2017年8月3日木曜日

手取川 クマ谷








「好きな動物は?」と聞かれたら都度苦悶した挙句に「クマかな」と毎度同じ回答をしている。クマの愛らしい仕草とサイズ感、ライフスタイルは魅力的である。特にナマケグマとマレーグマへの思い入れは特別だ。
 ナマケグマは長い毛が特徴の中型熊である。観察するとその名前に反して活動的だ。動物園では「いや、俺らこのとおり頑張ってまっせ」と言わんばかりに観客を楽しませてくれる。しかし、ナマケグマは今後どれだけ頑張ってもキンベングマになる事は無い。第一印象によるレッテル張りが未来永劫続くと思ったら人間の業に触れた気がして、ブルーな気分になる。この時感じた現実と過去と未来への乖離をアイロニカルに著した散文詩「酷暑日のナマケグマブルース」にポップな振り付けを施したが、未だ未公開である。
 一方、マレーグマは毛の短く落ち着きの無い小型熊である。顔立ちは媚びた三下のように自信なさげで親しみがもてる。マレーグマと言えば、餌を横取りされた際に苦悶する行動で一斉を風靡したツヨシを忘れてはならない。彼が煩悶する姿を観て人は嘲笑した。本人が悲しむほど嘲り笑った。残酷な事である。人間同士でも同じようなものか、もっと冷たい。熱も匂いも声も届かぬ冷たいマジックミラーのアクリル板越しに嘲り笑っているようなものだ。この時感じた希望の無い状態を著した散文詩「人の不幸は蜜の味、クマの不幸は蜂蜜のテイスト」にモーツアルト交響曲#40第一楽章をテーマとして安来節風振り付けを施したが、こちらも未公開である。

 なぜ、唐突にシウマイに橄欖岩が入っていたようなビターな思い出話を申し上げたかというと、クマ谷が、熊谷ではなく、隈谷でもなく、増してや球磨谷でもなくて、クマ谷であったからである。谷の名前について近所の親父さんに聞いたところ「名前の由来は熊が多いからではないか。」みたいな事を方言で言っていたので(半分くらいしか理解できない)アニマルの熊である事は間違いないだろう。

 さて、冗長な前置きはこれくらいにして遡行内容へ話題を転回するとしよう。入渓してまず、驚いたのは富山にある飛騨帯の沢にそっくりであった事である。手取川一帯は化石採掘で有名な手取層のイメージが強かったので意外であった。出だしは大岩の合間の滝を適当にこなす。25m大滝はホールド豊富で登り易いが、ブロック状に剥がれそうな岩も有るので支点を取る際には細心の注意を払おう。この大滝を登れば快適に登れる滝が連続する。谷が東に向きを変えると、ミニゴルジュが展開し遡行者を飽きさせる事はない。困難と危険性は無いので突っ張りとへつりを駆使して突破しよう。南から東へ流れが急激に変わるのは当該流域ではクマ谷だけであり不思議だ。断層による影響により流路が変わり、その何らかの影響でゴルジュが形成されたのであろうか。いつしか岩は赤みを帯びた花崗岩のようになり平凡になってくる。筆者らは標高1000m付近から北側のコルへ上り、トチヌマ谷へ下降した。このラインであれば藪漕ぎは一切無い。トチヌマ谷はガレが堆積して下降し易い谷で瞬く間に入渓点へ戻った。流程は非常に短いが、遡行内容は何でもありで纏まっている。これだけを目当てに行くのは少し勿体無い気がするが、転進先や余った時間に訪れると存外に楽しめる。

<装備>
ピトンとカムを少々。先述の通り、崩壊しそうな部分もあるので、カムのセットは注意が必要。

<快適登攀可能季節>
6月下旬~11月。標高が低いので長い時期まで楽しめそう

<温泉>
白峰温泉総湯:昔は安くて汚くて良い銭湯だった。綺麗になって値段も上がった。

<グルメ>
白山からの帰りにある酒屋(名前は忘れた)に日本酒入りソフトクリームがある。もちろんノンアルコール。おいしいのでいつも食べる。

<博物館など>
ハニベ岩窟院:日本唯一の洞窟美術館。知る人ぞ知る日本最高クラスの珍スポット。おどろおどろしい鬼気迫る作品に圧倒される。男女で行くと水子供養かと聞かれるのでそのつもりで突入しよう。

石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は圧巻である。皇太子ご夫妻もこの昆虫館を訪れている。雅子妃が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

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