2018年1月4日木曜日

硫黄尾根











 槍ヶ岳の西鎌尾根に繋がる硫黄尾根は、長いながらも中弛みすること無い素晴らしい尾根である。硫黄岳前衛、赤岳前衛、赤岳主峰と3つの岩稜帯の登行には華やかな登攀力ではなく確実な歩行能力が必要。登り一本調子である槍穂西面の尾根と違い、岩峰ピークを幾つも連ねているのでワンランク上の歩行技術が要求される。そして岩峰中は弱点を縫うようなルートファインディングが重要である。もちろん、岩稜帯以外ではラッセルが続くので体力も必要だ。このように小手先の能力だけでは通用しないのがいい。筆者は転進として訪れたので全く下調べ無く取り付いたが、それも楽しめる要因となった。細かなライン取りを調べては面白くない。尾根ルートはラインを判断するのが醍醐味である。

 さて、気がかりなのは何故槍ヶ岳北面はギャップを連ねた面白い尾根が形成されたかという点である。先に述べたように槍穂西面はぐっと一気に標高を上げる短い尾根が多い。一方、北面は硫黄尾根に北鎌尾根と面白ルートが並んでいる。私見ではあるが、これは方位と造山運動が働いた向き、そして岩の性質に起因するのではないかと思う。北面、東面には雪が残りやすいので氷河が発達する。北面の千丈沢と天上沢には大きな氷河があった事だろう。これは現在の地形から読み解く事ができる。氷河によって削りとられて谷が深くなることで、長い尾根となったと考えられる。高瀬川は大規模な断層線谷である。具体的な作用を推し図れるほど知識は無いが、西面と北面では隆起速度に違いがあったのではないか。そして風化しやすい花崗岩中の破砕帯部分が崩壊する事でギャップが生まれたと推察される。特に赤岳周辺は火山活動による硫化物が酸化し、より岩が脆弱となっているのであろう。

 一つの山でも登り方を変えれば、別のドラマを想起させられる。アマチュアにはその想像が正解かどうかはどうでも良いのだ。悠久の自然の営みに思いを馳せる、ただその時間が愉しい。北アルプスは色々な想像を掻き立てられる素晴らしい山域なのである。

<アプローチ>
 葛温泉に駐車し高瀬ダムから湯俣方面へ。駐車はお堂のある辺りであれば、除雪作業の影響は少ないと考えられる。湯俣までは良く整備された登山道であるが、湖畔の林道歩きは小ルンゼを跨ぐので実は危ない気がする。
 湯俣からは登山道を歩くが厳冬期はラッセルを覚悟した方がよい。尾根への取り付きはつり橋を渡り、北鎌尾根の登山者が利用している道を利用して上流へトラバースし、岩場帯を迂回した適当な所から尾根に乗りあがる。幕営ポイントは随所にあるが、赤岳前衛峰の後半からはあまり良い場所が無い。下降は北鎌尾根が困難かつ合理的である。一方、新穂高へ降りる方は易しい。年末年始など積雪量が少ないときや、雪が安定しているときは飛騨沢を降りると早い。しかしながら、登山道の槍平~滝谷出合いまでは雪崩のリスクが高く降雪中の下降は注意が必要である。場合によっては中崎尾根で降りる方が早くて安全だと思う。

<装備>
ストレートシャフトのアックスがお勧め。アックスは二本有ったら登り易いが一本でも問題ない。軽量化で臨むのであれば、山スキー用のアルミピッケルでも十分だと思う。尾根上は残置だらけだが、念のためピトン数枚とスリング少々。ロープは50mで十分。ぶち落ちるような事はないので細径ロープでいい気がする。

北鎌尾根の千丈沢側には岩壁が広がっている。写真を幾枚か掲載するので登攀の際には参考として頂けると幸いである。





<快適登攀可能季節>
12月~4月。北アルプスの中では天気が良い地域なので、厳冬期も狙いやすいはず。富山の山が天気が悪いときの転進先としても利用できる。下部の藪が旺盛なので、雪が少ないと面白くなさそう。尾根にはシャクナゲが繁茂していた。新穂周辺では見慣れないので不思議であった。5月の連休あたりだと氷雪が少なくなり、快適さと面白さが低減してしまうかも。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

<温泉>
上原の湯:400円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。600円。

<グルメ>
昭和軒:大町駅近くにあるカツ丼の店。大盛りはプラス100円で凄い量が食べられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿