2022年10月16日日曜日

海川 前千丈沢

 












「秋だ!沢だ!海谷だ!」

ジオパーク観光に力を入れている糸魚川市だが、まだ秋の沢登りの魅力を発信していないようなので、富山県民ではあるがキャッチコピーをつけ、来る秋の海谷祭りを盛り上げたいと思う。

千丈ヶ岳の壁は異形の岩壁で山峡パークに着いたら度肝を抜く。千丈ヶ岳の壁を流れる大滝を登るのは大変な労力を要するだろう。大滝登攀ではなく沢登りの対象として千丈ヶ岳を眺めた時に取り付きやすい対象は前千丈沢だろう。やはり初めての山は取り付きやすいところからという事で前千丈沢へ。

出合から少しで30mクラスの連瀑。勝負にならない形状なので左岸から巻きに入る。ここはそこまで怖くない。次の滝は釜を持った小滝だが支点が取れないスラブが怖い。ぼこぼこ礫が埋まった岩は不動川のそれと同じで同じ角礫凝灰岩台地であることを感じる。幾つか小滝をこなして高差30mくらいの美しい滝におー!これは右岸から快適に登れる。その上はスラブ滝が岩を撫愛する嬉しい景色。ただ、これも一瞬の美しさで禍々しい渓相に戻る。嫌らしい小滝や悪い巻きを繰り返しつつ標高700m付近でゴルジュ状に出合う。この上部にどうにもならない滝が現れて少し戻り右岸から大巻に入るが、巻きに入るところがクライミング感MAXで面白い。以後、うまく獣道を繋げば2ピッチで懸垂なしで沢に戻れる。またまた小滝の悪い巻きを交えて二俣に到着する。右俣を進んで中間稜を下降するつもりだったが、右俣は水が涸れた悪い滝となっていて、すぐに谷は拓けて岩壁と草付きに吸い込まれそう。何だかわざわざ進む気にならない。左俣を910m進んで悪そうな滝を確認してから二俣の少し下から中間稜に乗り下山。中間稜の下降も全く侮れない緊張感が続く。南西壁と不動川に囲まれた地理的にも実に手ごわい山である。

遡行内容を読み返すと、悪いと嫌らしいばかり書いている。しかし読者の皆さん、忘れていませんか「悪い」「悪相」「悪絶」は沢登り業界では誉め言葉なのです。この遡行後の充実感はそうそうない。あらゆる登山技術を駆使して自分の力だけで楽しめる情報の少ない山の贅沢な事よ。しかも日帰りで遊べるという貴重さ。今すぐにでも奥千丈へ行きたいくらいである。千丈ヶ岳の溶岩台地の最深地に入るために次はお泊りで1203mピークを踏んでみよう。

<アプローチ>
海川第二発電所の少し手前、右側が広くなっているところに駐車する。発電所から上流側の方の傾斜が緩い所を狙って下降する。第三発電所から整備された歩道を歩いて取り付くのも良いと思う。取水堰堤からすぐで前千丈沢である。下降だが筆者らは前千丈沢と中千丈沢の中間稜を下降した。上部は藪もさほど気にならず想像よりも早く歩けた。中間から下部は地形が複雑でリッジを判別してルンゼを跨いだりするので要領が問われる。懸垂下降も4回ほど要したのでガスや夜間など視界が効かない状況での下降は極めて困難となる。下降時間は稜線から3時間は確保したい。沢中で快適な幕営箇所は得にくいが、巻きの途中の斜面に幾つか土砂堆積による平坦地があった。尾根や斜面はブナ林が多いので意外といろんなところで泊まれるかも。

<装備>
カム一式、ピトン各種。足回りはフェルト。クライミングシューズは要らない。

<温泉>
糸魚川ひすい温泉:塩泉かつナトリウム泉という温まりながら美肌も謳える贅沢な泉質の日帰り温泉。ちょっと施設は古めだが22:00くらいまで営業しているので遅くなっても入浴可能。ただ、入浴料が時間によって変動するという前衛的なシステムで油断すると1000円となるので油断ならない。

このほか帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、ナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
8月~10月。あの地形であれば8月半ばで残雪は消えそう。日帰りでオンサイト完登するには時間が欲しいので暑さは我慢して日の長い時期がいいかも。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

塩の道資料館:旧家に塩歩荷に用いられた資材や生活用具が展示されている。塩の道が2通りあり、春夏秋冬人が通っていたことに驚くばかり(牛さんの活躍も見逃せない)。本願寺に奉納する欅を搬出する巨大橇は圧巻。冬は休館するので無雪期限定。

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