。

<博物館など>
橿原昆虫館:正統派昆虫館。蝶の放し飼いも温室もある。石川のふれあい昆虫館に似ている

天理市:日本人ならば必ず訪れるべき場所。おぢばがえりしましょう。小生は全く無信仰な輩だが本部を訪問してみた。輪唱の小唄に合わせて座りながらパラパラのような振り付けを同時多発的に舞っている。その姿に厳かな信仰を感じ深く感動した。街の若者も元気で、常人ならば目を背けたくなる汚れた沢ヤにも明るく挨拶してくれる。



2016年2月24日水曜日

大塔川 黒蔵谷









泳いで取り付いてクライミング上陸する、沢登りの最も盛り上がる場面が続く極上の沢。水量と沢の大きさも絶妙なのでほぼ総て直登突破が可能だ。深いゴルジュではないので森の息吹も心地よい。地球に生まれてよかったー。となることは必至である。あと、帰りの林道で悪態をつくのも。

<アプローチ>
富山からだと北陸自動車道で名古屋、名古屋から紀伊自動車道を使い尾鷲まで。そこから国道利用して川湯温泉から林道終点まで。オール高速道路利用で富山からおよそ7時間くらいで入渓点。海外に行った方が楽なんではないかと思うがいく価値は有る。

<装備>
ウエットスーツ、ライフジャケットが有ると楽。殆どフローティングロープで対応可能。一つ大きな滝があって巻くことになる。巻きはそこそこ悪め。そこでダイナミックロープを使用するかはその人次第。カムとかナッツとか基本いらない。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。暑い時期にガンガン泳ごう。富山と違ってアブがいない。夏休みのリゾートにいかがでしょう。

<博物館など>
熊野神社本宮大社:世界遺産の紀伊山地の霊場と参詣道。神仏習合と修験道の信仰は誠に興味深い。神社そのものはいたって普通の雰囲気。併設された小さな博物館で信仰について学べる。蔵書も渋い物もある。

<グルメ>
道の駅おくとろ:食堂では1080円という安値でビュッフェスタイルの食事が可能。種類、質ともに高いので食欲旺盛な沢ヤに最高。また食べに行きたい。

<温泉>
湯の峰温泉公衆浴場:1800年の歴史を持つ温泉。大浴場は250円と破格の値段。温泉街の雰囲気も最高である。
源泉は日に七色に変わるといわれるので有名。これは溶存ケイ酸の粒子径の成長によると考えられている。小さな粒子状態ではレイリー散乱優位、粒子の成長に従いミー散乱優位となり、青~白色に変化する。恐らくその他コロイド粒子の分散状態によっても色彩は変化している。因みにつぼ湯は700円で30分間交代制なので変化を楽しむことが出来ない。

紀伊半島に火山が無いのに温泉が湧いているのは、フィリピン海プレートの浅い部分で圧力による脱水作用が起こり、熱水が生じるためと考えられている。なので、浸かっているお湯は大地の由来かもしれない。地球に生まれてよかったー。

2016年2月21日日曜日

錫杖岳 P4 チムニールート








入り口に大きなチョックストーンがあるのが印象的。下部の岩登りからチョックストーン下に入るとベルグラがばっちりが張っていた。凹状を利用して気持ちの良いミックスクライミングとなる。氷が発達していれば純粋なアイスクライミングとなるだろう。その上は見た目より悪い草付き混じりルンゼを登り、P4肩へ抜ける緩傾斜ルンゼに合流する。緩傾斜ルンゼに出ると正面にある立ったルンゼを少し触ったが、上部のチムニーに大サイズカムが必要そうだったので退却。このルンゼがおそらくダイレクトルンゼ。緩傾斜ルンゼを少し登り、左側に繋がるルンゼへ入る。恐らくこれがチムニールートの本流である。ベルグラが張っていれば快適なチムニーを登り草付き凹角へ抜けるとP4の肩に出る。

<アプローチ>
槍見から登山道。槍見まで富山大学からおよそ1時間50分。

<装備>
ひん曲がったアックスと縦爪のアイゼンが有効。直上するチムニーは大き目のカムが効きそうだった。

<快適登攀可能季節>
1月~3月上旬

<温泉>
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2016年2月17日水曜日

イワンヤ沢







ゴルジュの景観は素晴らしい況や石灰岩をや。イワンヤ沢は滝洞谷と並んで本州石灰岩ゴルジュの代表格。水が流れている石灰岩ゴルジュは弥太蔵谷のように側壁がつるっつるになり突破不可能になりがち。そこを絶妙に登らせてくれるイワンヤ沢。右俣はスラブ状の滝が多い。左俣は井戸底ゴルジュに滝が続く。
 この石灰岩地帯は南北に走っており、尾勝谷塩沢の枝沢と同じ由来と考えられる。東側に行くに連れて堆積物が新しくなっているので、プレートの移動方向が推し量られ興味深い。そして南アルプスのここ10万年間の隆起速度は日本で最速なのだ。温暖化で雨量が増え続ければ今後100万年の間に南アルプスの硬い岩盤域はゴルジュストリートと化している可能性がある。遡る機会が望めないのが残念である。

<アプローチ>
安房トンネルから木祖方面へ。権兵衛トンネルを通って高遠まで行く。そこから戸台方面へ。戸台ならば富山からむちゃくちゃ遠くはない。30分ほど歩いて木々に囲まれた平凡な出合い。左も右も楽しい。どちらかを登り尾根を乗り越し下降し周遊可能。一泊で行って二俣で泊まるのも素敵。戸台の岩場に行くのも面白そう。

<装備>
カム一式、ナッツ、ピトン、あぶみ

<快適登攀可能季節>
6月~10月。水が冷たいので初夏と秋は注意したほうがいいと思う。

<温泉>
高遠温泉さくらの湯:地域密着型温泉。確か食堂もあった。

<グルメ>
ソースカツ丼:何気なく食堂で頼んで聞いたらソースで煮込み漬け込み派、漬けない派とキャベツを敷く派、敷かない派があることをはじめて知った。あとロース派、ヒレ派と有るそうだが近年どの店も両方用意している模様。伊那周辺はソースで煮込まずキャベツを敷く派。

2016年2月13日土曜日

烏帽子岳~阿彌陀山








北陸の雪稜ルート入門としてお勧め。展望も素晴らしい。積雪状態さえ良ければ日帰りでも楽しめる。一泊の行程で鉢山と昼闇山も登り笹倉温泉へ下降するのも楽しそうだ。早川乗越まで行かないとエスケープは難しいで取り付く際の雪質判断は慎重にしたい。

<アプローチ>
砂場の集落に停車。雪が多い時期は除雪の邪魔にならないように注意する。谷を詰めて前烏帽子とのコルから東稜を辿る。阿彌陀からは早川乗越より吉尾平へ下降。アケビ平は植林されていて遠目にみてもそれと解る。そして林道が敷設されている。砂場集落まで国道8号線経由で2時間30分くらい。車が二台あると笹倉温泉にデポしてお風呂にそのまま入れる。

<装備>
プロテクションは総てブッシュで可能だと思う。

<快適登攀可能季節>
1月~3月上旬。雪がバッチリ付いているときが良いと思う。

<温泉>
笹倉温泉:入浴料700円(休日は800円)。お風呂は露天風呂、大浴場、内風呂と3種類あって入り口は別になっている。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。糸魚川では近頃ブラック焼きそばなるB級グルメの普及に勤めているが、いまひとつ正体が掴めていない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。親不知道の駅の食堂は夕飯時は閉店しているので期待してはいけない。

<博物館>
富山への帰りしな、糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

2016年2月9日火曜日

戸隠山 西岳北西稜










業界用語で「美しいライン」という言葉がある。幾年か山登りを続けた者同士であれば、概ね共通認識が出来上がって通じ合うが、考えると意味不明な言葉である。いざ新入会員と山に行く段になり、「このライン惚れ惚れするくらい美しいだろ。」「良く分かりません。どこが美しいのでしょうか。」「すっきりして綺麗だから美しいんじゃねえか。」などという無根拠な同語反復をしていては、準備の段階で貴重な将来の相棒に猜疑の念、懐疑の心が湧いてしまい、初めての共同作業が覚束ない事は必定なのである。では未経験者や初心者にどのように説明すればよいのだろうか。私見ではあるが概ね以下のような条件が満たされていれば、業界人はかの言葉を用いるようだ。


1.登る行為が頂やその至近で終了する

2.山の隔絶性(環境要因を含む)および相対的な高度

3.極端に単純である、あるいは極端に複雑である

1は完結性の問題であり、未経験者でも比較的理解は得られやすい。文字のとめ、はね、はらいを重視するのと同じである。2は相対的な価値の問題で、独立性と換言すれば良いだろうか。誰しも孤高の存在に憧れるし、似通った物の価値は下がる。居並ぶ山々の中で最も高い山は見栄えするし、苛酷な環境での試練は人の心を動かす。3は尾根とルンゼで事情が変わるようだ。雪の尾根はキノコ雪やヒマラヤ襞を纏いギャップを備えた方が好まれる傾向にあり、ルンゼは一筋で真っ直ぐな方が好まれる傾向にある。例えるならばNeil PeartとAl Jacksonのドラムプレイは全く異なるがどちらも違った旨みがあるようなものか。

さて、前置きが長くなったが西岳北西稜である。この稜の地図を眺めてみよう。上記1.2.3の条件を十分満たしているように思える。戸隠山で最も高い西岳に唯一突上げる尾根で、取り付くには冬季無人地帯の裾花川を遡行しなければならない。そして上部は岩場マークといくつかの小ピークとギャップを備えている。それゆえ憧れ続けた尾根であった。登攀内容はというと、いわゆる今風の「美しい」登りではなく、さながら沢登りで万人受けはしないかもしれない。それでもこのラインの美しさは揺ぎ無いと思っている。里に下りれば木曽義仲伝説や紅葉伝説など鬼無里の歴史も思い出に彩りを添える。ただ、新人が登攀内容に呆れて、信頼を失墜しないよう、先述の美についての言及は「いずれ解るようになる。」がベストアンサーな気がする。

<アプローチ>
奥裾花ダムから林道を歩き尾根に取り付く。下山は基本P1尾根。積雪状態次第では適当なルンゼを下り上楠川を下降することも可能。白馬から国道406号線を行くと積雪状態次第では怖い。天候状況に応じて東側から入山することも検討するほうがよさそう。
富山から国道8号~国道406号経由で4時間30分くらい。

<装備>
部分的に岩登りっぽい所も有るが、基本オーソドックスな雪稜。念のためピトン少々。
草付きダブルアックスを多用する。

<快適登攀可能季節>
1月~2月。寒いとき。雪が多いとき。

<温泉>
鬼無里の湯:とんでもないところにあるが、綺麗で良いお風呂。値段も510円とリーズナブル。

<グルメ>
国道18号で行く場合、途中のニューミサという食堂で定食を注文するとご飯お代わり無料。
味も美味しい。

2016年2月3日水曜日

尾勝谷 塩沢









南アルプスの好ルート。左俣も右俣も大きな滝が続き当然面白い。氷の形状は限界があり、凍った滝やツララは結局どこも同じになりがち(Helmcken Fallsは凄いけど)。となればあとはスタイルや風情の問題である。塩沢の支流にあるゴルジュは素晴らしい。側壁は高く反り返っていて海外のスポートミックスクライミングエリアのようだ。そして壁にはボコボコと謎の窪みも散見され不気味で地球外生命体の体内に入っていくような気分。そのゴルジュに一筋の脱出口、一条の氷。まさしく最高のロケーションの一つである。氷の高さが100mくらいあったら最高だけど。

理想のロケーションをもう一つ。

大寒波が日本を襲い東京都心ではビルの貯水槽と水道管が各地で破裂。あふれ出した水は直ぐに凍て付き、コンクリートジャングルは忽ち氷の城塞となる。水道局も不測の事態に対応が遅れ、氷は発達するばかり。僕は残り少ない有給休暇を取って始発の北陸新幹線かがやきに乗り、通勤ラッシュを掻き分け六本木まで行く。六本木ヒルズ森タワー。IT長者とセレブを横目にいつもの週末のようにギアを準備し登り始める。勿論、窓を傷つけたり、業務の邪魔にならないよう登攀ラインはカンテ沿いに取る。高差約200m,地上53階の森美術館へフェアな手段で辿り着き、オフィスレディーに一杯お茶を頂いて颯爽と館内へ向う。「お客様、恐れ入りますが、館内でのアイススクリューの携行は認められておりません。」

早く来ないかな。大寒波。

<アプローチ>
安房トンネルから木祖方面へ。権兵衛トンネルを通って高遠まで行く。そこから戸台方面へ。戸台ならば富山からむちゃくちゃ遠くはない。4時間くらい。年末年始に嫌というほどラッセルした後、気分転換にいい。

<装備>
アイススクリュー8本~10本くらい。

<快適登攀可能季節>
1月~2月。良く知らないけど年末年始も凍っていることも有るらしい。雪が多いと埋まってしまう滝もある。

<温泉>
高遠温泉さくらの湯:地域密着型温泉。確か食堂もあった。

<グルメ>
ソースカツ丼:何気なく食堂で頼んで聞いたらソースで煮込み漬け込み派、漬けない派とキャベツを敷く派、敷かない派があることをはじめて知った。あとロース派、ヒレ派と有るそうだが近年どの店も両方用意している模様。伊那周辺はソースで煮込まずキャベツを敷く派。

2016年2月2日火曜日

犬上川 滝洞谷









沢ヤ、穴屋ならば地質図で石灰岩地帯を探した経験が有るだろう。石灰岩の谷の底は深く、側壁はオーバーハングしてさながら井戸の中に迷い込んだ気になる。それは日常から切り離された体験で感動的だ。滝洞谷は期待を裏切らない。春や秋は水が涸れて遡行は洞窟探検気分。大雨の後はシャワークライミングが楽しめるだろう。厳冬期のクライミングも静かで楽しそうだ。石灰岩の魅力はこの岩が生き物に由来するからであろう。連綿と続く命の積層をげしゃげしゃになって感じよう。

<アプローチ>
国道8号線だと福井あたりの信号連続帯で辟易する。高速利用で彦根まで行くと速い。3時間くらい。ゴルジュを抜けて水が現れてからは読図を慎重にして茶野のピークへ。そこからうっすらとした踏み跡を探して大君ヶ畑へ降りる

<装備>
カム一式、ナッツ、ピトン各種、クライミングシューズ

<快適登攀可能季節>
5月~11月。さむーい年の冬に登っても面白そう。大雨の後のシャワークライミングもしてみたい。

<博物館など>
彦根城:言わずと知れた国宝。博物館には井伊家の収蔵品が多数。勇敢に戦った赤甲冑、茶道具、湖東焼、能面と展示は多岐に渡る。どれも素晴らしいので必見。ひこにゃんは雨天時屋外に現れない。3度行ったが一度も出会えていない。近年春画で話題沸騰の月岡 雪鼎はこの辺の出身。足跡を辿ろうとしたが、作品が散逸しており不可能だった。

芹谷:フリークライミングの岩場。シーズンは賑わっているようだ。ダイアモンドダストが印象に残っている。