2020年2月12日水曜日

北岳バットレス 下部フランケ~第四尾根











冬型なのに風も弱いし晴れとる!

冬、越の国から甲斐の国までの道のりは遠い。これは実距離もさることながら心の距離の問題である。雪や雨の降る幾多の峠と隧道を越えるには空は余りに鈍色で、長時間ドライブ遂行のドライビングフォースを滅尽させるのである。つまり、自らの心の弱さにより、隣県近場での登山を選択してきた。駄目だ、而立を越えたというのに甘えていてはならぬ。とにかく行こう、北岳へ。

なんつって目の前に広がる北岳バットレスの高差は350mと中々でかい。ものの本に書かれている通り継続登攀にはうってつけの壁構成である。筆者らは第四尾根の下部フランケから第四尾根主稜へと継続した。下部フランケは3Pほどのスケール。凹状になっているので支点は取りやすいもののスラブ状の岩は侮れない。全体を通しての核心は間違いなく1P目だ。小ハングをフィンガークラックにアックスを打ち込み捻じ込み超える。Ⅴ級ではあるが支点は取り易いので思い切って突入できる。登攀時の積雪量は少なく、第四尾根主稜はスラブに雪が付いた雪稜だったので部分的にスラブに張った氷登った。下部を登れたならば城塞ハングは楽しく登れるはず。以降は距離にして200mくらい雪壁を登り雪庇を崩して稜線に上がった。山頂から廻りを見渡すと富士山が圧倒的な存在感を放っていた。登っているときは気づかなかった。

下部フランケ1ピッチ目は固い凝灰岩っぽかったのだが、2P目では粘板岩も見られた。粘板岩地帯はボロいので注意を要したが、北アルプスでは見かけない岩だったのでニヤニヤである。バットレスでも部分的には石灰岩も見られるようである。林道では真っ黒な泥岩も見受けられる。ダイナミックな時の積層、付加体メランジュを3000mスケールで楽しめるのが日本唯一北岳バットレスの長所である。思い切って行ってしまえば、あとは青空クライミング。日本の風土を楽しむならば、近場だけではなくいろんな山登らないとね。冬の南アルプスは新鮮な驚きばかりでしたとさ。

<アプローチ>
厳冬期は夜叉神のゲートから池山吊尾根を登りアプローチする。林道を歩いたり、下ったり登ったりと中々の長丁場である。八本歯のコル付近から小さな支尾根を下降して大樺沢へと降り立つ。ここからdルンゼを登って下部フランケ取り付きまで。幕営点はボーコン沢の頭手前の最後の樹林帯がお勧め。春は広河原から大樺沢を詰めて取り付けるそうだ。富山市内から夜叉神のゲートまで松本~韮崎間を高速を利用しても4時間30分くらいかかる。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々。

<快適登攀可能季節>
年中登れるだろうけど、岩が脆いので冬の方が楽しいのでは。

<博物館など>
南アルプス芦安山岳館:芦安の暮らしと南アルプスの自然がコンパクトに纏まった博物館。写真に写ったあしやす娘の歩荷力には目を見張る。さらにここでは「南アルプス 白峰三山の自然」など好資料が販売されており、財布のつい紐が緩む。ただし、早まることなかれ。南アルプスの資料は「南アルプス学概論」、「南アルプス学総論」という素晴らしい資料が無料PDFでダウンロードできる。富山県、長野県、岐阜県も協力し北アルプスについてまとめた文書の作成と公開を切に願う。

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