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2025年10月13日月曜日

大武川 桑木沢










 甲斐駒ヶ岳は富山から遠いけどもクライミングも沢も楽しめて遊び甲斐のある山である。しかも雪が少ない地域なので北陸よりもずっと早く沢登りをスタートできる。
 桑木沢は日帰りで楽しむピリリと辛い沢。序盤は小さな滝は登れるが大きな滝はうまい具合に巻いて登る。1350mを過ぎてからの後半の方が巻きを含めた登り方や沢への復帰方法など判断に惑うことが多い。富山近辺の沢とは雰囲気が違うので難しく感じるが周囲の環境をよく見て登りたい。日帰り沢としては内容も豊富で秀逸である。富山から日帰りで登るのは厳しいので他の易しめの沢と組み合わせたり、瑞牆クライミングと抱き合わせにしたりして訪れてはどうだろうか。

 <アプローチ>
林道のダートが始まる手前のキャンプ場のある堰堤スペースに駐車する。走破性のある車なら林道を進めるが、ゲートが割と近くにあるので意味がないと思う。桑木沢へ向かう林道を歩いて堰堤が終わるところから入渓する。本流出合いからもゴルジュとなっていて登って楽しいことが後で発覚してちょっと後悔した。登山大系には沢沿いに遊歩道があるということになっているが廃道化している。下山は黒戸尾根が楽。

<装備>
カムワンセット、ピトン各種。ラバーでもフェルトでも登れると思うが、ラバーの方が登り易いかも。クライミングシューズは要らないと思う。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 

2025年9月20日土曜日

尾白川 黄連谷
















 久しぶりに甲斐駒ヶ岳へ登りたいと思った。尾白川の黄連谷は甲斐駒ヶ岳山頂へ自然に至る沢でアイスクライミングで有名だが、夏の沢登りも南アルプスを代表する名渓と聞く。

 尾白川の駒ケ岳神社から登ればさぞ充実するのだろうが、難しいゴルジュ帯があり週末以上の日程を要するので林道終点から入渓する。花崗岩の大渓谷といった風情で雰囲気は良い。偶然高巻きやすい設計になっているので大丈夫だが、多少地形が違えば相当難しい沢になる岩だろう。尾白川本流はやたらとロープや赤布があるが、これがなかったら巻きのラインも考えさせられることになり時間を要すると思う。黄連谷に入っても渓谷美は続く。名前の付いた大きな滝が二つあるが、この巻きは意外とややこしい。ぱっと見で巻きに入るとライン取りを間違えてしまうので地形を注視してから臨んだ方がいい。大き目の二つ目の滝の巻きは獣道が錯綜しており、降り口が分かりづらい。結局巻きから二俣へダイレクトに到着した。右俣に入ると最初は水際や小さく巻く形で登れる滝が続き面白い。奥千丈の滝がどれだが分からなかったが、4か所くらいロープを出して登った。どちらもそれなりにクライミングだったので、ある程度の心得が無いと危なそうだ。スラブが発達しているためイメージしていたよりも高巻きが多い。厳しくも危なくもない巻きだが、やはりアイスクライミングで直登したほうが楽しいだろう。2400mの幕場から進んだナメ状多段滝を1ピッチ登るとあとはロープは要らない。甲斐駒ヶ岳の山頂はガスにもかかわらず賑わいをみせる。流石の百名山である。

 思ったよりクライミングで巻きが多い沢であった。解放感があり眺めが良い沢だし、標高差も十分でよい運動になる。しかしこの沢の本当の価値は駒ケ岳神社から本流を遡行して山頂に立つことかもしれない。少し日数がかかるので夏休みに丁度いいかも。

<アプローチ>
黒戸尾根の登山口となる尾白渓谷入り口か、日向山の矢立登山口に駐車する。矢立の方は駐車スペースが狭いので要注意。幕営は右俣2400mが極上である。他は1900mくらいのところが良かった記憶があるような。下山は黒戸尾根が安牌

<装備>
カム少々(小さめ)、足回りはラバーの方が有利

<快適登攀可能季節>
7月~10月 (多分)

2025年9月18日木曜日

神宮川 笹ノ沢
















 山登りをする人で雨が好きな人は多くないと思う。筆者もその一人である。山では眺望を楽しみたいし、濡れて不快な思いもしたくないし、歩きにくいのも嫌だ。だからお休みの日は晴れを願うことは有っても雨乞いするということは決してない。
 南アルプスの前衛峰に雨乞岳という山がある。眺望が良さそうで機会が有ればハイキングで訪れたいと思っていた山だ。曲折がありすっきりしない空模様の週末に北杜市に居た。そして雨乞岳のことを勃然と思い出した。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登る。こりゃ諧謔性が有って良い。神宮川笹ノ沢から雨乞岳を目指すことにした。

 笹ノ沢は出合いから素敵な大き目の滝が4つくらい出てくる。どれも快適に登れたり簡単に巻けたりするので問題ない。3つ目の滝は滝横のクラックを登って楽しい。興味深い点は猛烈に砂が堆積しているのに渓谷美を保っていることである。マサ化が激しい花崗岩で水深は浅いうえ大岩は無い。不思議と谷中に倒木は少なく何故か苔も繁茂し魚も住んでいる。森の雰囲気と白砂がマッチして特異な美を醸す。北陸ではお目に架かれない不思議な世界だ。マサはただ風化によって供給され、湧水の沢で水量が安定しているために落ち着いた渓相となるのかもしれない。美しい渓相と時折現れる小滝を楽しみながら進む。山頂を最短距離で目指すべく1340m付近で左岸支流へ入る。後から知ったが、多くの遡行者はこの支流ではなく次の谷を右に入るようだ。この支流の途中で結構渋いシャワークライミングの滝がありネイリングとガストンムーブが味わえる。それ以降は落ち着いたゴルジュライクな渓相に戻りロープレスで楽しめる。雨乞岳は通じる登山道に出ると森の雰囲気もよくいい道だ。山頂はやっぱり雨で眺望は無かった。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登り晴天を希う。これで念願成就である。次は晴天時に流川から登ってみたい。
 
 笹ノ沢は関東ではポピュラーな沢のようだ。特異な渓相は一見の価値があるので富山から少し遠いが訪れてみると良いと思う。話は逸れるが富山県で雨の中のハイキングするなら樹高の高いブナの森を傘をさしながらぶらぶらのがいい。霧がかった森は一層幽玄となる。雨だれはブナの葉で柔らかになるので傘を閉じてゆっくり音を楽しむのも楽しい。雨音が新緑と深緑の時期で異なるのもまた面白い。大品山や縄が池からの高清水山&高落場山が最高だろう。関東の皆さん、雨の週末は富山県のブナの森へいらっしゃい。

<アプローチ>
神宮川と並走する林道のゲートまで車で入れる。幕営することはない行程だと思うが、しようと思えば快適な場所は割とある。登山道は歩きやすいし、登山道のない尾根も植生が乏しいため上り下りができる。山の管理道かは不明だがそこら中に道が有って迷う。

<装備>
カム少々(小さめ)ピトン、足回りはラバーの方が有利

<快適登攀可能季節>
5月~10月 (多分)

2025年7月9日水曜日

大武川 赤薙沢ミツクチ沢





















 脆い岩は危ないから登りたくない。何なら固い岩だって登れば高くて危ないのであんまり登っていいものではないと思う。それでも登るのは自然の摂理を体得するため止むに止まれず、しゃーなしでやるのである。
 ミツクチ沢は以前から行きたかった。南アルプスの中でも崩壊が進んだ谷で、上部は石空川北沢と不思議な地形を形成している。これで訪れるべき理由は十分ある。が、ボロイという前評判があり、前頭葉がしっかりと働く若年期は適切にブレーキが効いていた。しかし中年になると徐々に認知機能は低下し抑制ができなくなる。加えて膝や足首など関節には不具合が出てくる。こうなれば危険登山者一丁上がりである。

 赤薙沢に入ると赤薙の滝が激しい連瀑となって落ちる。これは登れなさそうなのが続くので一気に高巻いた。ミツクチ沢に入ると脆くない登って楽しい小滝が連続する。そう、こうして油断させるのが彼らの手口なのである。側壁が立ち始めると谷中に巨石や土砂の堆積がえらいことになる。すぐに現れる左側にチョックストンがある滝が技術的には核心となる。左岸側のスラブから凹状を登りスラブトラバースをして最後はワイドクラック。こうして記載すると内容が多彩で面白しろそうだがボロさがあり危ない(しかしクライミングは面白い)。次に現れる二段30m滝は下段をフリーで登り二段目からクライミングスタート。水を浴びながら登ることにになるが、ここは少し岩が固く楽しめる。二段目上部は崩壊したような岩なので、たまらず右トラバースして灌木へと逃げた。以後は連瀑に次ぐ連瀑で標高をぐいぐい上げる。普通の沢ならばボーナスステージなのだが岩がぼろかったり、ガレが堆積した巻きになったりと緊張が続く。最上部で左に入ると瀑布が宙を舞い、水がガレに消える大滝が現れる。周囲の崩壊地形から巻きは絶望で少し戻って右岸ルンゼを登って尾根に出ることとした。右岸ルンゼから左へトラバースすると首尾よく木登りで標高を稼げる。垂直の悪い木登りを続けると無事に尾根に飛び出す。ここから離山までの道のりもスリリングで気が抜けない。山頂付近はボルダーと砂が織りなす景観で眼前には赤石沢奥壁と甲斐駒が岳が重厚に構える。離山は登りごたえのある隠れた名山である。筆者らは石空川北沢を下降したがこれも巻き降りや懸垂を含めて歯ごたえがあり良かった。フィナーレが精進ヶ滝の懸垂というのも締りがあってよい。

 ミツクチ沢は緊張感の漂う沢で好みが分かれるだろう。崩壊はエネルギーの発散といえる。その場に身を置くことで地の揺動に共振する。登りながら変動する周波数に応じて怖かったり、嬉しかったりするのが良い。この沢を訪れるのであれば離山を必ず登ってほしい。ミツクチ沢はこの山を登ってこそ価値があると思う。さらに北沢の下降を含めて極めて良質な登山であった。今後も認知機能の衰えが齎す新発見が楽しみである。

<アプローチ>
林道のダートが始まる手前のキャンプ場のある堰堤スペースに駐車する。走破性のある車なら林道を進めるが、ゲートが割と近くにあるので意味がないと思う。林道を歩いて適当に最終堰堤のある所から入渓する。ミツクチ沢内に幕営適地はない。強いて言えば1600m付近の三俣だろうか。ここに幕営すると翌日の行動が長くなりつらい。北沢源頭離山南の平坦地は素晴らしいテンバで、三俣手前の段差となっているところは奇跡的に水が汲める。ただし、枯れていることもありうるので過度な期待は禁物。北沢を下降すると適宜よいテンバがある。

<装備>
カムワンセット、ピトン各種。ラバーでもフェルトでも登れると思う。フェルトならばクライミングシューズを持っていくといい。

<快適登攀可能季節>
6月~10月