黒部川支流の沢登りにおいて日帰りで遊べる谷は多くない。沢登りの内容云々という注文を付け始めるとほぼゼロである。そんななかでも希少な尾沼谷小杉谷はアプローチが良く内容も素晴らしい日帰り美渓で県内の沢登り愛好家にはぜひ訪れてほしいところだ。
小杉谷訪渓には小噺がある。その筋の友人から尾沼谷から化石が見つかった大正元年の記録があるとの情報をいただいた。その後に化石の有無や含まれる岩体の場所を調査・公表した記録は無いとのこと。筆者の少ない経験上においても、黒部川流域支流で化石が取れそうな岩があるとは俄かに信じがたい。そこで黒部の他の谷を遡行した後、とちの湯から歩いてすぐの川原で化石が含まれるとされる砂岩の転石を探した。すると堰堤下の最下流で頻度はごく少ないものの砂岩を発見する。この砂岩が固く濡れると黒色を帯びているため本谷にある岩と見分けがつきにくいのが厄介である。尾沼谷のどこかにあることが分かったなら、あとはどこにあるのか、更に化石は見つかるのかが論点となる。尾沼谷の中で日帰りで取りつき易く沢としても面白そうな小杉谷からという運びとなった。
尾沼谷の右俣ともいえる小杉谷は二段の大滝で出合う。下流側のルンゼから高巻いたが1ピッチ目が見た目よりも悪かった。合計3ピッチの巻きののち歩いて小杉谷へ入渓する。大滝の上は快適なシャワークライミングを基調として登って行く。集水面積が少ないため、水量は控えめで楽しいクライミングである。時折巻きも入るが特段悪くはない。地形図で中間部に示された滝マーク手前屈曲部からガレが多くなり多くの滝が埋まったと推察される。滝マークの箇所に一切滝は無くガレが続いた。このまま終わるのかと思いきや1250m付近から再びシャワークライミングが続き嬉しい。地形図で浸食されている表現となっているところから岩質が変わり実際ゴルジュとなる。雪の残っていた側壁には季節外れのニッコウキスゲやギボウシが咲いており心和ませてくれる。美しい草付きもキュンキュンポイント。このように変化に富んだ渓相と登攀内容がお勧めポイントである。
さて、本題の砂岩岩体と化石である。砂岩とみられる岩体は確かに存在した。先人の報告を踏まえ現地で岩を確認したことに何らかの意義があれば嬉しいことだ。少なくとも自分は山を知れて楽しかった。きっとこうしてゆっくりと黒部という山の知見が深まるのだろう。川原を歩いていて偶然化石を見つけた大正元年11月の内山村の村人の幸運、それを聞きつけて記録した吉澤庄作氏あってこその山行であった。どうもありがとう。しかし、あの固い硬い砂岩の中にアンモナイトの化石が出てくるとはあんまり想像できない。いずれこの眼でこの谷から化石を発見したいものだ。
<アプローチ>
とちの湯に駐車して林道をしばらく歩いて入渓。小杉谷は本谷のクライミング開始となるCS滝のわずかに手前であるためアプローチはいい。車が二台あれば宇奈月尾根についた登山道を利用して降りると楽。一台の場合は第三登山口近くの支沢を下降して堰堤の上に戻れると思う。
<装備>
カム一式、ピトン各種。足回りはラバーでもフェルトでもいいかも。泥壁草付きが多いのでハンマーはピックが長いほうが有利。
<快適登攀可能季節>
8月~10月 残雪、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし
<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。
<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。
<博物館など>
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。
<グルメ>
よか楼:昨今話題の町中華的定食屋。コスパという卑しい概念を持ち出さなくても味で選べる良店。ジビエ料理も時折そろえる。
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