2018年1月10日水曜日

明神岳2263m峰 西壁大凹角






「人は見かけによらぬ」という金言がある。ご存知の通りこれは人の性格や能力は、外見だけではわからないという意である。取れたての泥付き馬鈴薯のような容姿をしている筆者にとって「中身で勝負すべし」というメタファーを含んだありがたい金言なのである。

明神岳2263m峰西壁にある大凹角ルートでは先の金言を深く味わう事ができる。一見、傾斜は非常に緩く全然問題なさそうに見えるが、登ってみればその刺激的な面白さの虜になるのである。出だしは支点が取り辛い凹状から登る。ベルグラがしっかり張っていればランナウトも怖くは無いだろう。一段上がると支点はぼちぼち取れるはずだ。60m弱で潅木まで届くだろう。そこからは、コーナークラック沿いにスラブを登る。このコーナーは細かいフッキングとワイド的なムーブを駆使する。動きが多彩でとても面白い。注意深く探れば支点は4mおき位でとれると思う。50m~60m、計3pで壁は終了し、抜けた先は少し広い雪田となっている。日当たりが良く気持ちいい場所である。

取り付くまでは楽勝と思っていたが、そんな事は無かった。クライミングでは取り付くと思ったより難しく充実する、と言う事はよくある。しかし、慧眼をもって観察すれば登攀内容は正確に推し量れるはずだ。どなたか泥付き馬鈴薯の旨みを推し量って頂けると嬉しいのであるが、そんな気配は一向に無い。やはり人間もクラックを発達させた取り付き易さこそ、人気の秘訣なのであろう。逆層スラブの怪我を負う可能性のある壁、スパイシーな馬鈴薯も時には愉しいよ、と細く小さい声で主張しておく。

<アプローチ>
沢渡か坂巻温泉に駐車。坂巻温泉の駐車料は一日600円。富山から大体2時間30分あれば着く。西壁S字ルンゼを登り、ゴルジュ手前左岸にある大きなルンゼが大凹角である。下降は右岸側の藪を使っての懸垂下降が無難だと思う。壁の上部は緩い雪田となっているので、晴天時はスノーシャワー(雪崩)に注意した方がよい。

<装備>
カム一式(#1-3が良く使える)、ピトン薄刃~ロストアローサイズ、トライカム。

<快適登攀可能季節>
12月~3月上旬くらい。西面は南面、東面と比べると遅くまで楽しめそう。ベルグラが発達したタイミングで登る事が出来れば難易度は下がると思う。

<博物館など>
福地温泉で日本最古の化石が発見されている。年代は古生代オルドビス期~デボン紀。即ち5億年~3億6000年前である。残念ながら冬期登攀後は観察できない。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

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