2017年10月22日日曜日

千丈峰 田海川 倉谷中ギラ





千丈峰は頸城の山の中でも忘れられた存在といえる。標高が低く登山道がない上、明星山、海谷渓谷、鉾ヶ岳、黒姫山といった人気の山々の中に埋もれてしまい話題に登る事はまずない。しかし、その地味な立ち位置とは裏腹に北面の田海川には「ギラ」と呼ばれる広大なスラブを何枚も持つ隅に置けない山である。標高1000m以下の小さな山なので、相対的に環境リスクが小さく、尾根を含めて自由に動き回れるのも楽しい山だ。この山の資料としては、佐伯邦夫著「豊穣の山」が最も詳しい。

倉谷に入渓すると頸城らしい海性の堆積岩である事に気づく。一方、標高が低いのでエゾユズリハ、ヒメアオキといった常緑低木も見られるのは新鮮だ。川原を歩き、やがて現われる三段の滝を越えると岩は硬く赤みを帯びてチャートのような岩質となる。中ギラへは標高300mから山頂へと直接向う谷を詰める。中ギラは水量が乏しいため侵食は少ないが、スラブ状の滝や所々にある甌穴が魅力である。このスラブは流紋岩質のようで非常に硬い。白山周辺の流紋岩が剥離しやすいのとは対照的だ。あくまで推測であるが、これは朝日町の南保富士、黒菱山周辺でみられる太美山層群と同じ岩ではないだろうか。七重滝と硬さといい侵食の具合といいとても良く似ている。山頂下のスラブ帯を藪を絡めながら登り、少々尾根を登れば山頂へ到着する。山頂へ自然と登る事が出来る良いルートである。なお、中ギラの水はスラブ帯を介さず、尾根に消えているので、このスラブ帯を登るほうがスッキリするはずだ。

少し偵察した本流の大ギラには大滝とゴルジュがあり、とても面白そうであった。次は晴天の折、しっかりとした装備を準備して臨んでみたいものだ。





<アプローチ>
岡~倉谷間の林道は良く整備されていて快適に通行可能。青海側から登って、右側に車通行止めがある場所に駐車する。地形図では林道は繋がっていないが全線開通している。車止めから、歩道を歩き堰堤をのっこして入渓。稜線に出てからの下山路は南側の沢へ下降するか、東尾根を下降する。どちらも林道に出られるので簡単に戻る事ができる。入渓点まで富山市内から国道8号線経由で1.5時間くらい。

<装備>
カム少々(小さめ)、ピトン少々、スラブ用にクライミングシューズがあると快適かも。スラブ帯にクラックは発達していないので出番は無いかもしれない。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。スラブ帯の登攀は晴天時が快適だ。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

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