2023年8月30日水曜日

釜無川 神宮川本谷



 






山が近くにあるとその山ばかり登ってしまう。もし、富山県にしか登山仲間がいなかったら半径60㎞くらいしか出歩かないかもしれない。

神宮川本谷というのは、釜無川の支流で甲斐駒ヶ岳を流れる尾白川の一本北の沢である。この存在は全然知らなかった。アイスクライミングで稀に氷結する飛竜という氷があるが、それはこの神宮川の支流のようだ。ざっくり鳳凰三山から甲斐駒ヶ岳は南アルプスでは数少ない花崗岩帯で、この沢も花崗岩の白が美しい。風化しやすい花崗岩で川床の土砂の量は凄まじい。そう述べると北陸であれば沢登り的興味が下がりそうなものだが、ここは滝が多いので遡行は楽しく快適そのもの。北陸と異なり雪崩による土砂堆積がないためなのだろうか。山の隆起速度の違いなのか、はたまた花崗岩の質の違いなのかは分からない。雰囲気としては同じ花崗岩の高瀬川支流の沢によく似ている。快適に楽しく登っていくと大岩山南側の登山道へこれといった藪漕ぎもなく飛び出す。カラマツの森では富山では見かけないキノコが多く生えていた。そういえば、富山県ってキノコがあんまり生えていない気がする。上信越には多いのになぜなのだろうか。見慣れない楽しい森歩きを続けると、砂漠のような日向山山頂に到達。景色がすごくいい山頂で感動する。謎の仕事道が縦横に走っているようで、それを利用して下山した。

日帰り沢で近くにクライミングができる岩もある。サントリー白州工場を見学と併せてバカンスには最適である。忘れてはならんぬバカンスを。

<アプローチ>
尾根サントリー白州工場の横、南側の林道を終点まで進む。林道終点にはゲートがあり、広場になっているのでそこに駐車する。下山は日向山まで登山道を歩き、日向山北東の広い尾根を少し歩くと、謎の仕事道に合流する。ふみ跡をたどっていくと、北東尾根から北側に続く尾根に続き、どういう訳か元の林道まで戻れる。尾根にした草が生えていないのでどこでも歩ける。下手すると迷うので注意。なお、車でアプローチする林道途中には面白いボルダーがある!これも忘れずに遊ぼう。

<装備>
念のためロープ。

<快適登攀可能季節>
5月~11月 雪が少ないので長い期間楽しめるのではないか。

2023年8月28日月曜日

大納川和佐谷左俣(早稲谷)









 沢登りをするなら、登山道が無く低くて小さい山が連なったところが魅力的。たくさん人がいる山は最大公約数が規範となり息苦しく感じることも屡々。独歩曰く、山林に自由存す。勝手な解釈だが自由なのが山林であり、自由でなければ街なのだと思う。

 さて、大納川和佐谷をご存知の富山県民はどれほどいるのだろうか。もしかしたら私が唯一で1/1,000,000の可能性もある気がする。大納川和佐谷とは国土地理院の地図上で早稲谷と記載されている谷であり、この左俣がシャワークライミングを快適に楽しめる谷として知られている。入渓してから小滝がこれでもかっ!というくらいに続く。すべて流心付近を直登できるので積極的に楽しみたい。しかし、ゴルジュ地形ではないなのでいくらでも逃げられるのでその時々のコンディションに合わせてどうぞ。岩に張り付く苔の演出もあり気分は上上々であっという間に進む。標高1000mから地形図通り穏やかな渓相へと変わる。あまりに森が美しいので泊りたくなるはず。ゆらゆらしていると藪漕ぎは殆どなく稜上に達する。あとは藪を漕いで、おりやすい支流を選んでクライムダウンするのみ。筆者らが下降した谷は湧水の谷でとても爽やかだった。

小さい沢だが内容は緩みがなく面白い。降水量が多くなっても楽しめるのも嬉しいところ。転進や旅と合わせて是非どうぞ。

<アプローチ>
和佐谷林道の二俣地点に駐車して左俣の林道をしばらく歩いて、林道が左に曲がる地点から入渓する。もちろん、林道を歩かずに沢中を歩いてもOK。1286.4m三角点は御伊勢山という名前がちゃんとある山だ。下降はこの山の北側の広いピークの西尾根へと少し下降してから1210m付近から北西斜面を下降して支流へ入ると簡単に下りられる。

<装備>
念のためロープ。

<快適登攀可能季節>
6月~10月。シャワークライミングが醍醐味なので暑い日がいいと思う・

<博物館など>
大野市立歴史博物館:図書館の横にある博物館で調べ物をするのに最適な環境。大野藩の復興のため大金を投じた西洋式巨大帆船、大野丸が数年で沈没パーになってしまった話。こういう塩辛いお話にこそ歴史を学ぶ意義がある。なお、図書館にある福井県沢ガイド越の谷は必読。

打波川 亥向谷左俣








福井県の方言は多様で面白い。富山と石川の言葉は割と似ているけど、福井まで行くとなんだか東北のような言葉になっていく。不思議だなあと思って改めて福井の地形を眺めていると、大野盆地の形と大きさも不思議に見えてくる。奥美濃と白山から水を集める急流2水系が集まるため、土砂が堆積したのだろうか。経ヶ岳の火山活動もその成因とも言われる。経ヶ岳は福井県内に独立して存在する最高峰である(県境ではない山最高峰)。決して大きくない山だけど、平坦地や急崖&岩崖マークが地形図に示されており、厭が応にも気になるのである。

そんで、何が言いたいかというと経ヶ岳に登りたいということです。経ヶ岳を巡る沢で最も急峻で面白そうなのが亥向谷左俣であった。亥向谷左俣は東面でとても明るい谷で、きらきらと輝く水が美しい。全体の遡行難易度は高くない。行程には余裕ができるので序盤からシャワークライミング、深い釜で泳いだり自由に楽しもう。1090mの二俣に着くと、右俣はどう見ても一直線で面白くなさそう。左俣へ進むと小さなゴルジュ小滝となり面白い。やがて門のような岩が立ちはだかり面白い光景に。八ヶ岳のような脆い岩の演出する地獄風情が百点満点である。割合快適な笹薮を漕いでいると突然山頂へと到着。黄金色の稲穂に揺れる大野盆地は人間そのものであった。

経ヶ岳へ登路として亥向谷左俣は最高だと思う。明るく快適な沢であることはもちろん、登り終えてぱっと眼前に美しい人里が広がる演出が本当に素晴らしい。そして、登って分かったことは経ヶ岳の溶岩は多分東側にはあんまり流れていないこと。最後の火山活動の火口は西側にあったことが推察される地形だったので、これはいずれまた別の沢から登山し見てみたいものだ。

<アプローチ>
亥向谷林道を行けるところまで進んで駐車する。入渓点まで車で行くことはできないので、適当な所から歩き始める。左俣は標高760m付近右岸から経ヶ岳へと流れる支流である。車の回収が相当厄介あるのは否めない。登山道を利用する前提で保月山へと通じる展望台駐車場へ一台駐車してから入渓するのが簡単。一台の場合は1609m、経ヶ岳北峰へ行ってから支流を下降するのが妥当だろうが、同じ道を歩くので精神的につらい。

<装備>
登攀具は不要。何ならロープすらいらない。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。残雪とオロロのシーズンは辛い。

<博物館など>
大野市立歴史博物館:図書館の横にある博物館で調べ物をするのに最適な環境。大野藩の復興のため大金を投じた西洋式巨大帆船、大野丸が数年で沈没パーになってしまった話。こういう塩辛いお話にこそ歴史を学ぶ意義がある。なお、図書館にある福井県沢ガイド越の谷は必読。

2023年8月16日水曜日

早川 一ノ倉川

 
















頸城山塊はゴルジュの宝箱である。早川支流の一ノ倉川もその一つ。この山域の特徴である堆積岩と安山岩質溶岩が織りなす洗練された廊下を味わうことができる。遡行内容としてはテクニカルな遊園地系。クライミングはそれなりに難しいが、効きの良い支点は取り易いためフリークライミングを思いっきり楽しめる。ゴルジュ内は突破一択の地形であるのも素晴らしい点である。泳ぎと小さな小滝が連続する中で落ちてもドボンだから全然怖くないのもいい。この調子でこの沢に対して賛辞の言葉は幾らでも挙げられそうだ。とにかく行ってみ、むちゃんこ楽しいから!

<アプローチ>
焼山登山口へ駐車し焼山川へと続く林道を歩く。焼山川へ出てから一旦下降して一ノ倉川へと入る。幕営箇所は1230m付近、1330m付近。下降は水無川へ向かうのが合理的。ただし、崩壊が激しい沢なので雨天時の通過はお勧めできない。下降で大きな滝が3つ現れるが、最後の滝の懸垂では古い残置ハーケン二本となる。残置の利用を回避する場合、灌木をで懸垂することとなるがその場合は50mロープ2本が必要な距離となる。


合理性には欠けるが、水無川を登り返し登山道を利用すれば雨の日でもエスケープ可能であり、懸垂や雪渓の有無には関係ない。

<装備>
ピトン少々、カム0.3~2。足回りはフェルト推奨。ロープは50m一本でOK。盛夏を過ぎるとウェットスーツがあったほうがいい。ショート荷揚げやお助け用にアブミがあると便利

<温泉>
笹倉温泉龍雲荘:秘湯系高級温泉というイメージがある。入浴料はちょいと高いが話のタネに一度はどうぞ。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。雪渓の具合を考慮すると9月がベスト。そうでなくとも虫が少なく快適な時期がよい。

<博物館>
フォッサマグナミュージアム:ジオパークの町糸魚川の基幹博物館。何とか時間を捻出し必ず訪れたい

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

黒薙川 北又谷漏斗谷






















 北又谷は登山大系曰く本邦屈指の美渓。その美渓からつるべ落としの如く連瀑を連ねる漏斗谷へ繋げれば本邦屈指の総合沢登りルートとなるのは自明の理。そして、そのような所を沢屋が訪れるのは瞭然の極み。

 北又谷本谷下部はご承知の通り、水との熱いバトルとなる。最も注意したいのは大釜淵で、どんなに水量が少ない状況でもロープをつけて臨みたい。花崗岩の白とエメラルドグリーンが眩しく酩酊するぜ。漏斗谷の出合から直ぐに7m滝が現れるがこれは簡単に巻ける。以後、非常に楽しいゴルジュ連瀑をわいわいと進む。8m+15mの二段滝を右岸から巻いたら第一ゴルジュが終わったようだった。第二ゴルジュはシャワークライミングと泳ぎが連続して益々うふふ~んなワールドである。ゴルジュの最狭部抜け口にあるハンドジャム&フットジャムがバチ効きクラックが気持ちいい。第二ゴルジュを抜けてゴーロになる辺りから突如花崗岩が消失し、やがて泥岩のような黒い岩となり崩壊が進んだゴルジュ地形へと変化する。この急変する至福を何卒どうかよろしく味わってほしい。以後、短い区間に蛇紋岩や何らかの変成岩など岩質が多様化する。第三ゴルジュは耕作滝からスタート。今度は左のチムニーをワイドクラック風に楽しめる。岩の隙間から抜け出るのは沢でもクライミングでも登山道でも幸福感湧き出でるのは何故だろう。びしょ濡れシャワークライミングの後、耕作滝級のでかい滝が現れる。滝の右側にある傾斜の強いクラックチムニーを登ろうか逡巡したが、下部クラックがフレア気味のハンド~フィストで支点が取れずヌルヌルだったので右岸から巻くことを決定。この草付きの巻きがこの谷で唯一悪いところだった。核心はこれで終了。その後も嬉しい楽しい小滝を登り、どえらい急な階段状を登ったら想像以上に長い詰めである。
 さて、今山行の筆者らの目的は1791m南と長栂山西の秘境お池巡りを堪能し、湖畔にてペルセウス座流星群を観測することである。抜群のロケーションの中、天候に恵まれ人生最高の観測会を無事終了。湖面に浮かぶ無数の星明りは生涯忘れることはない。

 水量と天候に恵まれる好コンディションだったため、悪さはほとんど感じることはなく楽しいばかりの遡行であった。完成度抜群の沢登りは漏斗谷で是非どうぞ。

<アプローチ>
小川温泉の登山者駐車場からタクシーを使って越道峠まで行き、石碑横にある謎の登山道を利用する。そこから支流を下降して魚止滝下に出る。筆者らは1083.9三角点と1097のコルから下降した。下山は朝日岳を経てイブリ尾根登山道を利用する。そこそこの幕営点は第一ゴルジュの手前、第一ゴルジュを抜けた後、第二ゴルジュを抜けた後、1800m付近と割合豊富である。筆者らは幕営可能点の見当がつかずに、時間にむっちゃ余裕があったが第一ゴルジュ終了後標高1000m付近に泊った。それでも、2日目に頑張れば下山できそうな時間であった。渇水期、足並みの揃ったパーティーで北又谷入渓初日を早朝にすれば第二ゴルジュを抜けるところまで行けるはず。そうすれば一泊二日で行けると思う(速くて楽しいかどうかは別でね)。

<装備>
カム0.4~1.0、ピトン少々。足回りはフェルト推奨。クライミングシューズ不要。荷揚げ用にフローティングロープを持って行ったが、なくても良いかも。ライフジャケットがあると安心だがなくてもいい。盛夏を過ぎるとウェットがあったほうが快適。

<快適登攀可能季節>
8月~9月 水量、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし

<温泉>
小川温泉元湯:ホテル小川と不老館、あなたはどちらに入る。

<博物館など>
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。シャクナゲとツツジの時期が素晴らしい。謎の置物も気になる。

朝日町歴史公園:縄文時代の不動堂遺跡が再現されている他、江戸時代町屋であった旧川上家の家屋が当時の状態を保ったまま移設されている。ここでは朝日町名産のバタバタ茶を自分で点てて試飲できる。12月~3月は閉館するので注意。

朝日町立 ふるさと美術館:昨今の大正アートブームで再注目の竹下夢二の作品を所蔵している。江戸~大正期、朝日町の泊は宿場町で大いに栄えており、その盛り場に夢二が訪れていたようだ。妻たまきとの破局事件の舞台は宮崎海岸だ。この情事の続きは朝日町の図書館で。

百河豚美術館:野々村仁清の作品を数多く展示している。デフォルメされた鶏が描かれコップもあり、仁清のモダンな感性を感じる事ができる。他にも話題の伊藤若冲や、尾形光琳に酒井抱一といった琳派ビックネームの作品も展示。

下山芸術の森発電所美術館:きらりと光る興味深い展示をやっている。こちらも12月~3月の冬季は休館するので注意。

杉沢の沢杉:地口か回文のような名称だが素晴らしい場所。田園と防風林の中にポツリ広がる湿地杉林で、まるでもののけ姫の森のようである。近年、入善乙女キクザクラという桜の新種がここで発見されている。この原木は未だ杉沢の沢杉でしか発見されていない。北陸は菊咲きの桜の品種が多いらしい。