2019年12月26日木曜日

不帰西壁 Bルンゼ~中央チムニー







クライマーを引き付けるルートの条件は名前で決まる。と言ったら過言なのだが、私的には6割くらい名前なんじゃないかと思う。山では特にそうだ。注文の多い料理店、氷のリボン、逆鱗といった名詞小粋系名称なんか都会的でそれだけで登りに行きたくなる。一方、古典的ではあるがダイレクト、主稜、中央といった主人公をゴリゴリ主張する描写名称も惹きつけられるものがある。

それなのに「不帰西壁の中央チムニーを目標としています!」って人には出会ったことないのは、残りの4割によるものだろう。確かに不帰西壁はスケールはちょっと小さい。しかし、クライミングの楽しさ瞬間最大風速は名クラシックと比肩する。1P~2P目はBルンゼを詰めるが、ちょっと被った箇所もあり地味に悪い。ここはスラブっぽい抜け口が味わい深い。3P目中央ルンゼに入るとワイドクラックから氷の詰まったチムニーと息切れする内容だ。ルーフ下からチムニーへの入り口はフッキングが楽しい。最後4P目は凹角を登って右折するとプロテクションの取りづらいフェース。傾斜が意外に強いので侮れない。ロープの流れが悪くなるので、凹角出口で一旦切った方がよいかもしれない。

中央の名に恥じない堂々たる内容。これが錫杖岳の壁にあったら人気のショートルートとなっているはずだ。いの一番を主張する第一尾根とともに不帰西壁の風神雷神としてクライマーを待ち受ける。

<アプローチ>
Ⅱ峰南峰、北峰間のコルからルンゼを下降する。すぐ左手に見える顕著な岩峰が第一尾根である。Cルンゼを下降して傾斜が急になるところから小リッジを慎重に乗り越すとBルンゼに入る。Bルンゼから中央チムニーは一目瞭然。あとは自然と登路が見えてくる。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
12月~3月。西面なので雪が締まっている事が多いはず。八方尾根のアプローチも良いので厳冬期でも割と登り易いと思う。初冬の足慣らし、雪稜と組み合わせての継続登攀など遊び方はたくさんある。

<温泉>
みみずくの湯:日本有数の強アルカリ泉です。周辺の温泉は有名。入って損は無し。
倉下の湯:みみずくの湯を含む白馬八方温泉とは源泉が異なり、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉。価格も同じ600円なので気分応じて入り分けられる。

2019年12月17日火曜日

南岳西尾根~大切戸














積雪期の週末にビリビリ来る縦走を楽しみたい。それならば大キレットを越えて新穂高へ下降するのはどうだろう。大キレットは言わずと知れた特級品の岩稜歩き。着雪の具合によってラインに変化するので何度訪れても面白みがあるはずだ。筆者らは12月の中旬に南岳西尾根を登り、大キレットを越えて白出沢から新穂高へ下降した。南岳西尾根には登山道が付いているので、積雪が少ないシーズン初めでも取り付きやすい。上部の岩場帯も1Pロープを出せば核心部は終了するだろう。雪がついていたらもう少し厄介かもしれない。しかし、どの時期でも縦走路に出てからの方が手ごわいのは間違いない。寒暖差の大きいシーズン初めや、春雨の入った直後は固い氷が露出している可能性がある。アイゼンの爪が丸いと、全力キックステップを繰り返すことになる(実際なった)。さらに稜が雪に覆われている場合はルートファインディングにも注意が必要となるはずだ。道標、鎖、梯子があるので何とかなるが無かったら大変厳しい山である。こんな山に容易に通える距離に住む富山県民のアドバンテージは大きい。お金もかからないし、行先に困ったらレッツゴー新穂です。

<アプローチ>
尾根末端の傾斜がきついので、登山道通りに樹林帯の谷中を進むのが賢明。2631mまではえらい急登で雪の付き方が中途半端だと面倒。登ったのは寡雪の12月で下部のデルタ状岩壁はどこなのか解らなかった。マッチ箱周辺も雪稜となっておらず、1手だけマントルムーブのある岩稜で問題はなかった。雪が多い時期だと新穂高を早く出発する必要があるはず。3月になれば殆どの場合滝谷が下降できるのでB沢やD沢などエスケープルートがとれる。涸沢西尾根を下降する場合は3日間みておいた方が安心である。何はともあれ好天のタイミングを狙っていきたい。

<装備>
縦走用にパッシブプロテクションがあると便利だと思う。アックスは1本で十分だが、沢登に使うような小さいアイスハンマー(死語か?)があると便利かも。

<快適登攀可能季節>
いつでもOK。晴れた日

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2019年12月11日水曜日

宝剣岳西面 第二尾根






「カレーライスばっかりじゃなくて、たまにはハヤシライスやハッシュドビーフも食べたなるしねぇ」という著名人の発言が話題になったのは今年だっただろうか。発言の背景はさておき、確かにそうだなぁとしみじみ思う。冬季は北アルプスや頸城など近場の山で十分過ぎるほどに楽しめてしまうので、ほかの山域は足が遠のく。こんなにも美味しいカレーライスだが、宝剣岳というハッシュドビーフもたまには食べたい。

宝剣岳第二尾根はスケールが3Pと小さいことを除けば充実の内容。見た目もかっこいい。岩稜系なので取り付きが明確ではないのだが、面白そうな場所から適当に開始しても問題ない。意外にもちょっとした凹角に氷が発達しているのが特徴的。これによりエビの尻尾や氷でホールドが埋まり、面白いミックスクライミングとなる。物足りない場合は西面でも東面でも、おかわりすればスケールは補える。近場のコンディションが思わしくないとき、十分訪れる価値があるラインである。でも、不貞行為は程々にね。

<アプローチ>
上松尾根を利用する事をお勧めする。厳冬期なら場所柄くそラッセルになることは少ないと考えられる。前日深夜に出発すれば入山日に一本登ることも可能。幕営場所は玉ノ窪小屋陰にテントを張ることが出来る。風当たりは強め。ロープウェイを使うと登山の趣も無いし、お金は掛かるし、時間を気にしないといけないし、体力は低下する。などなど善くない事が多い。標高は自分の脚で上げよう。
取り付きへは登山道を歩いて天狗岩を過ぎてからすぐのルンゼを下降する。このルンゼの直接取り付きへ向かう方面が凄く急でかなり怖い。緩やかな本流ルンゼをある程度下降したのち小尾根を乗り越し懸垂して取り付いた。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々

<快適登攀可能季節>
11月下旬~5月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
妻籠宿:中仙道の宿場町を保存して観光地化してある。いかにもな観光地。おばちゃんの解説はさながら噺家であり職人技である。内容は非常に興味深い。そして歴史資料館も秀逸である。斜に構えて行かないのは損。

義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

寝覚ノ床:木曽川の流れと方状節理が生み出した景勝地。一見の価値あり。裏寝覚め~寝覚めまではボルダリングも可能。お勧めの課題は一斗の缶。