2016年9月21日水曜日

加須良川本流













加須良川は不遇の谷である。東京、大阪、名古屋などの主要都市から遠い上、隣には白山の一番星境川が流れる中、それを素通りして山越え入渓となれば訪れる人が少ないのも致し方ないといえる。だが渓谷としては一級品であることは間違いない。地形図上でゴルジュ状になっている所から日本離れした景観が展開する。下部の峡谷は垂直の岩壁に囲まれ圧倒される。ここは堅そうな岩の部分もあり、コンディションを選べば静かなマルチピッチクライミングが楽しめる可能性がある。魚留滝をかわして降りると上部の小滝は快適シャワークライム。後方を振り返れば連瀑沢が「登ってみろよ」と言わんばかり挑発的に水を落としているのが気にかかる。暫く穏やかな場所が続くが、ふと周囲を見渡せば巨大なスラブ壁が睨みを利かせているので油断ならない。鬼ヶ島か悪魔城に迷い込んだような奇怪岩峰が立ち並ぶゴルジュ状になってきたら、30m大滝が近い。瓢箪山直登沢の大滝と対峙して流れる様は迫力満点である。台湾ばりの巨岩帯を越えると谷は穏やかになる。どの沢を詰め上がり、どこを降りるかは悩ましい。下降でスラブ帯にぶち当たってしまうと、時間が掛かるのは間違いない。あみだくじのような緊張感もまたこの山の魅力だ。紹介した本流のほか、瓢箪山直登沢、国見山直登沢、連瀑沢など各支流の遡行も充実するだろう。

<アプローチ>
2016年9月現在加須良川で水力発電所工事を行っており桂湖から峠越えの道は一般車両通行止めとなっている。桂湖に駐車し道路を歩いて入渓。魚留滝までの川原歩きが長い。本流を登ったならばボージョ谷へ降りるのが自然であるが滝が続き下降には時間は掛かるだろう。この山はどの沢を詰めても稜線に登山道が無いのが素晴らしい。小さな沢にも地形図では判別できないスラブが隠されていたりするので、下降の時間は余裕を持っておいたほうがよいと思う。

<装備>
カム少々。ピトン少々。懸垂下降用の捨て縄を多めに。懸垂や荷揚げ用のロープ40m程度があったら便利だと思う。イワナは全く生息していないので竿は要らない。

<快適登攀可能季節>
9月~10月。白山はなんといっても秋がいい。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

<博物館>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。
囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していた。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。

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