2020年9月9日水曜日

瀬波川チョーゲージ谷(右俣)~左俣

















国土地理院発行の地形図において岩場マークを付ける基準は何かあるのだろうか。標高差がある場合は岩場マークも厚みがある表現となっているが、今一つ現実と整合性が取れていない場合も多々ある。大笠山をめぐる沢は毛虫多発地帯である。そのなかでも瀬波川の毛虫マークの距離はひときわ目を引く。果たしてこのゴルジュマークの実体はどうなのだろうか、そして周辺のゴルジュとの岩質の差はあるのか検証する必要がある。

732mの堰堤跡までは広い川原をひたすら歩く。堰堤跡は合計3つあるのが良い目印となるだろう。ゴルジュマークに入っても暫くはこれまでと同じ川原状が続く。側壁は草付きのV字状を呈してくるが地図が大げさな表現をしている箇所だ。二俣少し手前から本格的なゴルジュ帯となるが、平水であれば胸までの渡渉と簡単なクライミングで突破できる。ただし、水量が多いと突破は非常に難しくなるだろう。この下部ゴルジュ帯の岩は事前予習とちょっと異なっていて飛騨帯の石灰珪質片麻岩と流紋岩質が混じってた。チョーゲージ谷出合いから滝マークが付けられている因果の滝までは急峻なゴーロで問題ない。因果の滝も巻くのであれば問題となるとは無いはず。滝左壁のワイドクラックを登ろうとすると手ごわいだろう。因果の滝上には飛騨帯石灰質岩が極度に浸食されたゴルジュ造形が素晴らしい。これより上流は大畠谷と似た流紋岩質の岩となる。この岩質の変化に伴って浸食形状も急激に変化し、雪崩に磨かれた草付きスラブゴルジュとなる。ここは白山北部らしい美しい渓相で明るく気分は頗るいい。いずれの滝も適度なクライミングと巻きで処理することができる。筆者らは大笠山へは向かわずに稜線へのショートカット支沢から左俣へ下降した。左俣は下降の困難な場面はなく、殆ど快適なクライムダウンで処理可能な谷であった。上部から下部まで懸垂下降は3回ほどだっただろうか。谷の構成は予想通りチョーゲージ谷と大差なかった。

遡行についていえば、局所的な難しさは少なく取り付きやすい部類である。美しい渓相を堪能できる良渓だ。ただし、一泊二日で周遊するとなるとロングルートなので沢慣れしていなければ時間的にタイトになるかもしれない。

ところで、地質調査総合センター発行の5万分の1地質図において白山周辺がぽっかり抜けているのだがこれはどうゆう事なのだろう。付属説明書は無料でダウンロード出来るようになっており一気に山の雰囲気が把握でき、とても利用価値が高い。これを登山の友としている筆者としてはちと残念である。産総研へ予算配分して作成していただきたいと願うところである。

<アプローチ>
瀬波川取水堰堤手前に駐車して入渓。チョーゲージ谷内に丁度いい幕場は少ない。最も快適な幕場は因果の滝を越えた1150m地点だが、ここからだと一泊での周遊はタイトとなる。筆者らは1410m付近の右岸、川床から高さ1mほど離れた草むらの平坦地で泊まった。中々快適だがこれを探し当てるのは難しいかもしれない。大笠山へ向かう本谷の1510m付近にもそこそこの幕場となる場所がある。左俣の下降点は1591mの南側コルとした。懸念されたスラブには当たらず、さしたる困難もなく左俣を下降した。初日に左俣へ下降し始めると翌日余裕ができる。1591m北側コルから下降し、1400mの広い場所で泊まるといいかもしれない。

<装備>
ギアの登場機会はほとんどないと思う。スリングのみで十分。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。オロロが酷い地域なので注意。

<温泉>
白山里:瀬波川から最寄りの温泉。こじんまりした綺麗な温泉で400円とリーズナブル。地元の野菜が大量かつ安価で売っていていい。

比咩の湯:道の駅瀬女の向かいに2018年新しくできていた温泉。入っていないけどとてもきれいで良さそう。500円らしい。

<博物館など>
ハニベ岩窟院:日本唯一の洞窟美術館。知る人ぞ知る日本最高クラスの珍スポット。おどろおどろしい鬼気迫る作品に圧倒される。男女で行くと水子供養かと聞かれるのでそのつもりで突入しよう。

石川県立ふれあい昆虫館:標本の数はまずまず。なにより生きた昆虫を間近に観察できる。蝶の放し飼いされた温室は凄い。皇太子ご夫妻もこの昆虫館を訪れている。雅子妃が温室に入った際、雅子妃の頭に蝶がとまったシーンは何度もテレビ放送された。

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