2026年1月4日日曜日

薬師岳中央稜











 北アルプスで最も山深いのは冬の上ノ廊下周辺だろう。そのなかで冬の薬師岳東面は大きく泰然と構えている。赤牛岳からの眺望は周囲の穏やかな山稜と調和した絶景であり自然の妙味幽玄を味わうことができる。薬師東面の雪稜は北から順番に金作谷から延びる北薬師東稜、山頂へ直接至る中央稜、東南稜へ通じる第一稜、第二稜、第三稜とあるが冬はしばしば登られている。かつて第二稜を登ったので第一稜か中央稜を登り剱岳へ縦走するつもりで入山。

 厳冬の上ノ廊下は三度目ですべて別のところから渡っているが、どこも下ノ廊下より神聖な雰囲気を感じられるのがよい。第一稜と中央稜を両にらみできる1692m地点の渡渉であったが、天気めぐりの都合から中央稜を登ることにした。下部は雪の付着が少ない藪の急坂だったのでアイゼンをつけて1ピッチロープを出す。以後の樹林帯はしっとりとラッセルを楽しむ。下ノ廊下よりも標高が高いので乾いた雪が嬉しい。森林限界は2450m付近でここまでは随意平坦な所を選んで幕営できる。核心は想像と見た目通り2550mからとなる。ちょっとした岩場であるがプロテクションはハイマツが使えるので問題ない。難しくはないが荷物が重いので慎重に登ったほうがいいだろう。最後の緩傾斜帯は神聖な領域に踏み入れる前のカーペットのよう。漫として登っていると意外な感じで山頂に至る。直接山頂へ登ることができる爽快さが中央稜の魅力といえよう。山頂で確認した天気予報に恐れおののき立山~剱岳への縦走を諦めて北薬師岳から下降した。丸山へと至るこの尾根は美景でこれも嬉しい発見であった。

 冬の上ノ廊下にはまだまだ味わっていない魅力が沢山ある。今回登らなかった第一稜にも行きたいし、雲の平と高天原逍遥からの第二稜リピートも良さそうだ。上ノ黒ビンガ正面壁も再訪したいし、下ノ黒ビンガも見てみたい。そして剱岳へ縦走したらきっと充実するはず。薬師岳まわりでの富山市内散策は魅力は尽きない。

<アプローチ>
入山場所は幾らでも考えられるが葛温泉からブナ立尾根や竹村新道の尾根から登って赤牛岳北西稜を下降して取りつくのが容易だろう。下部は金作谷側と黒部川1692m地点側からの二手に分かれている。筆者らは1692m地点から取りついた。ここへの下降はできれば不思議なピークのある尾根よりも北側の曖昧な尾根をそのまま下降して懸垂下降1回で川に降りると渡渉はひざ下で楽勝である。それより上流側は腰付近まで水が届く。中央稜の幕営適地は森林限界以下と頂上へ向かう緩傾斜帯である。上部の方は傾斜は緩いけど風は強いので天気が良くない限りお勧めしない。下山路もいくらか取れるが、折立方面は長く辛そう。真川へ降りて立山駅に向かう方が楽であろう。筆者らは北薬師岳から丸山へと延びる尾根を下降したが、森と平原が素晴らしい景観の尾根で楽しめた。剱岳まで縦走して早月尾根を下山できれば最高である。携帯電話の電波が入るところが限られるため、断片的な情報で進行判断することとなり普段よりハラハラする。

<装備>
薬師東面に特別の岩のギアは必要ない。スリングが6本程度あれば十分。ピッケルも攻撃的なものは必要なく軽いやつ1本でいい。急な所が少ないのでストックがあると非常に調子いい。

<快適登攀可能季節>
12月下旬~5月上旬。雪が少ない年末年始には下ノ廊下横断は適さないため上ノ廊下がお勧め。

水無川 東不動沢右俣

 












 ワークライフバランスという言葉はすっかり社会に浸透した気がする。政策や世間ムードによってワークが適宜いい感じに仕上がってくると、ライフの方のバランスが求めれるがこれが難しい。登山とクライミングはあれやこれやと時間を要することからライフの方のバランスを著しく乱してくる。それでも長くやっていると調子がわかってくるものだ。筆者の場合は月の2~3週は半径100kmの範囲内で過ごして、残りをそれよりちょっと遠いとこに行くと具合がいい。
 越後三山は名声は聞くもののちょっぴり遠いので訪れたことは無かった。まずは有名所から雰囲気を掴もうとオツルミズ沢へ計画した。しかし待ち合わせた友人が定刻に現れない。困ったなあと駐車場でのんびりしていると偶然ほかの友人が現れ、より短めで面白い所を教えてくれた。それが東不動沢右俣である。八海山を縦走できるのが大変好ましく無事に合流した友人と転進を決める。
 まず、アプローチに残雪を多く見かけるのに驚愕する。同標高帯比で白山と黒部よりも雪が多いではないか。やはり富山はまったく豪雪地帯ではなく居住最適地であろう。転がる石は縞々の片麻岩のように見えるが異なるという。主として堆積岩の変成岩らしくその名も「上越帯」という超ざっくり分類されているようだ。応用地質として鉱山開発されたものの、これらの岩体の詳細は調査されていないようである。沢の内容はあんまり覚えていないが、草付きの質は北陸三県と随分違っており怖かった。特にニラみたいな草付きが印象的である。滝の流心は意外にホールド豊富で側壁はスラブ状となっており登りにくいが、谷の形状はオープンで気持ちが良い。快適に登って大した藪漕ぎもなく入道山の山頂へ飛びだす。お楽しみの縦走は岩場が続きスリリングでやっぱり面白い。懸垂下降したほうが安全な傾斜を鎖を掴みながら登り下る。これはこれで遊びとしては貴重な体験である。コギ池といった途中の池塘は期待したよりもしょぼかったがこれも一興。坂本神社までの登山道も歩きやすく美しい森でいつまでも歩きたくなる。秋の紅葉はさぞかし美しいことだろう。
 
 毎度のことながら初めての山は一辺で好きになってしまう。そうなると適期にはあの子もこの子も気になってきて益々ライフは浸食される。いや、もしかしたら既にライフは浸食されて尽くしており心を失った山ゾンビなのかも。ゾンビはゾンビらしく彷徨するしかない。お天気だけは注意して彷徨うことにしよう。

<アプローチ>
越後三山森林公園の駐車場から林道を歩いて廃道化してきたら適当に沢に降りて入渓。幕営適地は殆どない。雪が無ければ1050mの二俣。雪が有れば滝マークを超えた二俣の少し手前がいい。車が二台あって縦走したかったので坂本神社へ下山した。神社の人に聞いたら草刈りは年一回はしているが時期は不定とのこと。デトノアイソメ方面へ降りられる鉱山道という古い道が有るらしいが未確認。高倉沢も下降できそう。

<装備>
カム、ピトン少々、足回りはラバーの方がいい

<快適登攀可能季節>
残雪が多いので9月~10月くらいだと思う。

<博物館など>
トミオカホワイト美術館:歴史的に変色や割れのない白色の油絵具の使用が難しかったことを初めて知った。富岡 惣一郎が作り上げた油絵白色の抽象的な世界は心地よい。