2023年8月16日水曜日

黒薙川 北又谷漏斗谷






















 北又谷は登山大系曰く本邦屈指の美渓。その美渓からつるべ落としの如く連瀑を連ねる漏斗谷へ繋げれば本邦屈指の総合沢登りルートとなるのは自明の理。そして、そのような所を沢屋が訪れるのは瞭然の極み。

 北又谷本谷下部はご承知の通り、水との熱いバトルとなる。最も注意したいのは大釜淵で、どんなに水量が少ない状況でもロープをつけて臨みたい。花崗岩の白とエメラルドグリーンが眩しく酩酊するぜ。漏斗谷の出合から直ぐに7m滝が現れるがこれは簡単に巻ける。以後、非常に楽しいゴルジュ連瀑をわいわいと進む。8m+15mの二段滝を右岸から巻いたら第一ゴルジュが終わったようだった。第二ゴルジュはシャワークライミングと泳ぎが連続して益々うふふ~んなワールドである。ゴルジュの最狭部抜け口にあるハンドジャム&フットジャムがバチ効きクラックが気持ちいい。第二ゴルジュを抜けてゴーロになる辺りから突如花崗岩が消失し、やがて泥岩のような黒い岩となり崩壊が進んだゴルジュ地形へと変化する。この急変する至福を何卒どうかよろしく味わってほしい。以後、短い区間に蛇紋岩や何らかの変成岩など岩質が多様化する。第三ゴルジュは耕作滝からスタート。今度は左のチムニーをワイドクラック風に楽しめる。岩の隙間から抜け出るのは沢でもクライミングでも登山道でも幸福感湧き出でるのは何故だろう。びしょ濡れシャワークライミングの後、耕作滝級のでかい滝が現れる。滝の右側にある傾斜の強いクラックチムニーを登ろうか逡巡したが、下部クラックがフレア気味のハンド~フィストで支点が取れずヌルヌルだったので右岸から巻くことを決定。この草付きの巻きがこの谷で唯一悪いところだった。核心はこれで終了。その後も嬉しい楽しい小滝を登り、どえらい急な階段状を登ったら想像以上に長い詰めである。
 さて、今山行の筆者らの目的は1791m南と長栂山西の秘境お池巡りを堪能し、湖畔にてペルセウス座流星群を観測することである。抜群のロケーションの中、天候に恵まれ人生最高の観測会を無事終了。湖面に浮かぶ無数の星明りは生涯忘れることはない。

 水量と天候に恵まれる好コンディションだったため、悪さはほとんど感じることはなく楽しいばかりの遡行であった。完成度抜群の沢登りは漏斗谷で是非どうぞ。

<アプローチ>
小川温泉の登山者駐車場からタクシーを使って越道峠まで行き、石碑横にある謎の登山道を利用する。そこから支流を下降して魚止滝下に出る。筆者らは1083.9三角点と1097のコルから下降した。下山は朝日岳を経てイブリ尾根登山道を利用する。そこそこの幕営点は第一ゴルジュの手前、第一ゴルジュを抜けた後、第二ゴルジュを抜けた後、1800m付近と割合豊富である。筆者らは幕営可能点の見当がつかずに、時間にむっちゃ余裕があったが第一ゴルジュ終了後標高1000m付近に泊った。それでも、2日目に頑張れば下山できそうな時間であった。渇水期、足並みの揃ったパーティーで北又谷入渓初日を早朝にすれば第二ゴルジュを抜けるところまで行けるはず。そうすれば一泊二日で行けると思う(速くて楽しいかどうかは別でね)。

<装備>
カム0.4~1.0、ピトン少々。足回りはフェルト推奨。クライミングシューズ不要。荷揚げ用にフローティングロープを持って行ったが、なくても良いかも。ライフジャケットがあると安心だがなくてもいい。盛夏を過ぎるとウェットがあったほうが快適。

<快適登攀可能季節>
8月~9月 水量、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし

<温泉>
小川温泉元湯:ホテル小川と不老館、あなたはどちらに入る。

<博物館など>
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。シャクナゲとツツジの時期が素晴らしい。謎の置物も気になる。

朝日町歴史公園:縄文時代の不動堂遺跡が再現されている他、江戸時代町屋であった旧川上家の家屋が当時の状態を保ったまま移設されている。ここでは朝日町名産のバタバタ茶を自分で点てて試飲できる。12月~3月は閉館するので注意。

朝日町立 ふるさと美術館:昨今の大正アートブームで再注目の竹下夢二の作品を所蔵している。江戸~大正期、朝日町の泊は宿場町で大いに栄えており、その盛り場に夢二が訪れていたようだ。妻たまきとの破局事件の舞台は宮崎海岸だ。この情事の続きは朝日町の図書館で。

百河豚美術館:野々村仁清の作品を数多く展示している。デフォルメされた鶏が描かれコップもあり、仁清のモダンな感性を感じる事ができる。他にも話題の伊藤若冲や、尾形光琳に酒井抱一といった琳派ビックネームの作品も展示。

下山芸術の森発電所美術館:きらりと光る興味深い展示をやっている。こちらも12月~3月の冬季は休館するので注意。

杉沢の沢杉:地口か回文のような名称だが素晴らしい場所。田園と防風林の中にポツリ広がる湿地杉林で、まるでもののけ姫の森のようである。近年、入善乙女キクザクラという桜の新種がここで発見されている。この原木は未だ杉沢の沢杉でしか発見されていない。北陸は菊咲きの桜の品種が多いらしい。

2023年8月7日月曜日

万太郎谷 井戸小屋沢










谷川岳の素晴らしさは沢にあると勝手に思っている。単位面積当たりの岩体種類が多く、遡行していると目まぐるしく渓相が変化するのが面白い。継続遡行で東西南北一気に広く散策すれば世界ふしぎ発見!できること間違いない。

といっても、谷川岳は遠いので登山事情には明るくない。万太郎谷はどうやら谷川岳でも人気の流域のようである。支流も丹念に遡行されており、その中で最も人気があるのが井戸小屋沢という事になっている。万太郎谷本谷下部の渓相は花崗閃緑岩で巻機山と似ている。明るく美しい浸食と深い釜で遊べるのがいい。井戸小屋沢へ入ると何故かもう高山帯の雰囲気で白山の沢上部、みたいな感じになる。草付きV字で水量が少ないからそう感じるのであろう。とにかく快適で楽しい。技術的な核心は1300m二俣を左へ入り、3段30m滝からである。ここから岩質が急変しているが具体的な種類は解らなかった。何となく白山庄川水系横谷の上部と似ている気がする。3段30m滝の真っ向勝負は時間がかかるので右岸を小さく巻く。途中少し嫌らしい箇所はロープを出していきたい。この上部はゴルジュ小滝連瀑となり巻きは許されない。ヌメヌメで渋い登りが連続し体感5.7~5.8くらいである。要所でピトンとカムが有効なので落ち着いて登りたい。ここのゴルジュが井戸小屋の名前の由来なのかもしれない。連瀑帯を終えると水流が曖昧になり、万太郎山山頂へ抜ける水流を当てるのが難しくなる。どれも大差無さそうなので適当に登ったら山頂より少し北側へ抜けた。

人気の理由が頷ける内容であった。美しい下部は勿論、上部短いながらも登攀系沢としても十分に楽しめるのがいい。井戸小屋沢~オジカ沢~赤谷川下降~エビス大黒沢という登攀系沢の継続計画に組み込むのも面白そうである。

<アプローチ>
吾策新道の駐車場から少し林道を歩き、地図で示されるスリット堰堤を抜けて入渓。下山は吾策新道が楽。

<装備>
ピトン少々、カム少々。上部のヌメヌメ連瀑ゴルジュ対策のためフェルトがいい。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。なぜかオロロが生息していないので盛夏にも行ける!それが谷川岳の魅力。

<博物館など>
絵本と木の実の美術館:廃校になった小学校を利用した美術館。とっても面白いのでいってみよう。ヤギが三匹いて触れ合おうとしたらド突かれた。要注意

十日町博物館:新潟県といえば火焔型土器の聖地。全国の縄文土器全て魅力的だが、やはり火焔装飾の異様さは頭抜けていて素晴らしい。国宝が8点くらい?展示されているが、重文、市指定文化財の土器も面白く絶対に訪れたい博物館である。そのほか、織物の歴史と信濃川と雪といった展示も面白い。

越後湯沢雪国館:川端康成がボンボンでどうしようもない奴だったのではないかと思ってしまう

棟方志功アートステーション:道の駅の二階にあるので入ってみると良いと思う。

清津峡ゴルジュ














 日本三大何ちゃら、世界三大うんちゃら、といった三大シリーズを挙げられるとついつい気になってしまう。これはどういう訳か。3が1以後の最初の2以外の素数だからだろうか。星空業界においても夏の大三角、冬の大三角は有名だけど秋の四辺形や冬の大六角形を知っている人は少ないのではないかと思う。そんじゃ日本三大峡谷はどこかというと、黒部峡谷、大杉谷、清津峡である。黒部峡谷と大杉谷は訪れたので次は清津峡となるのは実に自然な流れ。

 清津峡の入り口は半端ない観光地となっている。どうやらトンネルから眺める清津峡が人気らしく、日中は最寄りの駐車場は満車で第四駐車場まで車列が埋まる。そんな中、上下ウェットスーツ&ライフジャケットのいで立ちは完全に浮くので早立ちが鉄則である。
 入渓して直ぐに物凄い峡谷美が展開する。深くえぐれた柱状節理異形ゴルジュはうっとりする。序盤は基本川原でまま泳ぐもののそれ程ではない。少し開けて、あれもう終わり?一瞬と思ってからが面白くなる。とにかく渡渉や泳ぎが続き水遊び万歳モード。観光地として知られている清津峡の景色が延々続くので日本三大峡谷の一角を独占できるのが最高だ。筆者らが訪れたのは渇水の盛夏で困難は一切なくひたすらエンジョイした(ただしオロロの歓待は受ける)。鹿飛橋を過ぎた見返り岩までがゴルジュ地形であとは川原となる。オロロから逃げるべくハイキングコースへ上がり冷えた体を温めた。

 これほどまで水遊びが楽しめる日帰り沢は珍しい。富山県で例えるならば小矢部川瀬戸の長瀞ロングエクステンションバージョン。水量の多寡により困難度は大きく変わるが、この手の沢は困難の追求より面白さを求めた方がいい気がする。清津峡は渇水期に観光がてらどうぞ。ちなみに世界三大峡谷はグランドキャニオン、フィッシュリバーキャニオン、ブライデリバーキャニオンだってよ。それにしても、誰が選んだんだろうね。

<アプローチ>
清津峡の駐車場に駐車して歩いてトンネル前まで行き入渓。第一駐車場は早朝はクローズしており駐車不可。最近のインスタ映え効果なのか、日中は物凄い人で駐車場に入りにくい。そのため、早朝に入渓することを推奨。ゴルジュ終了後はトレッキングコース用の駐車場がある八木沢まで歩き、タクシーか車もう一台で入渓点まで戻る。なお、峡谷沿いに登山道マークがついているが峡谷までの高差があり、エスケープできる場所が限られるうえ、道の状況も不明なのであてにしない方が良いと思う。

<装備>
念のためロープ。ずっと水を浴びているのでウェットスーツは上下欲しい。ライフジャケットが無いとすごく泳ぎ疲れると思う。足回りはラバーでもフェルトでも可

<快適登攀可能季節>
8月~9月。暑い時期がお勧め

<博物館など>
十日町博物館:新潟県といえば火焔型土器の聖地。全国の縄文土器全て魅力的だが、やはり火焔装飾の異様さは頭抜け素晴らしい。国宝が8点くらい?展示されているが、重文、市指定文化財の土器も面白く絶対に訪れたい博物館である。そのほか、織物の歴史と信濃川と雪といった展示も面白い。

磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館:十日町周辺はアートで町おこしをしており、興味深い美術館やモニュメントが沢山ある。廃校後を利用した美術館で清津峡最寄りなので是非どうぞ。

2023年8月1日火曜日

笛吹川東沢 法螺の貝~釜ノ沢
















何たらの名山、かんたらの名山と称される山があると登りたいと思う。誰かが良いといった事柄には何か理由がある訳で、それが言われ続けているのであればやはり魅力があるのだろう。他者の価値観に相乗りすることは決して悪い事では無く、新たな発見の種と捉えたい。数多ある国内の名山業界の頂は深田久弥選の日本百名山ではないだろうか。これまで幾つ登ったのか分からないが、本州中部の百名山山は登った。と思っていた。何!甲武信ヶ岳は百名山とな。ならば、法螺の貝から釜ノ沢を経て登る豪華絢爛コースから登るしかない。

富山からのロングドライブを経て到着する西沢渓谷入り口は想像以上のハイカーで賑わう。首都圏から近く美しい渓谷が手軽に親しめるためだろうか。登山者以外にも気軽に自然に親しみ楽しんでいる人がいると何だか安心する。
全然調べていないため、どこが法螺の貝ゴルジュなのか解らないまま、最初に出てくる滝を登る。滝の左に良いクラックがあり登り易い。後から、ぐーと狭くなるところが出てきてそこが法螺の貝ゴルジュだった。アベレージより水量はずいぶん少ないようで威圧感なく楽しめる。4mくらいの滝の左岸を登るところが悪くフリーだと5.10bくらいだと思う。カチ持ちからのスラブ面立ちこみ、ガストン切り返しと結構ムーブがあったような。この部分は残置は無いし、丁度いいリスとクラックもないので否応なしにフリークライミングとなるかも。あとは泳いだりヌメヌメをロープ出して登ったりしたら終了。ゴルジュ以降は川原歩きが続く。東のナメ沢なんか壮観で登ってみたくなる。所々現れるナメ滝と釜にうっとりしながら釜ノ沢へ。ここもナメ滝が続いたのちに広河原に出て以後はガレがメインで散発的にスラブ状を巻いていく。甲武信小屋に直接出る沢が容易そうだったので、そちらを選択するとポンプ小屋に出て道を使い登山道へ出る。甲武信ヶ岳の山頂は想像よりずっと素晴らしく眺望をたのしんだ。たまには遠出でメジャーな山も悪くない。沢の中に看板が有ったり、巻き道が示されていたりと吃驚するよ!

ところで、時代は価値の多様化甚だ著しい令和である。もっといろんな名山を選定して広く登山普及を狙ってはどうだろうか、水、土壌など環境DNAを指標にした生物多様性の名山、逆の生物多様性が低い名山というのも面白そうだ。他にも日本有史以来歴代総生産額(GDP)百名山、陸生貝類の名山、土木建築の名山、北東の風が卓越する名山、土壌カンタリジン濃度が高い名山、ハネカクシ生息の名山、ドロムシの名山、木地師の名山、アニメ聖地の名山など幾らでも指標設定はできそうな気がする。何を指標にするかによっては全ての山が名山に成り得る。そうなれば誰でも山に登ってみたくなるかもしれない、裾野が広い遊びなのである。名山とは心の所作、いつも心に名山を。

<アプローチ>
西沢渓谷入り口に市営駐車場があるのでそちらに駐車する。うっかり遅出すると満車となり、売店横の有料駐車場を利用することになる。少し林道を歩いてから鶏冠沢手前の吊り橋付近から川原を歩き始める。下山は登山道を利用すると楽。早立ちすれば日帰りも可能だが、富山から遠いのでのんびりお泊りした方が楽しい

<装備>
カム少々、ピトン(ナイフブレード、ペッカー)、持って行かなかったがクライミングシューズが有効だと思う。足回りはラバーソールの方が登り易い。ウェットスーツも有った方が快適

<快適登攀可能季節>
全然知らないけど水遊びなら7月~9月が快適そう。