2017年10月9日月曜日

裾花川 地獄谷














上方落語に地獄八景房亡者戯という好きな演題がある。地獄に堕ちた主人公とその仲間が様々な地獄へ投げ込まれるものの、数々の責め苦を笑い飛ばし、やりたい放題エンジョイする。その結果、地獄界から追い出されて娑婆に戻るというあらすじである。とにかく明るくパンクで自己中心的な人々が共同活躍する滑稽噺だ。この噺を聞く度に登山にも通じる精神を感じるのだ。どんな状況でも無茶苦茶に馬鹿をやって娑婆に帰る。無事の生還には笑い転げるほど楽しむのが必要条件なのかもしれない。

さて、マクラは終了して本題へ。いきなりの反転で恐縮だが、裾花川支流の地獄谷はどっちかって言うと極楽渓である。出合いの滝が威圧的だが登りそのものは慎重にこなせば問題ない。そこからはナメが煌くワールドだ。このナメは裾花本谷よりずっと長く続く。安山岩質ナメの合間に現われる滝は閃緑斑岩だそうだ。変化に富んだ渓相で遡行者を飽きさせない。一部土砂の流出が激しい地帯があるがこれもまた由。上部の大滝は油断せず確保して登った方が良いだろう。最後はうろこ状のスラブを快適に登って乙妻山山頂へ抜ける。縦走すれば高妻山も踏破できるので美味しいラインである。

ところで、全国にどれだけの「地獄谷」が存在するのだろう。これまで訪れた場所だけでも両手では足りない。翻って地獄尾根というのは知る限り白山にしか存在しない。古来より谷は生活に密着しながらも暗くて謎の多い場所であり、地獄谷という名称はそのような存在のメタファーなのだろう。そんな地獄も休日に無茶苦茶に楽しんでると、週があければ娑婆に強制退去させられるのだ。その娑婆の陰惨憂鬱たる様は深い井戸底で水渦に巻かれ、滝に打たれる地獄のようで・・・・。

<アプローチ>
縦走する場合入渓点と下山路が30km程度離れているので、車二台が前提となる。本谷を下降すれば充実する上、車の回収は問題にならない。近年奥裾花自然園への林道は水芭蕉と紅葉シーズン以外はクローズされている事が多い。奥裾花ダムから林道を歩き、裾花川出合いに下りる。幕営場所は標高1600mの滝マークを越えた地点が最高だ。新たに出来た六弥勒登山道を利用すれば下山口も近い。この道は歩きやすいブナ林で歩きそのものも楽しい。高妻山登山口まで富山から国道8号~国道406号経由で3時間30分くらい。

<装備>
カム一式、ピトン少々

<快適登攀可能季節>
7月~10月。泳ぎの場面が少ないので比較的遅くまで楽しめる。幕営地の標高が高いので紅葉シーズンは寒さ対策をしっかり。

<温泉>
鬼無里の湯:とんでもないところにあるが、綺麗で良いお風呂。値段も510円とリーズナブル。だが2016年5月に火災があり今年度の温泉営業再開は難しいようだ。温泉は入れないが夜17:00から食堂は営業中。

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