2022年6月6日月曜日

海谷 不動川支流トウスル沢


 










 頸城の山は魔力がある。西の根知川から東の能生川までの区画の地形はバラエティに富んでおり、如何なる山遊びも楽しめることを予感させる。逆説的だがこの地域の自然を詳細に示した資料が乏しいことも、魅力を高めている。自分の眼でみて想像することの余白が十分に残されているのだ。

 海川最大の支流である不動川の両岸の地形に目を向けよう。右岸と左岸には緩傾斜帯があるが、雰囲気が異なっている。トウスル沢と谷根川の水源となっている右岸側の上部は凹凸が複雑になっており一体水がどのように流れているのか判別できない。ふと思った。これはかつて海の底で活動した火山の溶岩が北西側へと流れた跡なのではないかと。そしてこの溶岩流は千丈ヶ岳南西壁よりも遅い時代のものではないかと。訪れてそんな想像の真偽を確かめられる訳は無いが、訪れなければ何も判らない。

 不動川と合流する直前の箇所から入渓したが、当地では意外なことに美しい苔が発達していた。上部の台地上にブナ林が有れば水量が安定して苔の発達するのであろう。集水面積が小さいことも影響しているはずだ。沢登り的には容易で興味は薄いが悪くない。低圧形成した堆積岩なのか側壁や岩が容易に崩壊して面白い。標高400~480mは巨大ボルダーが転がる海谷らしい雰囲気。このボルダーは一体どこから来たの?シャワークライミングメインで泥だらけ巻きを交えて登っていく。
 傾斜が緩んでくるとボルダーは無くなりちょっとV字渓となってナメ状の小滝が続く。渓相は美しく遡行も楽しい。ただ、直登できない滝は泥巻きとなり慣れていないと怖いかもしれない。この谷の白眉は高差40mのナメ滝で間違いない。ゆるい傾斜をあくまで優美に流れる様は貴婦人そのもの。さらに進むと一層傾斜が無くなる。ここから不動川に似た浸食を示す岩も現れる。水量が豊富であれば深いゴルジュとなっていたことだろう。登りはヨイヨイで上機嫌なところだ。
 標高740m付近に到着すると水の流れは迷走するかのように蛇行し始める。水流を辿ると結構距離を歩くのだが台地に上がり横切ると一瞬で到着、みたいなところが沢山ある。大岩は少ないが魚影は割合多い。平坦地では大水で流出することが無く定着率が高いのだろう。探索した結果、トウスル沢の主流は931mピークに起因すると結論づけた。ただし、地形図現れていない小さな支流がいくつも分かれていて主流というのが特定しづらかったことを付記しておく。台地上は美しいブナ林となっており癒された。如何せん蛇行が酷く遡行も退屈だったので最後まで遡行せず同ルートを下降した。

 今回の探索は興味深い発見と沢登り的面白さがマッチして良き山行となった。谷根川、ニゴリ川、前千丈沢といった周辺の谷も面白そうなので時期を図って取り付きたいものだ。

<アプローチ>
粟倉集落内の林道は国土地理院の1/25000地形図に記載された状況と実際は異なっている。記載された林道を奥まで進むと上流でトウスル沢を横断する箇所がある。これより下部は沢登り的には興味が薄いので、この横断する付近に駐車する。なお、この横断点は釜沢用水の取水堰堤となっており、この用水にはバイカモが自生している。地域では大切にされているようだ。下降で最も安易なのは同ルート。谷根川を下降するという手もあるが車の回収が大変。

<装備>
スリングだけでOKだと思う。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、ナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
6月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。地形的に雪崩は少なく残雪は比較的少ないと考えられる。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

0 件のコメント:

コメントを投稿