2019年5月20日月曜日

Kyrgyzstan Ala-Archa Ak-say glaciar









ふつうの会社員でも行ける海外の山やクライミングエリアを探求するのも面白いものだ。限られた休暇時期と期間の中で歯牙にかける獲物を探索する、それ自体がゲームなのである。境遇を不自由に思うこともあるけれど、そんな環境でしか出会えない山々もきっとある。そう信じるからこそ、またやってくる月曜日も出勤するのだ。

キルギス共和国のアクサイ氷河には5000m弱の山々が連なっていて、壁もあれば尾根もある。難易度も易しいものから難しいものまで揃っていて多くの登山者が楽しめる場所である。イメージとしては人が少なく、山がでかい八ヶ岳。アプローチは短いが自分の足で標高を上げるので「登山らしさ」を感じる事ができる。標高3300mくらいから花崗岩の岩山が目立ち始め垂涎物の景色が展開する。言語の壁から細かな情報の収集は出来なかったがきっと、どこもかしこも手は付けられているだろう。

筆者らは馴化としてカローナ峰に登り、その後、フリーコリア峰(英名:free korea、キルギス語での発音不明)のBarberルートを登る予定であったが降雪悪天によりBarberルートには取り付けなかった。それでも、良い山旅だったと思う。

航空券は往復10万円前後、2週間程度の滞在費用を含めて20万円で十分お釣りがくる山域である。もちろん長期滞在すればさらに充実するはずだ。このほか、キルギス共和国は許可申請の必要は無いが、面白そうな山だらけである。そして飯もうまいし、居心地もいい。となれば、みなさん次の休暇はキルギス共和国に決まりだね。

<アプローチ>
まず、カザフスタンのアルマトイ空港から陸路でキルギスに入国するか、キルギスのマナス国際空港へ直接入国するか考える必要がある。マナス国際空港から入るのが簡単だが、入出国の便数がかなり少なく、乗り継ぎも悪い。一方、アルマトイ空港からはキルギスの首都ビシュケクまでバスが運行されている。しかし、ロシア語でのコミュニケーションが取れないと陸路での国境越えではリスクといえる。ここで時間を取られるのは会社員としては痛い。我々はアルマトイ経由でキルギスに入国する事とし、在キルギスの旅行代理店である JAPAN KYRGYZ SERVICE(JKS 旅行会社)に入出国及び入下山の送迎を依頼した。この旅行代理店は日本語、英語が可能なドライバーとガイドがいるので現地で色々と便宜を図ってくれる。事前予約のメールは日本語で対応してくれる。キルギスには他にも日本語対応可能な旅行代理店が有るのでそちらに依頼するのもいいだろう。なお、キルギス山岳協会も海外登山者をコーディネートしている。我々は最初にキルギス山岳協会へ英語で連絡したが、返信が無かったのでJKSを利用した。カラフシン渓谷、西カクシャールや天山山脈の高峰など渉外が困難な地域はキルギス山岳協会を通す方が無難と考えられる。キルギス山岳協会はビシュケク市内に事務所が有り、登山情報を提供してくれるので、時間が有れば訪れる事をお勧めする。草木に覆われた重厚な扉(ITMCの張り紙有り)で入るのを躊躇ってしまうが、「We are japanese climber」 の一言で心からもてなしてくれるはずだ。



アルマトイからビシュケクまで陸路で3時間程度である。カザフスタンの入国時に記載し、審査の後返却される紙切れ1枚の入国カードは出国の際に必要になるので絶対に無くさない事。さらにビシュケクからアラアルチャ国立公園までは車で45分程度である。ここもビシュケクからバスが出ている。

首都ビシュケクはホテルが幾つもあるので、適当に選べばよい。ただし、安いホテルだと英語が全く通じず少々困るかもしれない。ビシュケク市内での山用品の買出しはRed fox、SportExpertの2店舗で可能でガス缶はここで購入できる。キルギス山岳協会でも詰め替えたガス管が安価で購入可能だ。食料品・日用品の買出しはスーパーがどこにでもあるので困らない。行動食もスーパーで準備可能である。スーパーではクレジットカードの使用が可能であり、多くのスーパーにはATMがあるのでここで現金(ソム)を引き出すこともできる。USドルが必要な場合は銀行ATMに行く必要があるようだ。


国立公園入り口からトレッキング開始だ。森の中には可愛いリスや日本では見かけない野鳥、ヤギの仲間?も生息しており面白い。トレッキングだけでも訪れる価値は有るだろう。




3300mのラツェックハットには通年営業の小屋がある。

小屋泊まりを利用する場合は雑魚部屋500ソム、個室1000~5000ソムである。宿泊はAk-say travelからネット予約が可能らしい。なお、自分でテントを持ち込んで張る場合には50ソムだ。そのほか小屋ではガス缶、ガスヘッドの貸し出し、テントの貸し出しも行っている。そして4000mのアタックキャンプとなるコロナハットには無人開放小屋がある。殆どすべてのクライマーがこの無人小屋を利用するが筆者らは使用していない。クライマーが多くて狭いので遠慮した。ただ、この小屋にはネズミが住み着いているので食糧をデポする場合には注意が必要である。

アクサイ氷河は安定した氷河でアプローチに不安を感じる事は無いだろう。もちろん氷河上ではロープは結んだほうが安全である。

<装備>
登る場所にもよるが冬期登攀ギア一式。有人、無人の小屋が有るのでテントを持って行かなくても登山は可能。GWに行く場合でも結構寒い。我々はダブルブーツで入山したが、ロシア人はシングルブーツだった。手袋、着るものは日本で使用している冬山装備で良い。ただし、下部のトレッキングは暑いので帽子や薄手のシャツが有ると良い。登山ルートはASIAN ALPINE E–NEWS,No.23に詳しい。https://asian-alpine-e-news.com/

<快適登攀可能季節>
年中登る事が可能な山域ではある。夏は岩登りが楽しめるそうだ。いわゆるアルパインクライミングのシーズンは12月~5月上旬と推察する。降水量が少ない12月~2月が適期だろう。3月~4月は降水量がやや多いシーズンだが日本と比べれば降水量は断然少なく、晴れる日もあるので登る事は可能。5月になると降水量は少なく日照時間も長くなるので登り易いと思う。GWくらいだと大体20:00まで行動可能な程度に明るい。4000mのコロナハットで雪でも3300mのラツェックハットでは晴れている事も多い。天候が悪い場合はラツェックハット周辺の岩場、山で遊ぶのも楽しいはずだ。

<博物館など>
ビシュケクでの滞在期間は折り悪く祝日と重なり、博物館が休館していた。カザフスタンのアルマトイにある博物館を紹介する。

カザフスタン国立中央博物館


1997年までアルマトイはカザフスタンの首都であった。地震が多いという理由から首都機能をアスタナへ移したものの、文化施設は現在も多い。国立中央博物館ではカザフスタンの歴史を地球誕生から現在までを辿る事ができる。ありがたい事に要所には英語での解説が為されているので楽しめる。一般的に使用されていた農機具、牧畜具が日本と違う形なのも面白い。また、近代史の中でカザフと韓国(朝鮮)の繋がりが深いことは興味深いことであった。最も展示に力が入っているのは、最上階にある現大統領の功績紹介というのも実にそれらしい。

カザフ民族楽器博物館

人間の文化交流の歴史は何か特定のジャンルに絞ってみると面白い。楽器もその代表ではないだろうか。民族楽器博物館はカザフスタンの伝統楽器であるドンブラ、コブズを中心に世界の民族楽器を展示している。いずれの楽器も基本弦が二本しか張られていない二胡のような楽器だが、ドンブラは指弾きでコブスは弓弾きのようである。シルクロードにおける中東のウード、中国の琵琶など弦楽器の共通点と相違を見るのは興味深い。シルクロードその他カザフ伝統の打楽器が展示している。運がよければコンサートもやっている。

地学博物館


カザフスタンは石油・天然ガス、銅、鉄、ウランなど天然資源に恵まれた国家だ。堆積岩、火成岩いずれも豊富に産出する地学好きには一目おかれるであろう国家である。鉱物好きならば原産国カザフスタンの鉱石に幾つも見てきたはず。そんなカザフスタンの鉱物と地質を紹介する博物館が面白くないはずは無い。アルマトイ市内のとても入りにくい扉の先にあり、勇気を出して入れば鉄格子エレベーターで地下に案内されるので更に怯む。薄暗い展示室は雨漏りしていてバケツが沢山置いてあるが、管理しているおばちゃんの掃除が行き届いており清潔である。展示は各種カザフ産の鉱石が展示してあり面白い。地質についての解説もあるのだが全てカザフ語、別注ロシア語で全然わからなかった。予習しておけばより楽しめるだろう。

ゼンコフ教会


28人の戦士公園の敷地内にあるロシア正教の教会。世界で2番目に高い木造建築だそう。共産主義の時代には信仰は否定されたため博物館となったが、現在は再び教会としての役割を果たしている。観光目的で訪れたが信仰心に篤い方々の割合が多い。建築、壁画、ステンドガラスどれも興味深い。

<グルメ>
地元の人曰くビシュケク市内でキルギス料理を味わうならばファイーザがお勧め。キルギス郷土料理が地元向けに現代風にアレンジされている。人気店なのか客足が絶えない。この店のラグマンはとても美味しかった。



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