2023年3月13日月曜日

抜戸岳 秩父沢左稜

 










北アルプスの数多ある単一ルートの中で合理性を有しながら冬期未踏、かつ最も困難ラインは秩父尾根だと思っている。槍西稜なんて目じゃないくらいのスケールで岩搭が連続する高差350mのやや脆い岩場で夏に登っても歯ごたえが十分なルートである。東面なので年によってキノコ雪に苦しめられるだろうし、秩父沢へのアプローチ時期を見定めるのも難しい。さらに、Ⅰ峰の頭から左手に展開する秩父沢奥壁(こちらも多分冬期未踏)へは無理なく継続できれば最高のクライミングとなることは間違いない。

そんなルートに臨む実力も無ければ根性もないので、お隣にある面白雪稜から観覧することにした。左稜の末端は壁になっているので、左の谷を少し登り乗り上がった。壁を登る準備をしてこなかったため巻いたが、この末端壁から登ったらルートの充実度はマシマシとなるので登ることを推奨したい。白馬主稜を想起させるすっきりと爽快な雪稜が続き気分は最高。スタカットとコンテを切り替えながら楽しく登る。やがてアップダウンのある岩稜が現れるが、これがモアイ岩である。極端に岩が脆いので崩壊が進み35年前の記録にあるモアイ感は消失している。この辺りが核心なのだろうが、どうこういうほどではない。雪庇の張り出しが少ないところを選んで乗り上がると、たおやかな稜線で面白い。

秩父尾根の南面の物凄い岩壁を眺める絶好の尾根である。登ったタイミングは雪が少なかったが、着雪が多いとナイフリッジとなるはずだ。着雪の多い2月となればより難しくなるはずだ。懸案の秩父尾根の偵察だが、やはり難しそうという結論に至る。南面の方が高差が大きくまだ弱点らしいラインは有った。数年前と比較して大崩壊している箇所もあり岩が安定していないことが伺える。秩父沢奥壁も同じで傾斜は大変強く岩は脆そうだ。こちらは強いて言うならば北面の方が登り易いのかもしれない。以下、秩父尾根と秩父沢奥壁の写真を掲載する。意欲あるクライマーに是非挑戦していただきたい。なお、秩父尾根の北面側に期待していた氷は発達していなかった。









<アプローチ>
新穂高から左俣林道をへて秩父沢出合いまで。標高2150m付近で尾根末端である。末端は壁となっているので間違えることは無い。幕営するのであれば稜上で適当に張ることも可能だ。エスケープはクライマー向かって左右のルンゼから簡単にできる。最もお勧めは秩父尾根の頭にある台地で、秩父沢奥壁と対面にそびえる槍穂高の勇壮な景色を楽しめる。下降は秩父平から秩父沢右俣を下降するのが容易ではやい。

<装備>
下部岩壁を直登しないのであればトライカム適宜、ピトン又はボールナッツ。雪が多い年は土嚢袋があった方がいいかも。

<快適登攀可能季節>
2月~4月。日当たりが大変良い尾根で雪が落ち着くのは早いだろうが、秩父沢のアプローチが安全になるタイミングとなる時期を十分検討されたし。

<温泉>
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。帰りならば割石温泉まで行くのもいいだろう。


0 件のコメント:

コメントを投稿