2020年6月8日月曜日

板尾大谷 セイタコロシ谷








烏帽子山北西面へ突き上げるセイタコロシ谷は国土地理院の地図に名称が記載されたいない。セイタコロシ谷と書いたところで一体幾人がその場所を特定できるのだろう。想像ではあるが、これはセイタ殺しであり、セイタ氏がここで亡くなったということを示しているのだと思う。そうであるならば、ここを訪れるならば誰しもセイタ氏を思い浮かべる事になる最高の供養だよね。きっとセイタ氏は猛烈に愛されていたに違いない。親分肌のイケメン猟師?それとも一匹狼カリスマ樵?はたまた子煩悩な優男?もちろんセイタの正解が無いのは分かっている。でもセイタを殺したのがどんな谷かは訪れれば解ることだ。

出合いから少しゴルジュとなるが巻きは難しくない。ツルツルで弱点の無い岩質なので突破は叶わない。一基堰堤を越えると3段40mの大滝が現れる。これは登ることができる。その後は平凡な渓相がしばらく続く。不思議なことに地形図に示されている堰堤マーク地点には何もなかった。V字型の雪国ゴルジュ状を呈してくると緊張感が高まるが、幸いにして快適に登ることができる。ゴルジュのドン突きにはセイタ殺しの第一級容疑者が堂々を立ち塞がる。教科書カラー見開きドーンのヤバいスラブ。支点が取れないので強傾斜部分は左から巻き、多少傾斜の緩くなったスラブを少し登るとガレ沢になり、すぐに稜線へと出られる。

セイタ氏はこの谷を上部から下降中に滑落したものと推察する。下部から登ればそれほどの危険は無い。最上部のスラブも回避できるルンゼがあるし、山を熟知した昔の男が亡くなることは無いはずだ。この谷は板尾大谷のこのほかの支流にはないスラブ発達なので、「ここも行けるだろう」という初見下降中の思い込みによる事故だったのであろう。現在氏のご遺族は何代目かも想像つかないが今も健在だろうか。この谷を楽しませていただいたことに心より感謝申し上げたい。

セイタ氏と筆者の関係もこれで一区切り。今回はセイタ氏との脳内交流がメインだったが、もちろん沢登りの対象としても十分面白いのでおすすめである。あ、スピリチュアルな体験とかそうゆうのは全然ないです。一応。

<アプローチ>
小板尾谷との合流点にあるゲートの前に駐車。そこから川沿いの林道を歩く。林道は早くから荒れてくるので沢へ降りる事になるだろう。口三方山から烏帽子山までは登山道が拓かれているのでそれを利用して荒谷を下降すると比較的容易に下降可能。荒谷上部は軽くスラブを呈するが下部は美しい森の癒し渓。

<装備>
磨かれているが、コケも付着しやすいためフェルトがいいと思う。岩のギアはピトン、カムを少々

<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが酷い地域なので注意。6月は残雪が残る。

<温泉>
セイモアスキー場の横に河内千丈温泉がある。静かで綺麗な良い風呂。

<博物館など>
ハニベ岩窟院:日本唯一の洞窟美術館。知る人ぞ知る日本最高クラスの珍スポット。おどろおどろしい鬼気迫る作品に圧倒される。男女で行くと水子供養かと聞かれるのでそのつもりで突入しよう。

石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は凄い。皇太子ご夫妻(令和天皇)もこの昆虫館を訪れている。雅子妃(皇后)が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

<グルメ>
白山からの帰りにある酒屋(名前は忘れた)に日本酒入りソフトクリームがある。もちろんノンアルコール。おいしいのでいつも食べる。


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