2021年3月6日土曜日

南アルプス 荒川出合

 





南アルプスは頗る遠くて冬山の状態イメージが今一つ湧かない。ここ数年北岳や甲斐駒など訪れてみて、近場の山とは全然違う雰囲気が不思議で面白い。寒いのに雪が無かったり、谷が埋まっていないので氷が露出していたり。雪が無い山の文化と雪だらけの山の文化は住人の精神構造も大きく異なるのだろうな~と想像力を掻き立てられる。そこに住む動物もまた、異なる生活様式なのだろう。

早川沿いの急峻な集落である奈良田にも1300年以上前と大変古くから人は住んでいた。豊かさの概念が異なる時代ではあるが、当時も十分な僻地であったと想像できる。何でも孝謙天皇が湯治で当地を訪れたというから、何がしかの魅力ある地であったのだろう。或いは軍事・物流の要衝地だったのだろうか。

閑話休題、山登りの話である。谷筋は雪が無く氷が露出しており、至る所に氷が発達している。傾斜が強い氷は「夢のブライダルヴェール」というちょっと声に出して言うのが恥ずかしい名前なのだが面白い。このほか、1ルンゼという長いラインもあるのだが、全然氷も雪も付着しておらず、ただの危ない泥壁に見えたので眺めるだけにしてきた。状態が良ければナメ氷から岩登り、氷登りと変化にとんだ沢登りが楽しめるのだろう。発電所の林道の横で泊まったり、旧隧道の管理道を歩いたりと深山幽谷の風情はないが、この地域の多くの山とはそのような存在なのだと思うし、それはそれでいいものだ。

近くには日蓮宗の総本山身延山久遠寺もあるので、歴史旅としてぶらぶらっと行くのが丁度いいと思う。また、日本海側では難しい冬の日光浴にも最適である。


<アプローチ>

富山から奈良田は異国と言っても過言ではない距離感である。富山市内から第一発電所まで松本~中富間に高速を利用しても5時間30分くらいかかる。第一発電所からは林道を歩いて2時間くらいで到着する。

<装備>
スクリュー、1ルンゼを登るのであればピトン(イボ含む)、トライカム少々かと

<快適登攀可能季節>
良く解らないけど、たぶん2月がいいと思う。

<博物館など>
早川町 歴史民俗資料館:自然系の展示は殆どなく焼畑農業一点張りの資料館。近代の奈良田文化といえば焼畑農業だったようだ。奈良田は水田耕作地に適さない痩せた山林ばかりで、広大な焼畑が必要となった。主食の粟、稗、蕎麦、小豆を耕作するのだが、1箇所につき3~4年耕作したのち一旦林にする。最終耕作から16年後に再び焼畑するというサイクルだったとのこと。点在する焼畑を同時に耕作するため、作業量は膨大となり、小屋掛けに家族総出住み込みで作業に従事した。当時の生活用具の展示は同じ物品でも日本海側とは異なる呼び名であったり、見慣れぬ物もあり見ごたえがあった。焼畑は持続可能な耕作方法で富山県でも有峰などの山村では行われたと読んだことがある。

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