2022年1月11日火曜日

赤沢山 正面壁チムニールート

 








 赤沢山の岩場において針峰と正面壁の存在感は圧倒的である。アプローチで最初にこの岩壁群を目にすると「凄いところがあるもんだなぁ」としみじみ思うのである。

 正面壁は標高は2100m以上とそこそこ高いものの、南面で頂稜に樹林帯がなく草付きの発達が乏しいことからコンディションは概ねドライな場合が多いようだ。また、雪崩リスクの高い赤沢の性質を鑑みると氷雪を纏った正面壁を登るタイミングは思った以上に少ない。常日頃より徳行功徳の五重塔建築に勤しむ筆者らは幸運にも氷雪を纏った正面壁を楽しむことができた。

 出だしのコーナー状のスラブからいきなり面白い。コーナーの凍った草付きと岩壁側の雪を纏ったスラブの小さなスタンスを拾いながらジリジリ登る。プロテクションはイボイボとペナペナの灌木だが何とかなる。途中右トラバースするのだが、スラブに絶妙な細いバンドが走っており感動する。2ピッチ目はどこでも登れそうだし、どこも登れなさそうにも見える浅い凹状スラブを辿る。全く支点が取れないように見えるが雪を払いのけ丹念に探せばピトン、トライカム、カム、全てでしっかりとれる。岩は脆いが傾斜は緩く順層ホールドなので落ち着けば非常に楽しめる。3ピッチ目は傾斜が強いチムニーから再び脆い岩のスラブ。岩が脆く全ピッチ中で最も支点が取りにくいところだ。支点が脆弱なのでワンムーブ毎に多少の覚悟がいるが、登り終わって下を見た時のすっきりとした感じは気持ちがいい。最後はホールドが豊富で容易なチムニーを登ると山頂へと至るリッジに飛び出す。

 順層で登り易いものの支点が少し取りずらい明神岳をイメージすればよいだろうか。クライミングの内容は非常に面白いのだが、支点が脆弱なので超絶お勧めできないのがちと悲しい。ビレイポイントも35点~60点くらいの品質でしか得られなかったので足並みの揃ったパーティー向けかと思う。

<アプローチ>
沢渡か坂巻温泉に駐車して釜トンネルから延々と槍沢ロッジ付近まで歩く。槍沢ロッジ手前に小さな沢が流れており、年末年始であれば水はここからとれる。周辺にテントを張ってベース方式で登るのが無難である。下降は赤沢山山頂まで登ったのち、南西リッジの斜面を下降して左俣のコルに出る。南西リッジの斜面は非常に分かり難いので、視界が無い場合の下降は難しいかもしれない。左俣のコルからは懸垂1回で小滝を過ぎたあたりまで下降できる。赤沢は雪崩のリスクはそれなりに高いように思う。南面にある沢なので、降雪直後の好天時には注意したい。

<装備>
カム一式、ピトン各種、イボイボ3~4本、トライカム

<快適登攀可能季節>
12月~2月。氷雪が付着したタイミングでなければ夏の状態と変わらないことになる。そうすると草付きを使用できないので難しくなりそう。

<博物館など>
福地温泉で日本最古の化石が発見されている。年代は古生代オルドビス期~デボン紀。即ち5億年~3億6000年前である。残念ながら冬期登攀後は観察できない。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

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