2016年6月26日日曜日

薬師沢左俣








スケールに似合わず豪快な谷である。上部の平原地帯で水を蓄えているためだろうか水量が意外に多い。岩盤が強固なのだろうか岩は硬い。10mクラスの滝を次々掛ける様は見事だ。谷中でも明るいため、健康的な谷歩きを堪能できる。特別な装備は要らないので薬師岳に登ったついでに遊びに出かけてみると楽しいだろう。

満月の谷の夜は不気味だ。月明かりは木影を生み、その陰影によって闇を一層際立たせる。その闇は曇空の新月より暗いように思う。風でゆらりと木が揺れ、一瞬影が消えたその場所から妖しい何かが出てくるのではないかと不安になる。しかしこの谷の夜は違う。月光は開けた草原を普く照らす。木も草も虫も一様に偏りなく等しくほの明るい。

そんな朗らかな雰囲気の中、僕は僕と月と地球の三つの関係の考えて座っている。こんなとき、ウイスキーでも飲みながらかわいい女の子の手でも握って温まれば答は容易に出るのかもしれないが、横に女の子なんて居ないし、そもそも僕は下戸である。孤独は山になく、街にあると言ったのは誰だっただろうか。何事も孤独無しには成し遂げられないと言ったのはピカソだっただろうか。どちらも談志のマクラで聞いたような気がするが思い出せない。何ゆえそのような瑣末な事の思量に耽るのかというと、ここで過す余りにも素敵な昼下がりにコーヒーを飲んでしまったからで、眼が冴えて眠れないのである。でも、大丈夫ここの夜は怖くないからね。

<アプローチ>
折立から登山道を利用するか、ハゲ谷、ヤクシ谷を遡行し薬師沢へ下降する。詰めあがってからは登山道を利用すると早い。谷を下降すると面倒だと思う。

<装備>
特にいらない。全くの初心者が居る場合はロープが有ったら良い程度。磨かれた乾いた岩を歩くのでゴム底のほうが歩きやすい気がする。多分運動靴でも行ける。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。源頭はバイケイソウの大群落となっているので、満開時を狙っていけば素晴らしいと思う。他にも高山植物は豊富。

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

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