2017年4月4日火曜日

赤沢岳 北西壁中央稜 








赤沢岳山頂から下降し、コルを乗越し北西壁を目にすると「こんなん登れんのか・・」と思うくらいぶっ立って見える。しかしこれは眺める角度の問題のようで、取り付きに実際立つと意外に寝ていて、節理も豊富で程よく弱点のある壁である。中央稜は右岩壁と左岩壁を分断する登高意欲を掻き立てられる岩稜だ。中央稜側壁の上部のチムニーを目指して登り始める。一段上がると雪面となり、そこからピナクル基部までロープを伸ばす。基部からはルンゼを登り、少しだけ嫌らしいスラブを登り左に抜けると緩傾斜の草付きとなる。最後は赤茶けた傾斜の強い凹角をバチ効きのフッキングで気持ちよく登ると北西稜に合流する。尚、この最後の凹角は右から巻く事ができるようだ。全体を通して難しすぎず,簡単すぎない。快適なクライミングを楽しめる好ましいルートである。60mロープスケールでおよそ4~5Pと岩稜としては少し短いが、立山と剱岳をバックに登るのは爽快そのもの。登攀ラインの自由度が高いので登攀内容はパーティーによって変化しそうだ。

後立山の岩場や雪稜は余り馴染みは少ないが、北西壁や大スバリ沢奥壁など赤沢岳の岩場は良く訪れている。この岩場は行政区画上富山県立山町なので、富山県では数少ない週末に冬期登攀が出来るエリアなのだ。しかし、大町のほうが距離的に近いため、地方の甲子園常連校の生徒が殆ど県外出身者で全力で応援しきれない感覚と同じく、「ここは富山の山だ!」と胸を張って主張できないのが苦悶の種であった。

この問題を解決するために地元の山という言葉を「在住する地の水源となっている山」と定義することとした。日々飲む水や食べ物がどこに由来するのか考えたとき、水と大地を生み出す山に帰着する。つまり、登山者の血にその地の山が流れているのだ。そう気づけば、近所の山々の愛おしさが七の七十倍である。今日もご飯が美味しいし、もっと地元の山を知りたくなる。今回も地元の山を学ぶ良き旅であった。イワヒバリの伴奏に合わせ、指を鳴らし、タップを踏んで、赤沢燦燦(自作曲)を絶唱しながらのご機嫌下山である。結論、赤沢岳を「ここは富山の山だ!」とは主張しないけど、富山地元の山。

<アプローチ>
日向山ゲートから扇沢まで歩いて大沢小屋から屏風尾根に取り付く。屏風尾根の稜線直下は絶好のベースキャンプ地である。屏風尾根の頭から赤沢岳山頂まで行き、山頂から西尾根側を少し下る。そこから遭難碑プレートが埋めてある岩がある所から(状態次第では埋まって良そう)大スバリ沢側の急峻なルンゼを下降する。西尾根の頂上から3つ目、ダケカンバの群生するコルを北側へ乗越し壁へ通じるルンゼをクライムダウンする。頂上からのルンゼ、壁へ下降するルンゼいずれもかなり急で慎重さを求められる。中央稜は壁を左にトラバースして突き当たるリッジである。凹状から稜に上がり取り付く。

日向山ゲートまで富山市内から国道8号~148号で3時間と少々。

<装備>
カム一式、ピトン各種、トライカム。ナッツ一式。

<快適登攀可能季節>
12月~4月上旬 3月になれば積雪状態次第で1泊2日で2本登ることが出来る。北西面なので割と遅い時期まで楽しめるかもしれない。概念を把握していて気合を入れれば日帰りも可能だと思う。ただ、扇沢は東面なので谷筋をアプローチにするのは賢明ではない。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

<温泉>
上原の湯:410円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。
みみずくの湯:白馬にある日本有数の強アルカリ泉。入って損は無し。

<グルメ>
昭和軒:大町駅近くにあるカツ丼の店。大盛りはプラス100円で凄い量が食べられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿