2019年6月15日土曜日

庄川 小瀬谷左俣









五箇山~白川郷の沢で快適で面白いところはだれでも直ぐに解る。堰堤が作られていないところだ。筆者はこの地域の岩を流紋岩、花崗岩、礫岩主体の堆積岩の3つに大別している。している、というのは学術・文献調査をしたわけではなく沢登りがてらに観察しているからであり、根拠に乏しい経験論である事をご了承願いたい。最も沢登りが楽しめるのが流紋岩が卓越する地域だ。美ヶ谷、大芦倉谷、境川流域などハズレがない。厳密には美ヶ谷と境川流域では岩質が異なりそうだが似たグループとしている。次いで花崗岩地域でこちらは当たり外れがある。小芦倉谷がそうだが、土砂の流出が多くなるので釿谷など水量が無い沢は全く楽しめない。庄川を御母衣まで南下すると、花崗岩系で面白い沢も増えてくる。そして、最も沢登りに適さないのが堆積岩地域である。この地域の堆積岩は脆いのであろう、その場所には必ず堰堤が幾つも建設されている。それゆえ、遡行対象にされることすら憚られる。先の堰堤があるなしで遡行の快適さが推し量られるという所以もここにあると推察する。土砂の流出の少ない谷は土石流の発生が少なく、堰堤を建設する理由が無いのであろう。そのような谷では沢登りが面白いのである。

長い枕になったが、本題の小瀬谷である。小瀬谷で興味深いのは右俣には堰堤が多いが左俣には出合の1基しか無い点である。先の堰堤と岩質の関係から、この谷左右で堆積岩と流紋岩が分岐している可能性があるのでは無いかと疑っていたのである。堰堤を越えると谷狭くなり良い雰囲気になる。流紋岩のつるりとしたゴルジュだが、雪崩による土砂で埋まりがちで突破は容易である。特に困難も無く猿ヶ山山頂直下へ抜ける沢と北側コルへ抜ける谷の分岐へ出る。山頂直下へ抜ける谷は水量は少ないものの急峻で面白い。この谷の核心はこの出合いから標高1000mまでだ。最も大きな滝は10m前後の滝で2つある。この二つの滝は左右で岩の硬さが違うのが面白い。以降は難しい箇所も藪漕ぎも少なく登山道へ抜ける。右俣を下降するにはいまひとつの天候だったので、登山道で下山した。岩の調査はまたの機会としよう。

遡行したのは谷筋には雪渓が残る芒種の小雨の日であった。この谷の適期とは言いがたい時期と天気である。楽しめるのか不安だったので一人で訪れたのだが杞憂であった。雪解けの谷に咲くニリンソウとサンカヨウの群落は麗しい。その近くにはウドが芽を出し、稜線ではコシアブラもとれた。霧に包まれたブナの森は森閑として幽玄な空間だった。熊にも猪にも羚羊にも会った。最高の休日だ。歩けば好き日は真理なり。いつでも頭炭酸ポップにタップを鳴らして山へ向おう。

<アプローチ>
富山市内から国道156号線側から行こうとすると、九十九折の道で嫌になる。国道304号線側のほうが行きやすいように思う。世界遺産の菅沼集落へ入る道を利用して橋を渡る。林道の入り口にはゲートがあるが鍵が掛かっていない。小瀬谷右俣付近の林道急カーブ地点に駐車して入渓する。下山は猿ヶ山~三方山へ通じる登山道を利用するが、近年は整備されていないのか自然に帰りつつあった。踏み跡はしっかりあるので気をつければ外す事はないだろうが慎重に歩きたい。なお、大獅子山へ向うブナオ峠も同じ状況のようだ。秋に向けて整備されるのかもしれない。地形図で1088mの印がある尾根に合流すると地図には記載のない送電線巡視路が利用できる。これは仕事道なので非常によく整備されている。巡視路終点から、これまた地図にない林道を歩くと池の平へと続く林道に合流する。あとは車へ戻るだけ。

<装備>
10mくらいの滝2つを登るのであればロープとピトン、カムなど。因みに一つはやや脆そう登れそうだが、もう一つは辛そうだった。

<快適登攀可能季節>
6月~11月新緑と紅葉の時期が素晴らしい。早い時期だと残雪が残っているはず。ゴルジュ内に残っていた場合、処理に難儀するだろう。悪天の中で雪渓のある谷を登るのは大変危険なので注意。

<博物館など>
縄ヶ池:五月連休あたりに水芭蕉が満開になる。駐車場から砺波平野の散居村を一望できるのも魅力。5月ならば田植えの時期、水田の水面に反射する夕日を眺めたい。10月ならば実りの時期、赤く染まった揺れる稲穂を堪能したい。

福光美術館:福光は棟方志功が6年ほど疎開していた土地である。そのため作品が多くの作品が残されている。企画展も渋く見逃せない。別館の愛染苑も訪れたい場所である。厠にまで絵を描く棟方志功の自由な人柄が感じられる家だ。

南砺バットミュージアム:日本プロ野球の往年の名選手のバットが触れる。メジャーリーガーのバットもある。タイカッブとベーブルースが使用したバットを触って大興奮!親父さんも気さくで良い時間を過せる。

井波彫刻総合会館:井波彫刻は県外にそれほど認知されていないように思う。豪快かつ繊細な技術に感動する。瑞泉寺も行っておこう。

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