2023年2月6日月曜日

戸隠 西岳P3稜

 







 戸隠山塊の西岳辺りの岩壁は禍々しい。黒々としたとした凝灰岩に大きさの異なる礫が無残に埋まる様は阿鼻叫喚といった風情。もし、地獄の演出してくれと業務委託された折には、この辺の岩を贅沢に配しゴージャスな三途の川大ゴルジュ帯を作成しようかと思っているところである。そんな西岳の岩を登ろうとしたとき、礫を含んだ凝灰岩はクラックが極めて乏しく、リムーバブルプロテクションは受け付けないので相当に難儀する。それでも先人たちは溢れんばかりの登行意欲をあらゆる道具を駆使しつつ発散させており、西岳の各稜もしっかりと登られている事実には執念を感じる。P3稜は登山大系を読むと特殊ボルトがどうのこうの記載されており、現代の感覚では今一つピンとこない。この辺の山域の取り扱われ方を考えると初登以後ボルトが追加された可能性は低い。登れるかどうかはさておき、遺跡観光と登山が楽しめると考えたら一石二鳥である。

 傾斜の緩い尾根を楽しくラッセルしていくと他の岩壁より品位に欠ける泥壁が出現する。これがナマズ岩壁で右から余裕で巻ける。何がどうナマズなのかは謎である。しばし雪稜をラッセルするとすぐにマッコウ鯨の岩壁である。と言っても、2月では岩壁は殆ど埋まっている。左側から雪壁を登っていくが、稜に上がる高差5mだけクライミングとなる。ここは草付きダブルアックスで快適なフリークライミングで登れた。何がどうマッコウ鯨なのかは謎である。ちょっとキノコ雪が発達したリッジを歩いてから現れるピークは右から草付きダブルアックスで登る。ピークからは登山大系にある横に連なる岩壁帯基部テラスから本格的な岩登りとなる。雪を丹念に除去しつつイボイボを打っていく。やがて草付きが無くなり岩のみとなると、待ってました!特殊ボルトです。釘の頭が正方形になっているような面白い形のボルトで、いにしえのスリングがいい味出してる。ボルトの施工方法は想像できない。そのすぐ上には最近大きく剥離崩壊した痕跡があり、かつてはホールドや支点があったことが伺える。ここから垂直から薄かぶりの傾斜となる。いわゆるドライツーリングでちょっと登ってみるが、けっこう難しいし岩は直ぐに欠ける。そんで次の支点は全く見当たらず6m以上ランナウトを耐えねばならない雰囲気。そんな気合は無いので、そろりと特殊ボルトに体重を預けて懸垂して帰った。

 クライミングそのものは5.7~5.9くらいなのだろうが、遺跡化したボルトでランナウトしつつ先の支点も取れないまま登ることはできなかった。岩壁も日々崩壊しているようで、かつての通りに登ることができないのだろう。とは言え全く不可能とは言い切れないし、新たな崩落により、快適に登れるようになるかもしれない。遺跡巡りと思って挑戦してみてはいかがでしょうか。

<アプローチ>
ややこしいが国土地理院の第2峰へ通じる尾根がP3稜である。品沢高原の最終除雪地点に駐車して林道を歩く。取り付きからナマズ岩壁までは傾斜の緩い尾根である。登り終わった後の下降はP1、P2コルから谷へ降りると早い。もちろんP1稜を降りてもいいし、P5まで縦走してP5を少し歩いて2回懸垂下降をしてから広いルンゼから大沢を下降するのもいい。雪の状態次第ではあるがルンゼから大沢や仏沢を下降すれば敗退も容易である。幕営箇所はマッコウ鯨の岩壁より上部の壁付近が無難。ただし、短い尾根で登る時間はさほどかからないので日帰りで臨むのが得策だろう。

<装備>
スコップは登攀具として必須。キノコ崩しはもちろん、段差を乗り越す時にはピッケルよりも安定感がある。不安定な場所で振り回すので要バックアップである。ダブルアックスで傾斜の強いところを登るのでアックスはひん曲がって小指がひっかけられる方が便利。イボイボ2~3本、カム#1番まで。

<快適登攀可能季節>
2月~3月上旬。岩峰が発達していて昇温による雪の脱落は早い。岩壁を抜けてからのキノコ雪崩しや壁の雪落としが無い方が楽だが草付きが凍っていないと難しいかも。

<温泉>
鬼無里の湯:とんでもないところにあるが、綺麗で良いお風呂。リーズナブルはお値段も嬉しい。火災から復活して無事に営業中。ただし、日帰り入浴は早く終了するので要確認。レストランでご飯も食べられるよ!

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