ジャンダルム周辺には過去も何度か行っているのだが、いつも一体どこをどう登ったのかはっきりしないことばかりだった。登った日が大体ガスっていたこと、筆者の地形認知能力が低いことが理由に違いない。しかしこのたび快晴のもと、概念を把握して登山大系のルートを認知することが漸く叶った。
随分と久しぶりに春の白出沢を詰めていると朧げな記憶が徐々に想起されてくる。そういえばセマ谷はこんな感じのゴルジュだった、セマ谷上部の傾斜が強くて意外に緊張した、カチカチの雪面を延々バックステップで恐々下降した。靄がかった過去の光景がモノクロになり、やがてカラーになっていく。緊張しながらもじんわりと懐かしい。悪天にせっつかれながら登る必要がないので、ゆっくりと概念を確認しつつ登る。やがてジャンダルムその方とご対面。クライミングの開始地点まで少々悪いアプローチをこなし、リッジ状の凹角からロープをつけてスタート。
クライミングはジャンダルム山頂直下2Pは凹状や簡単なワイドクラックを繋ぎ50m~60mくらい伸ばして進む。脆い岩は固まっておりプロテクションは良好でアックスクライミングが楽しい。割合残置支点が多く見かけるので過去はよく登られていたのであろう。ジャンダルム本体頂上への登りはプロテクションの取りづらそうな傾斜の強い中央凹角を避けて右上した。ここもプロテクションは良好である。ただ登るにつれて岩が堆積しただけの状態となるので注意したい。登山体系にはⅢ級とあるが、実際に各ピッチがⅢ級なのか全然わからなかった。気持ちよく面白いクライミングに感じたのでⅣ級くらいあるのかもしれない。ちょっと緊張する縦走をこなす必要があるので、ジャンダルム山頂についてからのほうが緊張する。白出沢の下部平坦地まできてようやく一安心。埃っぽい風が春の香を運ぶ。靴の中は融雪で水浸し。また一つ冬を越えたのだ。
自らの記憶の覚束なさには毎度あきれる。しかし、記憶力が良すぎても懐古の悦びがないのではないだろうか。鮮明な記憶は事実と真実から良きところを抽出した思い出という概念を作り出すのに障壁となる。適度な記憶力の悪さと記憶補正精度のプラス側への偏りが長く山登りを楽しむ重要特性なのかもしれない。
<アプローチ>
ジャンダルム飛騨尾根を登ってトラバースして取りつく、或いは白出沢を詰めて取りつく。白出沢を遡行して取りつく場合には大滝が出ていると右岸から高巻く必要がある。積雪が少ないと天狗沢を少し上がり尾根を乗越したほうが良いかもしれない。更にセマ谷を詰めあがるが、雪崩のリスクがあるため積雪期は相応の判断が求められる。セマ谷内も部分的に悪い個所が出てくるので油断ならない。正面フェースはセマ谷から登ってくると最も左側に回り込んだところにある。下降はセマ谷が降りやすいコンディションならばそちらを、そうでない場合には奥穂まで行き白出沢を下降する。厳冬期で雪崩リスクがある場合には涸沢岳まで行って西尾根を下降することも検討したい。
<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン少々
<快適登攀可能季節>
12月~4月。岩がぼろいので岩が固まっている時期がよい。厳冬期はエビの尻尾に覆われてやりがいがある。
<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。
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