2016年7月31日日曜日

梨谷川 美ヶ谷








富山の沢入門として必ず名前が挙がる谷であり、非常に短いもののその内容はコンパクトに纏まっている。その小川のような流れは人間には丁度いい塩梅で体に馴染む。云わば、海外旅行で現地のご馳走をたらふく食べるのもよいが、宿に戻りインスタント味噌汁を啜るとほっとするような感じである。そのため四季折に触れては遡行したくなるのである。

名前の由来となった赤いナメは、酸化鉄を含む流紋岩系ではないか考えている。閃長岩(赤御影)やチャートに見られる赤色の成因は酸化鉄によるものらしい。鉱物単位ではアルミニウムやマンガンによる発色があるようだ。梨谷川周辺は大笠山のスラブと似たスラブが所々露出している。もしかしたら由来が一緒なのかもしれない。

<アプローチ>
国道156号線側から行こうとすると、九十九折の道で嫌になる。国道304号線側のほうが行きやすいように思う。たいらスキー場を過ぎ、建物が近くにある林道へ入る。滝マークの有る沢が美ヶ谷だ。下降は送電線巡視路を利用し、細尾トンネル経由で戻る。送電線巡視路は縦横に走っているので方角には注意が必要。

<装備>
大滝を登るのであれば念のためロープ。プロテクションは取りずらいので後続用。

<快適登攀可能季節>
5月~11月新緑と紅葉の時期が素晴らしい。早い時期だと残雪が残っているが、この谷にはそれも悪くない。

<博物館など>
縄ヶ池:五月連休あたりに水芭蕉が満開になる。駐車場から砺波平野の散居村を一望できるのも魅力。5月ならば田植えの時期、水田の水面に反射する夕日を眺めたい。10月ならば実りの時期、赤く染まった揺れる稲穂を堪能したい。

福光美術館:福光は棟方志功が6年ほど疎開していた土地である。そのため作品が多くの作品が残されている。企画展も渋く見逃せない。別館の愛染苑も訪れたい場所である。厠にまで絵を描く棟方志功の自由な人柄が感じられる家だ。

南砺バットミュージアム:日本プロ野球の往年の名選手のバットが触れる。メジャーリーガーのバットもある。タイカッブとベーブルースが使用したバットを触って大興奮!親父さんも気さくで良い時間を過せる。

井波彫刻総合会館:井波彫刻は県外にそれほど認知されていないように思う。豪快かつ繊細な技術に感動する。瑞泉寺も行っておこう。

2016年7月26日火曜日

打波川 よろぐろ谷~桧谷











越美山地の地名はどうも気になる。よも太郎山、たんどう谷、ゴトゴト谷、カサバノ谷、願教寺山、薙刀山。すっとぼけた系から男気系にサンバ系と多彩である。特に桧谷の右岸に位置するよろぐろ山への思いは特別な物がある。この山は漢字では与呂九呂山と記載されるのだが、筆者にとってこの漢字の並びが曲者であり、眺めてからおよそ2秒でゲシュタルト崩壊が惹起され、文字とは一体何ぞや、という索漠とした気持ちにさせられる。それ故、ここは物凄いエネルギーを持った場所なんではないかと勝手に思い込んでいたのである。

桧谷の一支流である、よろぐろ谷はナメの谷として地元では親しまれている。小さな沢で水量は少ないが、藪の合間に釜とナメの連続し趣を感じることが出来る。岩質は石徹白の倉谷に似ている。意外にガンガン登る谷で掛かりの良いフレークホールドを繋いでいくのが楽しい。登りつめた稜線はブナの大木が並び感激する。杉峠から桧谷へ降りるのも名前が針葉樹繋がりで何だか愉快だ。因みに杉峠に杉は生育していなかった。白滝から上部500mは絹のようなナメが続く。この絹ナメがこのラインの白眉である。やはり与呂九呂山は並みの場所ではなかった。

<アプローチ>
最短距離、最安値を狙うならば国道8号から国道157号経由で鳩ヶ湯方面へ。下小池の駐車場から林道をわずかに歩くと左側に白滝への遊歩道が有る。それを15分くらい歩いて入渓した。出合いから入渓してもよい。白滝を登りすぐ出会うのがよろぐろ谷である。杉峠からは赤布が打ってありそま道が続いている。

<装備>
白滝の登りでは一応ロープがあったほうがよい。水量が多いと登るのは厳しそう。

<快適登攀可能季節>
6月~11月。南面なので比較的早くから楽しめるのでは。秋が最も良いはずだ。

<博物館など>
白山神社の大カツラ:打波の道路沿いにある白山神社にあるカツラ。なんでも樹齢1300年とのこと(本当かしら)。折り重なった枝が時の流れを感じさせ趣がある。

白山平泉寺:白山信仰の越前側の馬場である。鎌倉~室町時代にかけては一大宗教都市であったそうだ。美濃の長滝寺、加賀の白山比咩神社も含めて訪れたい場所である。杉の並木と苔が美しい。


勝山城博物館:勝山城と越前大仏は異様なデカさで周囲の景観に全くなじんでいない。どちらも相互タクシーの創業者である多田清氏が私財を投じて建てらたそうだ。甲冑などの武具や中国の刺繍が展示されているが、うーん。有り体に述べると外観負けした博物館である。

白山恐竜パーク白峰:福井の恐竜館より鄙びていて風情がある。展示は普通。公園が併設されていて子供は楽しい。川の対岸に手取層の化石帯が露出しており観察可能。博物館のイベントで採集もしている。

<温泉>
鳩ヶ湯:2013年に以前のご主人が亡くなられ、以降、岐阜の会社が運営するようになった。最寄で日帰り入浴可能。2016年8月中旬から宿泊も可能になるとのこと。

白峰温泉総湯:昔は安くて汚くて良い銭湯だった。綺麗になって値段も上がった。でも良い温泉。

2016年7月21日木曜日

古川 滝谷カクレ滝





姿は屹立としていて目の前に立ったときの威圧感は凄まじく、間抜けのように口を空けてぽかんとしてしまう滝だ。下部は水を浴びながら比較的快適でスリリングな登攀が楽しめる。上部は左岸のブッシュに入って計4Pで落ち口に抜けたと思う。水量が多いときに登っており、上部の垂直帯の状況は解らなかった。渇水の時期に壁を見たらまた違ったラインも見いだせそうである。でもこの滝には水を激しく落とす様が似合っている気がする。自然の状態はまちまちである。一期一会である。どこを登ったとか、小さい事は気にせず、間抜けは間抜けらしく、その折々の自然に感謝し、ずぶ濡れになって笑い転げていれば良いのである。

<アプローチ>
国道425号の橋を降りて少し歩いて取り付く。滝が近いのでロングドライブ到着後、軽く一本という流れが適当かもしれない。滝を登り上部へ抜けても面白そうだ。滝だけ登る場合は懸垂であっさり帰る事が出来る。富山からは大阪周り、名古屋周りどちらも遠い。紀伊自動車道が出来て名古屋周りのほうが早いかもしれない。富山からおよそ6時間位だったかしら。

<装備>
カム、ナッツ、ピトン各種、あぶみ(念のため)、

<快適登攀可能季節>
5月~11月。土地勘がないので良く知らないけど。

2016年7月19日火曜日

熊野川本流













豊饒の渓である。その長い流域中に堰堤などの人工物は皆無で山に入ったことを深く感じる事が出来る。原生林の植生は多彩で温かみのある森が続く。渓相は飛騨帯らしい岩がゴロゴロしており、釣りの好ポイントを作り出している。稜線の藪もかわいい物で、嫌気が差すほどではない。遡行も難しくは無いので、初心者同士でも渓の魅力を体感できるだろう。ハコ滝手前までならば家族でキャンプするのもよいかもしれない。泊まりでゆったりとこの沢の夜を楽しみたい。

<アプローチ>
稜線へ詰めあがるとなると、車が二台必要な上、有峰林道料金を合計3回分支払わねばならない。祐延ダムのゲートに一台デポして、高頭山登山口から導水管の最上部まで歩き、三枚滝方面へ降りて入渓。稜線から祐延ダムへ下降する沢を適当に下降すると、祐延ダム湖畔を歩くことが出来る。車の手配が面倒な場合は同ルート下降、あるいは山越えで長棟川方面に下降するのも面白い。

<装備>
ハコ滝(一番最初の滝)右壁を登るのであればロープとカム。登らない場合は念のため30mくらいのロープがあれば安心。

<快適登攀可能季節>
6月~9月。岩魚と遊ぼう。

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

2016年7月13日水曜日

海谷 駒ノ川











「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」

自らの理想とする最期を詠んだ西行の和歌である。なるほど、早春の梅にようやく二,三輪の花が開く頃、枝の上には初めてメジロが囀る。緩やかに新しい始まりが感じられる頃にひっそりと死を迎えるとは粋な最期だ。自然の中での遊びに死はつきものだと思うが、冬山やハードゴルジュなどの厳しい自然環境で死ぬのは、ありきたりで興ざめだ。静かな自然の中で死をゆっくり楽しみたいものである。

沢ヤにとっての理想の最期の場所はやはり渓だと思う。5月下旬から6月上旬の新緑の頃が相応しい。芽吹きを終えて輝き始めた木立の中、雪解けの水分を含んだ柔らかい苔の上に倒れる。遠ざかる意識の中、冷たい水を避けるため、這い蹲って羊歯の若芽の上に横たえる。それは日差しを浴びた布団のように柔らかく香しい場所だ。やがて成長する羊歯林はその骸を優しく隠しその場になじませてくれる。高原川の芋生茂谷や赤谷あたりが良いだろう。

コメディタッチの最期ならば紅葉の頃が良い。山里の秋の小沢で木の実を探す熊に出会う。驚いた熊は走ってこちらに向ってくる。慌てふためいてドロの斜面を急いで登ろうとするが滑落して死んでしまう。当の熊は川原に亡骸を運び衣服を引っぺがすだけで立ち去る。そこへ赤く色づいたカエデの葉が両乳房に落ちて、懐かしの欧米ポルノのようになって発見されたらなんと面白い事だろう。五箇山や白川郷といった山里が適地だと思う。

海川の支流駒の川は絶対に死にたくない場所だ。岩壁が発達しているためか、沢の保水力は乏しく出水は早いと考えられる。水は泥と植物由来のポリフェノールの為か茶色く、飲むとちょっと苦い気がする。角礫凝灰岩の巨岩は妖しく、変に侵食されたゴルジュと大滝も相まって地獄のような雰囲気だ。このような激しい自然はやはり生あるものが闘い思索する場所に相応しい。下部の連瀑帯は巻くことも出来るが、積極的に登る事でゴルジュ突破の良きトレーニングとなる。ホールドはどれも甘く少し緊張する。大滝の巻きも条件次第では厳しいものとなるはずだ。とにかく日帰りで楽しむには十分に楽しい地獄である。仲間と連れ立って口笛鳴らし地獄八景生者戯と洒落込もう。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道から最初に横切るのが駒ノ川である。登りつめたら登山道を利用し山峡パークに戻る。山峡パークまで国道8号線経由で2時間くらい。

<装備>
カム少々。ピトンをナイフブレードからロストアローを少々。クラックはそれほど発達していないので出番は無いかもしれない。連瀑帯は海谷らしい滝が多く楽しい。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。雨天時の遡行も良い演出となるだろう。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

2016年7月12日火曜日

王滝川 鈴ヶ沢東股









御嶽山の沢は荒々しさと麗しさの二面性が魅力だ。御嶽を代表する綺麗渓である鈴ヶ沢も例に漏れない。柔らかに水を流すナメの岩盤中に取り込まれた礫が火山活動の激しさを感じさせる。深い釜を持った小滝と明るいナメがひたすらに続く渓相は伸びやかで晴れがましい。美の不感症になってきた頃に現れるガレ地帯は強烈だ。ついさっき落ちたんじゃないのかと思う巨大な岩がゴロゴロかつ、岩は赤茶色でおどろおどろしい。このギャップが堪らないのだ。下降の中股は上部でナメが出てくるものの全体としてゴーロ。下降向きの沢だと思う。

<アプローチ>
高山から国道361号線、県道20号経由で王滝村へ。鈴ヶ沢横の林道を上がり、川幅が狭くなる最初の橋にある噴火規制ゲートの手前に駐車する。噴火が終息して規制が解除されれば奥まで入れる可能性は有るが、そこそこダート道である。そこから堰堤が連続するので次の橋まで林道を歩き入渓するのが良い。中股を下降するのであれば、小三笠山北側の広いコルに抜ける沢を詰めて下降すると困難無く中股に入る事が出来る。富山市から凡そ3時間半くらい。

<装備>
大滝の巻きが悪い場合に備えてロープとスリング。岩のギアは殆ど必要ないと思う。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 ウォータースライダーが連続するので盛夏に行くと盛り上がる。

<温泉>
けやきの湯:県道20号沿いにある静かな旅館。日帰り400円と地域最安値(筆者調べ)。雰囲気もお湯の質も良い。


2016年7月5日火曜日

初河谷~倉谷










石徹白という目立たない土地柄のせいか初河谷が話題に上ることが少ない。しかし八反滝を筆頭に端整な滝と2つのナメを擁する白山でも指折りのキラキラ渓だと思う。地形図では4つの滝マークがあり、その最後の滝からナメが続く。序盤は白い岩に水が輝く大きなナメ。後半は赤みを帯びた岩盤に緑の苔がびっしり生えたナメ。八反滝の巻きはやや悪いものの全体を見れば入門者向けの谷ではないか。稜線は深い藪に覆われているので下降は谷になる点も良い経験になるはずだ。

倉谷は一本北側なだけでこんなに違うのかというほど岩質が違う。ザラザラ触感の橙色ゴルジュに赤マーブル模様が施されていたり、ポコポコと丸っこい礫が疎らに埋まっていたりと楽しい。堆積岩と火山岩が不連続に出てくる印象である。




ここで出会う岩魚はヤマトイワナだが紀伊半島のキリクチと同じく遺伝的に珍しいタイプと聞く。もし釣っても、繁栄を祈念しながらリリースするとしよう。

<アプローチ>
車を八反滝遊歩道の駐車場に停め遊歩道を歩き八反滝から遡行を開始する。下降は北側の倉谷を降りる。初河谷を詰めあがって丸山まで登ると笹薮が酷いようだ。より快適に楽しみたいのであれば、苔ナメを堪能し戻って標高1400mの支沢から稜線に上がると殆どヤブを漕ぐ事なく倉谷に降りる事が出来る。早めに出発すれば余裕を持って日帰り可能だと思う。富山からだと高鷲インターで降りて石徹白へ向う。東海北陸道利用で富山市内からおよそ2時間

ところで白山中居神社は美濃馬場~白山中宮長滝と繋がる白山禅定道の基地として天長9年(西暦832年)から有るらしい。白山信仰が泰澄によって体系化されたのが西暦717年頃だそう。木曽義仲も参拝したそうな。

<装備>
最初の滝の巻きとナメの手前にある滝が少し悪いので念のためロープ

<快適登攀可能季節>
7月~10月

<博物館など>
日本土鈴館:土鈴(どれい)とは土で出来た鈴である。優しい音色と暖かい感触が売りのアイテムだが、有っても無くても生活に支障は無い。そんな代物をとことん集めた白鳥にある博物館である。全国各地から集めた量は圧倒的だ。土鈴だけではなく河童や観光提灯、郷土玩具を展示してるが時おりエロもコソっと。その辺りとってもチャーミング。

石徹白の大杉:立ち枯れながら、なお屹立する姿に涙腺が緩む。登山の終わりに必ず訪れてほしい。