2023年9月4日月曜日

海川 奥千丈沢

 










海谷の中で最も謎を秘めているのは千丈ヶ岳周辺なのではないか。南西壁の再登者は極端に少なそうだし、沢を登ったという話も聞かない。登山道が無く下降路として使える簡単な沢も無ければ登山者は遠ざかるのかもしれない。

奥千丈沢は登山大系にちょっとだけ記載がある。「詳細不明、岩登りで鍛えたパーティーのみが日帰りで完登できる沢であろう」とある。全然岩登りで鍛えていないのでお泊りで謎解きお散歩とする。出合いは前千丈沢と同じくらいショボい。少し登ると良く解らない地形の2条滝が現れる。右のチムニーを登ってもいいし、右から回り込んでもいい。それを登ると流れが不可思議だった理由が分かる。引き続き100mナメからの40m滝である。これは登れないので巻き。そこから登山大系通り50m級が2つ現れる。途中までは登れるけど抜け口が・・・という滝なので巻く。900m以降も何じゃこりゃハング50m滝、ぬりかべ15mスラブ滝など異形の滝が続く。ぬりかべスラブ滝を登ると微妙に悪い小滝が少し続く。てっきり、上部は水が涸れていると思いきや、稜線直下まで水が流れているではないか。周囲は湿地のようになっていて水芭蕉が群生している。千丈ヶ岳の平坦地は湿地帯だったのだ。

海川でいうならば駒ノ川上部も少し湿地めいていたが、千丈ヶ岳の方がスケールが大きい。下降した旗振沢上部もこれまで訪れた沢の中で最も水芭蕉率が高かった。一方、不動川の北側に当たるトウスル沢はもっと平坦地が広いのに湿地ではなかった。これはいったいどういう事だろう。現在の海谷山塊をなす溶岩の種類の違い、200mの標高差。それっぽい理由は考え付くがどうすれば解することができるのだろうか。滝がどうのゴルジュがこうのという事を知っても山は解らないまま。探索の旅は続く。

<アプローチ>
海川第三発電所から道を歩いて本流へ入渓してもいいし、第二発電所から斜面を下降してもいい。下降予定路に合わせて入山場所を選択するといい。奥千丈沢は海川標高400mの右岸から出合う谷である。水量は少ないが、渇水時にも水はあるので見逃すことはないだろう。筆者らは一泊二日の行程で不動川六ノ沢(旗振沢)を下降し、不動川本流下降を試みた。旗振沢はミニ不動川と言えるゴルジュの谷。


旗振沢の標高900m~820mの区間で50m+20mくらいの大滝が現れる。一泊二日でこれを巻き降りたのち、不動川本流を下降するのは不可と判断し、粟倉集落へと続く尾根を下降した。大滝の落ち口には奇跡的に左岸へと巻き上がれる草付きが繋がっていたのが幸いであった。尾根へ上がったのち、お隣の一本スラブ支沢を跨ぎ、1100mの小ピークから藪尾根を下降した。意外に組し易い藪でイージーモード。アブキの川原からは踏みあとも現れ問題ない。標高500m付近粟倉集落へ降りる入り口くらいから踏みあとが無くなる。そんなに藪が濃くないのでブイブイ進めば大丈夫。旗振沢を下降する場合には60mロープ×2本あれば大滝一発懸垂できるので良いと思う。旗振沢を遡行するにはボルトが必須で相当な困難が予想される。大滝だけではなくゴルジュ内も巻けない滝が多い。なお、旗振沢本流の標高1030m付近は最高の幕営地である。

<装備>
カム少々。念のためピトン。足回りはフェルト。奥千丈沢を登るだけならばロープは50m×1本で十分。

<温泉>
糸魚川市 健康づくりセンターはぴねす:ひすい温泉は高すぎる!という方には公共施設の浴場をご利用ください。お風呂のみで500円くらい。

このほか帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、ナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
8月~10月。あの地形であれば8月半ばで残雪は消えそう。日帰りでオンサイト完登するには時間が欲しいので暑さは我慢して日の長い時期がいいかも。

<博物館>
フォッサマグナミュージアム:ジオパークの町糸魚川の基幹博物館。何とか時間を捻出し必ず訪れたい

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

塩の道資料館:旧家に塩歩荷に用いられた資材や生活用具が展示されている。塩の道が2通りあり、春夏秋冬人が通っていたことに驚くばかり(牛さんの活躍も見逃せない)。本願寺に奉納する欅を搬出する巨大橇は圧巻。冬は休館するので無雪期限定。

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