2018年6月20日水曜日

宮川 塩屋大谷








山登りにおいて、「楽しさ」はどのように齎されるのか。という99%以上の登山者が歯牙にも掛けないことに思索を巡らせるあまり、口に運んだつもりの肉じゃがをミスショットし、ジャガイモと豚肉がTシャツの上に落ちた後床にバウンドしたのを拾い、直ちに口に入れ、汁が染み込んだTシャツをじゅるじゅる舐めて洗浄する。みたいなことがしばしば発生する。筆者の感覚では特徴的な地形や景観によって感動したり、岩場での登りで要求される身体の動き、或いは自然中でタイムを競うスポーツを楽しむ人が88%くらいである。10~11%が野草や岩石それに動物など自然観察派であり、残り0.5~1%が峠めぐり古道薀蓄探訪など歴史ロマン派のように思う。もちろん上記以外、狩猟採集派のようにマイノリティーながらも確固とした地位を築いている方もおられる。山登りのような自然の中で行う遊びには、ルールと明確な目標がほぼ無いので、意識的、無意識的かはさておき登山者は何らかの動機付けをせねばならない。筆者はこれについて、個人で何らかの命題を立てると同義であると考えている。その命題を解き明かすプロセスこそが山登りの醍醐味に違いない。また、オリジナリティーのある命題を発見する悦びはさらに滋味深い。面白い登山者とは数学者ラマヌジャンのような人間かもしれない。

さて、この度は「湿原が上部に存在する流域の出水は早い」「湿原が上部に存在する流域の平坦地形部では魚影が濃い」という筆者の立てた2つの命題について真偽を検証するべく塩屋大谷を訪れた。この塩屋大谷においても宮川水系の特徴であるガレ、倒木は豊富だ。これは宮川水系が飛騨帯の花崗岩っぽい岩で構成されているため、地盤が脆弱なためだろう。それゆえに川床には砂が溜まっており岩魚が住み難い沢である。元々土砂が堆積しているため出水が早いかの判定は出来ないと解った。しかし、時々現われるナメと滝の箇所は硬い岩で構成されていのが興味深い。沢登りとしての難易度は高くないが、それなりには楽しめる遡行内容が続く。上部に行けども相変わらず魚影は薄い。というか全く生息していない。上部はガレと藪が心配されたが、実際には苦しみは無く爽やかに稜線に出る。ここからは150m沢を下降し湿原側へGO。下降し始めていきなりとんでもない泥濘地帯にはまる。湿原系の地盤に入ったようだ。谷の雰囲気も西側とは違う。つまり、洞谷上部のみが湿地地形であり塩屋大谷では「湿原が上部に存在する流域の平坦地形部では魚影が濃い」についての証拠を掴むことは出来なかったのだ。まあ、ウジウジしても仕方ないのでお楽しみの池ヶ原湿原へ気分を切り替える。想像通り、鳥のさえずりと蛙の声だけが響く素敵な場所であった。

検証予定であった2命題についての進展はなかったが、池ヶ原湿原の成因が気がかりだったので地質図を確認したら驚愕した。跡津川断層に挟まれてますやん。そして金剛堂山、白木峰と続く湿原地帯も立地は似ている。ここ一帯の準隆起平原が形成された謎を解き明かす鍵になるのか。思わぬ気づきによって始まった宇宙の振動に呼応してガクブル震えていると、口に運んだつもりのカレーライスをミスショットし、ジャガイモと鶏肉がTシャツの上に落ちた後床にバウンドしたのを拾い、直ちに口に入れ、ルウが染み込んだTシャツをじゅるじゅる舐めて洗浄、さらには台所洗剤でトントン染み抜きする事と相成りました。皆様も池ヶ原湿原を訪れた後の晩飯時には白地のTシャツを着用しないようご注意ください。

<アプローチ>
ナリテ山トンネルを抜けて少し先の盲端になっている林道へ入り、道路端に駐車して入渓。車一台であれば同ルート下降、二台であれば湿原へ車を回しておくとよい。

<装備>
滝を巻くのであればロープの必要はない。懸垂下降も必要ないであろう。

<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが酷い地域なので真夏は辛い。池ヶ原湿原は5月の水芭蕉シーズンが素晴らしいだろう。

<温泉>
楽今日館、奥飛騨まんが王国

<博物館など>
まんが王国は公営のまんが喫茶。舐めて掛かるとスケールの大きさにびっくりする。

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