2020年9月23日水曜日

開津谷 仙人岩

 







白山北部には数多くのスラブ壁が存在するが、登られることは多くは無い。それもそのはず、傾斜は緩いし支点は取れないうえに脆い。志の篤さがナンガパルバットクラスの方でないとそれのみを目的に訪れる事はまずないであろう。とはいっても、折角の自然の造形物を遊ばないのは勿体ない。例えば継続沢登りの一環として計画に組み入れるというのはどうだろうか。沢登りと簡単な岩登りを組み合わせることで山行全体が締って、いい登山となるのは間違いない。

さて、仙人岩である。仙人壁とも称されるこの壁は、良く知られているものの登っている人は多くない。この上部のオンボロっぽさを醸し出す性状からするとそれも頷ける。ラインは一目瞭然で最も硬い面積が大きそうなスラブ状凹角である。50mで4Pくらいまでは支点は取りづらいものの許容範囲の脆さで快適なスラブ登りを味わえる。ビレイポイントも丹念に探せばがっちりとしたものが得られるだろう。問題は5P目の緑色ゾーンから。ここはどの岩も崩壊しており、通常のクライミングのように岩を引っ張ることは不可である。よって、四肢のすべてを駆使しながら岩を押えるように登る。当然のことながら支点は取れないので登りは慎重を期する。登りでもロープを手繰っても落石が発生するので、フォールラインを外したビレイポイントにしなければビレイヤーが大変なことになる。トップアウトする6Pも傾斜の強い草付きから岩へと移るのが悪い。ひーひー言いながら辿り着いた頂上では大畠谷の絶景が堪能できる。

終盤は強烈だったが、無事登ってしまえば楽しかった思いしか残らないのはいつものこと。筆者らは加須良川連瀑沢~ボージョ谷下降~フカバラ谷~仙人岩と継続したが十分な充実感を得た。これをさらに延長させ、フカバラ谷後に大畠谷大谷を下降して黒池スラブを登り大畠谷右俣から開津谷へ入れば境川満喫ツアーとなるはず。沢屋の皆さん、秋の連休を利用して訪れてみてはいかがでしょうか。

<アプローチ>
開津谷を遡行するか、下降して取り付く。トップアウト後は頂稜を辿り、大畠谷と開津谷を分かつコルから下降するといい。開津谷への入渓は林道の荒廃と堰堤が多くとても面倒。遡行して取り付くのはちょっと辛いものがある。やはり、そのほかの沢から継続してこの壁を登り開津谷を下降するのがよい。

<装備>
カム#1まで、ピトン各種。フェルト底でも登れるが、ゴム底(クライミングシューズ含む)の方が快適。60mロープがあれば支点構築点の可能性は広がる。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。白山はなんといっても秋がいい。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

<博物館>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。そして、囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していたそうだ。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。

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