2024年8月20日火曜日

篭川 黒沢

















 アルペンルートの東側玄関口である扇沢の横を流れる篭川。この支流を沢登りする人は多くないかもしれない。地形図ではどの支流も一直線に水線が描かれており変化に乏しそうに見える。その中でもしかしたら、と思わせるのが黒沢の1070m左支流だろう。手始めは面白そうなところからやりたいのが人情というもの。北アルプスの新たな側面に期待して入渓。

 篭川の広い川原を流れる水は川幅に比して小さい。しかし、足を入れると水は重く足をすくわれそうになる。油断せずに渡渉したい。黒沢本流は思った以上に水量があり、左支流とは滝で出合っている。右の方が楽しそうだが左へ入る。左は赤みを帯びた花崗岩で黒沢という名前がどうも似合わない。ガレも結構堆積している。はずれの不安を抱きながら歩みを進めるとやがて美しい段瀑やナメが現れ一安心。シャワークライミングと小さい巻きで越えると一旦川原となる。中盤からもシャワークライミングをまま味わえるので飽きない。終盤は側壁が地形図と整合しないスケールで発達しており、谷は水の無いスリットゴルジュとなる。迫力のある景色のなか小滝群を楽しく登ると、それ程のヤブコギも無くシャクナゲが繁茂した尾根に出る。
 さて、反対側の本流へ下降だ。本流へのアクセスはぬめり易いものの下降はしやすい。水が現れ始めると驚くほど冷たく谷全体が冷気に覆われている。そして、黒沢という名前の表すがごとく岩盤が黒い!地形図では淡々とながれるように描かれているが、豊富な水量を豪快に流れるナメ滝が多く登っても面白いのではないかと思わせる。黒い岩に発達する緑色の苔も良き演出である。清冽な水は真夏の遡行にぴったりであろう。意外な20m大滝も現れて下降も飽きさせない。終わってみれば大満足の半日遡行であった。

 小さな流域にも関わらずここまで変化にとんだ渓相を楽しめるとは想定外であった。花崗岩のシャワークライミングと安山岩質の溶岩による黒ナメの美。剛柔兼ね備えた良渓と言えよう。いずれ篭川の他の支流も登り比較したいものだ。次は白沢天狗山西面の岩場と合わせて対岸の白沢を登ってみようか。

<アプローチ>
黒沢出合い付近の道路路側帯に駐車する。登攀は左俣遡行~右俣下降のラインの方が面白いと思う。

<装備>
沢慣れしていれば懸垂用のロープのみでOK。そうでないならばカム少々。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。北アルプス主稜よりも標高が低いのでシーズンは長い。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

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