2016年9月18日日曜日

境川 ボージョ谷

















大阪わらじの会故川崎実をして「渓谷の中の渓谷」と言わしめたボージョ谷である。境川といえば大畠谷が全国的に有名で、県外から訪れる殆どの人が大畠谷のみを登って境川(或いは白山の沢)終了!となってしまうようだ。その気持ちも解らないでもないが、ボージョ谷に行かないのは非常に勿体無い。スケールこそ小さいものの、言葉通り短い流程のなかに沢登りの魅力がむせ返るほど濃縮されていて、大畠谷と相並んで境川流域の魅力を支えている。平成年代の力士に例えるならば大畠谷は横綱白鵬、ボージョ谷は大関魁皇である。さらに、昭和歌謡で例えるならば大畠谷は美空ひばり、ボージョ谷はちあきなおみといった所だろうか。

前置きはこれくらいにして遡行内容へいこう。出合いは豪快な滝。では無く意外にショボイので地図をよく確認し間違えないように入渓しよう。段差を登ると右から巻けるCS滝、胎内潜り岩と続くのが目印だ。そこから連瀑となる。10m以下の滝は概ね適度な緊張感のシャワークライミングを楽しめる。下部の岩は支点が取り易いので不安を感じたらロープを出せばよい。しかし余りに時間を掛けてしまうと一泊二日での周遊は難しくなるだろう。周囲の岩壁が高くなりぬらりとした2段50mの大滝が現れるとクラックに乏しい軟らかい岩質に変わり直登が難しくなる。この沢の巻きの悪さは北陸の沢にしてはフレンドリーな部類であるが油断しないようにしたい。やがて現れる60m直瀑は峭壁の大伽藍に守られ堂々と鎮座する大日如来の如し存在感だ。一方、次に現れる40mスラブ滝は優しく流れ薬師如来のような微笑みで迎えてくれる。終盤は易しいながらもミニゴルジュとなっており最後まで演出に余念がない。下降もこの沢の魅力の一つだ。筆者らは左俣の手前の沢から稜線に上がり、少々藪をこいで仙人窟岳と1511mピークのコルから加須良川へと下降した。下降もルートファインディングに懸垂にクライムダウンに忙しく気が抜けない。広い川原に出たらほっと一安心。桂湖までは林道を歩いて約30分の道のりである。

遡行それ自体は難しくないが総合力を要する谷である。それ故に遡行後は沢登りらしい充実感で一杯になれるはずだ。

<アプローチ>
桂湖の駐車場に駐車し大畠谷出合いから入渓。出合いまでは境川本流を遡るが難しくない。上部の詰めで適当に登るとスラブ帯にぶち当たってしまうので注意が必要。筆者らも詰めを間違え、悪い場所を登ってしまい難儀した。対岸から望むボージョ谷右俣は岩壁に深い切れ込みをもって威圧していた。幕営場所はボージョ谷上部の1200m付近川原と、加須良川1150m付近の川原である。コルからの下降も時間が掛かるので、出来る事ならば加須良川へ降りて幕営したほうが楽だと思う。下降は懸垂を計5回ほど行った。

<装備>
カム少々。ピトン少々。懸垂下降用の捨て縄を多めに。懸垂や荷揚げ用のロープ40m程度があったら便利だと思う。

<快適登攀可能季節>
9月~10月。白山はなんといっても秋がいい。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

<博物館>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。
囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していた。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。

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