2020年6月30日火曜日

富士写ヶ岳 大内谷川 簾滝谷(仮称)








山中温泉の周辺は歴史や逸話が多い。大内谷川簾滝谷(名称を調べられなかったため仮称)には北陸浄土真宗王国の礎を築いた絶倫スーパースター蓮如上人に関する逸話がある。かつて当地に天台宗が栄えていた時代に教化活動を行っていた蓮如は迫害され、大内村へと隠遁する。そこでこの谷の奥にある岩屋へ逃げ込んだという。この地の婆はこの谷を遡り三度の食事を届けたという。

といった、殆どの沢屋にとって興味外であろう逸話はさておき遡行内容である。簾滝を登ることは可能なようだが、筆者はギアもない単独であったため巻いて入渓した。そこからシャワークライミングがひっきりなしに続く。序盤滝がない箇所は藪が低い箇所が多いので態勢をかがめながら進む。これも小滝のぼりが楽しいので殆ど気にならないだろう。易しいものの高さがある滝や、ちょっと難しい小滝といった緊張するシャワークライムもあるが岩は硬いため攻めやすい。といっても沢慣れしていない人が同行の場合には躊躇なくロープを出したい。筆者は山頂へ直登する谷を詰めたが最上部の登山道へ接近する地点からは藪が濃くなるので、登山道へ上がるといい。細いブナが整列する森はとても気分が良い。大日山とそっくりな森である。簾滝谷は行程は短いものの意外に登りごたえのある秀渓である。それにしても、この谷へ一日三回の飯を運ぶ婆はすげえよ。

<アプローチ>
大内峠に駐車して国道を歩いて簾滝出合いの橋を渡り入渓する。ここから般若ヶ窟という蓮如上人が天台宗徒から隠れたという伝説の岩屋へ向かう登山道のマーキングがある。般若ヶ窟はこの谷の左俣にある模様だが今回は訪れていない。最も簡単な下山は登山道を利用する下山である。南面のイオーマタ谷を下降するのも面白い。

<装備>
沢慣れしていれば何もいらない。簾滝を登ったり直登しなかった10m前後の滝1~2を水線突破するのであればカムがあるといい。岩は固く支点は良好であろう。

<快適登攀可能季節>
5月~11月。標高が低い南面なので新緑の季節から紅葉の晩秋まで楽しめると思う。

<温泉>
山中温泉:下山後は総湯菊の湯をおすすめする。銭湯風の公衆浴場で石鹸は持参する必要があるものの、440円とリーズナブル。男女は別建屋となっている。

<博物館など>



栢野大杉:菅原神社に鎮座する巨木で推定樹齢は2300年。山中温泉を称えた芭蕉もこの巨木を拝んだ事だろう。源平合戦に関する逸話があり、そのいわれのある草団子が直ぐ横の茶屋で販売されている。素朴な味で大変おいしい。この茶屋では他にジェラートも販売しているがこれも旨い。

観音院加賀寺(旧ユートピア加賀の里):ハニベ岩窟院と並んで石川が誇る弩級の珍スポット。加賀温泉駅からも望むことが出来る巨大菩薩がある場所。訪れたのは大分前だが既に廃墟感があった。金ぴかの観音の中は階段があって登ることが出来る。千手観音が千体?ある部屋は圧巻。今も現存する施設かは不明。

2020年6月29日月曜日

竹田川 小倉谷








竹田川小倉谷は石川の山岳会が纏めた記録本で良渓!と記載された記憶があったものの、沢の小ささと富山から微妙な遠さも相まって訪れる事が無いまま幾星霜。梅雨のすっきりしない天候のひとり旅にぴったりじゃん、てなことで訪渓。

水踊る谷という表現がしっくりくる名渓である。とにかく滝とナメが連続するが、どの滝、どのナメも違った構成と味わいがあって素晴らしい。短いのが難点とも思わない。もっと続いてくれ!と願うところで終了する腹八分目感も悪くない。綺麗で楽しすぎるので、うぉー、うほー、はひー、といった奇声を上げまくった。滑床では一人ゴロゴロ転がって遊んだ。そのまま横に生える苔を頬張った。これ以外の記憶は朧気である。ひとりで楽しい沢に入ると忘我し前後不覚に陥る。あんまり話題にならないのは石川と福井の沢屋にしてみればこれが普通なのだろうか?すげー綺麗で誇るべき沢だと思うんだけどなぁ。もしかしたら宝物としてひた隠しにしているのかしら。さておき、美ヶ谷ですごく綺麗と言っちゃう自らのダボハゼ感性を寿くとしよう。

それにしても大日山周辺は似た岩質で沢登りはどこも面白い。とにかくどの谷も遡ってみたくなる衝動に駆られる魅力的な山域だ。

<アプローチ>
畑尻橋のたもとに駐車して入渓する。なお、ダムから竹田川右岸の道は崩れているため、畑尻橋は必ず渡る必要がある。三角点910.7mが小倉山山頂なのでそちらへ抜けたい。最も楽な下山は火燈山から南へ下降する登山道を下山し、林道が合流した点から沢へと下降し、ダムへと降りる。この下降沢はスギ林を流れるガレ沢で問題ない。下山を含めて4時間くらいで終わるので、もう近場で一本登ることも可能。

<装備>
沢慣れしていれば何もいらない

<快適登攀可能季節>
5月~11月。標高が低い南面なので新緑の季節から紅葉の晩秋まで楽しめると思う。

<温泉>
山中温泉:下山後は総湯菊の湯をおすすめする。銭湯風の公衆浴場で石鹸は持参する必要があるものの、440円とリーズナブル。男女は別建屋となっている。

丸岡温泉たけくらべ:山中温泉とほぼ同質の泉質であるが、山中温泉ほど温泉街として発展していないため、日帰りならば一択。なお、名称は丈競山(たけくらべやま)からとっていて樋口一葉とは関係ない。

<博物館など>



栢野大杉:菅原神社に鎮座する巨木で推定樹齢は2300年。山中温泉を称えた芭蕉もこの巨木を拝んだ事だろう。源平合戦に関する逸話があり、そのいわれのある草団子が直ぐ横の茶屋で販売されている。素朴な味で大変おいしい。この茶屋では他にジェラートも販売しているがこれも旨い。

丸岡城:かつて現存する最古の天守閣とされていたが、近年の調査で最古ではないという事が示された。かといってこの城の魅力がなくなったわけではない。近世の取れた美しい曲線を描く石組と笏谷石(所謂グリーンタフの石、庄川の金屋石と類似する)で葺かれた瓦が印象的。上り下りの階段はもはや懸垂下降が必要な傾斜で65°と67°。

千古の家(坪川家住宅):福井県内最古の茅葺屋根民家。ポイントは入り口向かって正面の重厚な三角形屋根と栗の木を用いた叉柱。現在は音楽会や朗読会といったイベント会場として活用されているようだ。更にそばを提供する喫茶も併設している。菖蒲園がきれいなので6月中旬がお勧め。

観音院加賀寺(旧ユートピア加賀の里):ハニベ岩窟院と並んで石川が誇る弩級の珍スポット。加賀温泉駅からも望むことが出来る巨大菩薩がある場所。訪れたのは大分前だが既に廃墟感があった。金ぴかの観音の中は階段があって登ることが出来る。千手観音が千体?ある部屋は圧巻。今も現存する施設かは不明。

2020年6月8日月曜日

板尾大谷 セイタコロシ谷








烏帽子山北西面へ突き上げるセイタコロシ谷は国土地理院の地図に名称が記載されたいない。セイタコロシ谷と書いたところで一体幾人がその場所を特定できるのだろう。想像ではあるが、これはセイタ殺しであり、セイタ氏がここで亡くなったということを示しているのだと思う。そうであるならば、ここを訪れるならば誰しもセイタ氏を思い浮かべる事になる最高の供養だよね。きっとセイタ氏は猛烈に愛されていたに違いない。親分肌のイケメン猟師?それとも一匹狼カリスマ樵?はたまた子煩悩な優男?もちろんセイタの正解が無いのは分かっている。でもセイタを殺したのがどんな谷かは訪れれば解ることだ。

出合いから少しゴルジュとなるが巻きは難しくない。ツルツルで弱点の無い岩質なので突破は叶わない。一基堰堤を越えると3段40mの大滝が現れる。これは登ることができる。その後は平凡な渓相がしばらく続く。不思議なことに地形図に示されている堰堤マーク地点には何もなかった。V字型の雪国ゴルジュ状を呈してくると緊張感が高まるが、幸いにして快適に登ることができる。ゴルジュのドン突きにはセイタ殺しの第一級容疑者が堂々を立ち塞がる。教科書カラー見開きドーンのヤバいスラブ。支点が取れないので強傾斜部分は左から巻き、多少傾斜の緩くなったスラブを少し登るとガレ沢になり、すぐに稜線へと出られる。

セイタ氏はこの谷を上部から下降中に滑落したものと推察する。下部から登ればそれほどの危険は無い。最上部のスラブも回避できるルンゼがあるし、山を熟知した昔の男が亡くなることは無いはずだ。この谷は板尾大谷のこのほかの支流にはないスラブ発達なので、「ここも行けるだろう」という初見下降中の思い込みによる事故だったのであろう。現在氏のご遺族は何代目かも想像つかないが今も健在だろうか。この谷を楽しませていただいたことに心より感謝申し上げたい。

セイタ氏と筆者の関係もこれで一区切り。今回はセイタ氏との脳内交流がメインだったが、もちろん沢登りの対象としても十分面白いのでおすすめである。あ、スピリチュアルな体験とかそうゆうのは全然ないです。一応。

<アプローチ>
小板尾谷との合流点にあるゲートの前に駐車。そこから川沿いの林道を歩く。林道は早くから荒れてくるので沢へ降りる事になるだろう。口三方山から烏帽子山までは登山道が拓かれているのでそれを利用して荒谷を下降すると比較的容易に下降可能。荒谷上部は軽くスラブを呈するが下部は美しい森の癒し渓。

<装備>
磨かれているが、コケも付着しやすいためフェルトがいいと思う。岩のギアはピトン、カムを少々

<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが酷い地域なので注意。6月は残雪が残る。

<温泉>
セイモアスキー場の横に河内千丈温泉がある。静かで綺麗な良い風呂。

<博物館など>
ハニベ岩窟院:日本唯一の洞窟美術館。知る人ぞ知る日本最高クラスの珍スポット。おどろおどろしい鬼気迫る作品に圧倒される。男女で行くと水子供養かと聞かれるのでそのつもりで突入しよう。

石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は凄い。皇太子ご夫妻(令和天皇)もこの昆虫館を訪れている。雅子妃(皇后)が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

<グルメ>
白山からの帰りにある酒屋(名前は忘れた)に日本酒入りソフトクリームがある。もちろんノンアルコール。おいしいのでいつも食べる。