2021年9月26日日曜日

苗場山 釜川ヤド沢

 

















富山周辺の沢に人の痕跡を感じることは少ない。理由として、人口が少なく沢登り愛好家の絶対数が少ないこと、難易度が示され遡行図が示された大系的ルートガイドが無いこと、多くの人がこの辺の沢を魅力的と感じていないことなどが考えられる。

翻って苗場山の釜川なんか誰もが行きたがる沢の筆頭なんじゃないだろうか。まず山が素晴らしい。広大な高層湿原を有する花の山、苗場山である。40万年前、苗場山から噴出した溶岩からなる釜川の廊下は誠に奇怪な景観である。加えて滝も多くあらわれるので登る楽しみも存分に味わえる、素晴らしいとしか言いようのない沢である。

ヤド沢ほど日帰りで沢山の要素を味わえる沢も多くは無い。本流の美しい釜とスラブを愛でたのちは20mクラスの滝が連続する。この区間は滝の間も川原は少なくナメなのが好印象だ。詰めあがった先には小松原湿原である。山頂の湿原には劣るものの荒々しい谷とのコントラストもあって大変印象深く感じる事だろう。下山も林道てくてくで安全だ。人跡が多く巻き道ができているので沢慣れしていない人でも楽しめる良さもある。

次は千倉沢をお泊りで遡行して、山頂湿原も合わせた苗場山満喫ツアーを楽しみたい。もちろん7月中旬のお花満開時期に!

<アプローチ>
大谷内ダムから小松原林道へと通じる林道を車で進み、取水堰堤へと通じる林道マークがあるところの広場に駐車する。取水堰堤へ至る林道は草が生えているが、歩く分には問題ない。下山は小松原林道を利用する。
ところで、近くには布岩という柱状節理クラッククライミングの面白い岩場がある。現在、掃除なしで登れるのは5.9から5.10前半のクラックが8本ほどだけだが、40mのスケールがあるルートもあり一度は訪れる価値がある。1日で登り切れるスケールなので、釜川と抱き合わせで計画するのを激推しする。

<装備>
念のためロープ。20m以上の滝も登ろうと思えば登れると思う。その場合はがっつり登攀具を準備。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。

<博物館など>
津南町歴史民俗資料館:津南町で発掘された考古資料と秋山郷で使用されていた生活用具を収蔵する博物館。火焔型土器のデザイン性は本当に素晴らしい。縄文土器にハマりそうになる。生活用具の資料数も圧倒的だし、秋山郷の生活史も興味をそそる。展示室にある年間行事表が子細に示されていて面白い。中でも興味を惹くのは「この日から昼寝をやめる」という記載。秋山郷にはシエスタ文化があったの?しかもこの日からって何?

大嵐谷 小屋場ノ裏谷

 






登山記録(日本の渓谷97)では小屋場ノ谷の一本下流側の谷は小屋場ノ裏谷と仮称されている。この辺りの歴史を丹念に調べれば名称は解るのだろうが、ここでは気にせず小屋場ノ裏谷と呼称する。筆者らはこの谷を下降したので登り方については言及できないが、シャワークライミング(大滝登攀)を楽しめるゲレンデとなる可能性を秘めているので紹介する。

出合は平凡な流れである。小屋場ノ谷はほぼ同じ集水面積にも関わらず、出合いの水量が大きく異なっているのが興味深い。古びた堰堤を幾つか超えると30mはあろう大滝が現れる。記録ではこの滝を正面から登攀しているようだ。水の流れを読んでもホールドはポジティブのようだし、凹角から支点が取れそう。上部の小ハング帯も直登や縫うようにかわすことができよう。この大滝を登るだけでも訪れる価値はありそうだ。10mの登るのが困難な滝を巻くと、累積高距50mはありそうな4段瀑がすぐに出てくる。フェース面はスラブ状で困難が予想されるが、右側の流心はコーナー状になっているので支点を求められる可能性はあるだろう。水量がぐっと少なくなる11月ならば可能性があるかもしれない。谷が右に曲がるとガレの沢となり、沢登りとしての興味は減ずる。適当な地点から東畑谷か小屋場ノ谷へと下降する、或いは同ルートを下降する。

<アプローチ>
深瀬大橋から手取川右岸沿いの林道を車で進み、大嵐谷を渡る橋まで行き駐車する。ダム右岸の林道は草ぼうぼうでダートだが、ちょっと車高の高い車ならば全然問題ない。おそらくダム関係者が利用しているのであろう。大嵐谷左岸の林道も現役で使え少し先に駐車できる広いスペースもあった。小屋場ノ裏谷は大嵐谷の標高620m付近の右岸から合流する谷である。遡行後は北側の東畑谷を下降するか、一本南側の小屋場ノ谷を下降する。小屋場ノ谷は滝が多く下降には相応の時間を見込んだ方がよいだろう。

<装備>
カム0.1~2.0をワンセット、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
7月~10月

<博物館など>
石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は圧巻である。皇太子ご夫妻もこの昆虫館を訪れている。雅子妃が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

2021年9月24日金曜日

大嵐谷 小屋場ノ谷











白山山系の沢の中でも手取川右岸の沢の知名度は低い。白山の谷を網羅的に紹介した文献は知る限りない。とはいえ、小さな谷であっても先達によって紹介されてはいるのはさすが。小屋場ノ谷は日本の渓谷97という本に紹介されている。登攀的な沢として興味深く紹介されているので現状を確認することとした。

小屋場ノ谷は大嵐谷本流675m地点右岸から合流する谷だ。出合いからすぐに2段滝が現れるので間違うことは無いだろう。しかし、この二段滝を前にして水量が極端に少ないのに気が付く。沢登りとしては盛り上がりに欠けるが、クライミングは快適である。申し訳程度に流れる滝だが中々面白い。ただ、資料と谷の内容がどうもかみ合わない。全体的に滝が小さいのだ。小滝とちょっと大きめの滝を幾つかこなすと巨大なガレ場に出くわす。もしかしたら、土砂が沢山出て谷を埋めたのかもしれない。上部のゴルジュ状滝も湿ってはいるが水は流れていない。水が流れていないとはいえ、クライミングは緊張する場面も多いので面白い。支点はよく探せばそこそこの質で取れるだろう。驚くべきは1200m付近から水がしっかりと流れ始める事。なんで少し手前のゴルジュ滝で全く流れていないのだろう。傾斜が強いナメ状でありながら伏流するのは珍しい。以降はこれといった滝は現れない渓相となる。

集水面積が少ない谷なので一旦土砂が堆積すると、土砂が押し流されるのは非常に時間がかかるだろう。元々飛騨帯の脆弱な部分を含む地質なようなので、昨今の豪雨傾向ではまた山抜けが起こるかもしれない。谷は日々形を変える。それはいつ登っても新鮮な面白みがあることで嬉しいことだ。また、何かの形でこの谷を訪れるだろう。その時が楽しみだ。

<アプローチ>
深瀬大橋から手取川右岸沿いの林道を車で進み、大嵐谷を渡る橋まで行き駐車する。ダム右岸の林道は草ぼうぼうでダートだが、ちょっと車高の高い車ならば全然問題ない。おそらくダム関係者が利用しているのであろう。大嵐谷左岸の林道も現役で使え少し先に駐車できる広いスペースもあった。小屋場ノ谷遡行後は北側の東畑谷を下降するか、一本北側の小屋場ノ裏谷を下降する。筆者らは小屋場ノ裏谷を下降したが、判断に迷う地形もあるのでそこそこ難しい。

<装備>
カム0.1~1.0をワンセット、ピトン各種。濡れているところのヌメリは凄いのでフェルト推奨。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。

<博物館など>
石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は圧巻である。皇太子ご夫妻もこの昆虫館を訪れている。雅子妃が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

2021年9月22日水曜日

大杉谷川 ハチブセ










ハチブセは白山の中でも登攀的な谷。行程は長くないが、フリークライミングに人工登攀を存分に味わい、丸一日の充実した山行が楽しめるだろう。1090m左俣からかかる連瀑はとても面白い。ヌメリのきつい前衛滝を効きの良い快適な人工登攀で登ると60mの大滝である。ホールドはポジティブで岩は概ね固い。加えて支点は取り易いので危険な状況に陥ることなく快適なフリークライミングが楽しめよう。大滝から先はちょっと退屈な渓相になるので下降して右俣へ。

右俣の最初に現れるのは関門の滝と呼ばれる入り口が狭まったと特徴的な滝である。ここも猛烈なヌメリによってフリーは厳しいが、右側のクラックを使って快適な人工登攀を楽しめる。その上の4mくらいの小滝のクライミングも面白い。以降、大きな滝も現れ始めるが巻きも容易になり始めるので時間はかからない。ナナコバ山の山頂付近は藪だらけで三角点は探し出せなかった。ナナコバ山からナナコバ谷への下降点は分かり難いので読図は慎重に。谷筋に入ってしまえばあとは下降しやすい。

支点状況は良好なのでクリーンな渓谷登攀入門として最適ではないか。沢慣れしている人はぜひとも左俣大滝と右俣のセットで登ってほしい。あまり沢登りをやらないクライマーの人もネイリングの練習、ちょっとした人工登攀の練習と思って訪れると新しい発見があるかも!

<アプローチ>
大杉谷林道の道路状況や開放状況如何による。白峰集落を過ぎて手取川右岸に渡るが、まれにゲート封鎖されていることがあるが近年は解放されている模様。イモイワ谷を過ぎてすぐに右側へと続く林道が地形図に示されている。これは現在も利用可能なので橋を渡り、ナナコバ谷出合い付近にひらかれた場所に駐車する。大杉谷川850m付近の左岸から合流するのがハチブセだ。ハチブセは1090m付近で二俣に分かれる。下山はナナコバ山からナナコバ谷を下降するのが合理的である。ナナコバ谷は懸垂下降1回くらいで降りられ下降は容易。堰堤が出始めると右岸側へ林道が出始めるので歩いて駐車場まで帰れる。基本的に日帰りで楽しむこととなるが、時間的にはややタイト。泊りで左右ゆっくり楽しむのも良いと思う。

<装備>
カム一式、ピトン各種。ヌメリがきついのでフェルト一択

<快適登攀可能季節>
7月~10月

<温泉>
白峰温泉総湯:昔は安くて汚くて良い銭湯だった。綺麗になって値段も上がった。

<博物館など>
石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は圧巻である。皇太子ご夫妻もこの昆虫館を訪れている。雅子妃が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

2021年9月12日日曜日

鉾ヶ岳 湯沢川 金冠谷

 























湯沢川には権現谷と金冠谷そしてその間に挟まれる屈曲した無名沢、この3つの稜線水源がある。登山大系に名称の示されているのは権現谷と金冠谷だけで屈曲した沢の名称は示されていない。ここでは屈曲した谷を仮に金冠左俣と呼称することとする。

湯沢川の最終堰堤からすぐに20m滝だがこれは右壁をそこそこ快適にフリークライミングで登れる。クラックにカムを効かせて思い切って登りたい。権現沢を分けると小滝を2つ登ると広いゴーロゴルジュとなる。そのドン突きに30mの立派な滝が現れる。この水線を責めるのは困難なので、右の水の流れる小さな支流を登り、左へとトラバースして巻き懸垂すれば谷へと復帰できる。

30m滝を巻き終えると谷は一旦広がりやがて二又となる。筆者らは最初に金冠谷左俣へと入った。すぐにCS滝が現れる。我々はクラックシャワーで突破を試みたが、クラック上部の岩場脆くカムが岩を破壊するように感じたので途中で諦めて巻いた。巻きは非常に簡単なので、懸垂一発で谷に戻れる。ゴルジュ中の小さな小滝をこなすと再び広大なゴーロゴルジュ。やがて谷が右に屈曲する地点に滝右壁が大崩壊した6m滝が現れる。この6m滝は支点が取れる見込みがなく、安全に登ることはできない雰囲気。しかも周辺は全く手の出ない強傾斜草付きとスラブ壁で巻くことも許されない。この滝を突破する弱点を見いだせなかったので、左俣を諦めて下降し、右俣(金冠谷)を遡行することとした。右俣は左俣とは打って変わって明るい渓相で爽やか渓。階段状でぐいぐい標高を稼いでいく。途中でゴルジュ状に大きなチョックストンがある連瀑が楽しい。稜線抜け口はちょっとした泥崩壊地だが問題ない。鉾ヶ岳山頂から権現岳の登山口までの下山は道が悪く時間がかかる。油断すると滑落する地形でロープが連続するのでちょっと余裕が欲しいところだ。

金冠谷左俣の崩壊滝の上はどうなっているのだろうか。崩壊6m滝を登るリスクはちと受容しがたいので下降して調べようかしら。

<アプローチ>
下山を考慮して権現岳登山口に駐車しておくとよい。最初は谷の左岸に駆り払いがあるのでそちらを利用する確か堰堤を二つ越えると右岸側に堰堤敷設用の林道があるのでこちらを終点利用する。終点から最初の滝まではすぐである。幕営適地は権現沢出合いくらいなので日帰りで臨むのがよい。

<装備>
カム#0.2~2まで一式。ピトン各種。滝の登攀にクライミングシューズは要らないと思うが有ったら使えるかも。

<快適登攀可能季節>
9月~11月。夏は残雪が多く残るので不向き。

<温泉>
柵口温泉権現荘:とてもきれいな露天風呂付きの風呂。600円也

<博物館など>
フォッサマグナミュージアム:地学系の博物館で興味深い展示に見入ってしまう。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。至近の谷村美術館も個性的なので訪れる価値あり。

糸魚川市民図書館:糸魚川市、能生町の郷土史は重厚な作りで読み応えが有る。青海町の郷土史は発刊は古いがシニカルな語り口が面白い。ジオパーク関連資料も豊富で嬉しい。なお、能生町、青海町にも分館があるのでそちらでも資料は閲覧可能である。