2023年9月11日月曜日

黒部川 嘉々堂谷















かっこいい。曖昧な形容詞である。顔が整っている、運動神経が良い、頭がいい、おしゃれ、仕事ができる等々これに当てはまる人となりは多い。便利な言葉なのだが、人によりずれが生じる恐れがある文言だから注意が必要である。

では、今の私にとってかっこいいとは何か。それは高巻きを最短かつ最少の労力でクールに素早くこなすことである。登れる滝は登った方が楽しいし充実するので、登るという行為はファーストチョイスなのだ。そこを全体の流れ、個々人の能力、手持ちの装備を考慮し高巻きという選択をする。即ち高巻きは妥協の産物である。しかし、妥協を最善に収束させるのは案外難しい。第二の選択となると漫然、怠慢になりがちで軽んじられる。そこを引き締めて涼しい顔で実行するのは洒脱で大人びている。何事も真正面から臨むだけがベストではない。それを理解する高巻き上手はナイスミドルの必要条件なのである。

ミドルの入り口立つこの頃、そろそろ嘉々堂谷でも行こうか。入渓すると側壁の高さにプレッシャーが高まる。幾つかの小滝を登り、20m滝を巻き、やってきました暗い30m滝。高い両岸に端正な美瀑だが弱点は無い。巻きにかかろうにも一見して易しい箇所は無いことが分かる。2本の尾根筋が弱点だが、下流側と上流側どちらが良いか判断が難しい。上流側から取り付き、右へトラバースしつつ尾根手前でピッチを切る。想像よりずっと難しいクライミングで空荷じゃないと登れない。慎重に左へ戻り予定の尾根に取り付いたが、灌木へと続くハング2mがプアプロ&脆い岩で断念。斜め懸垂とトラバースにより下流側の尾根に移る。こちらも悪いが支点はカムで取れるので安全に登れた。ラインを初見で見通せず、ナイスミドルへの道のりは遠いことを痛感する。50mロープを伸ばすと容易になり、リッジをコンテで進んで20m+25mの懸垂で川床へ降りる。以後、けっこう難しめの小滝が幾つか出てくる。特に8m斜瀑は一番厄介だ。巻きは標高820mくらい最初の2段連瀑がやや悪い他は難しくない。あとは下部廊下から緩急効き過ぎの川原をブウァーと歩いて登山道へ合流する。

果たして30m大滝の下流側の尾根下部は簡単だったのだろうか。もしかしたら、今回の判断が最善だったのか。山登りの答えはいつも靄の中。もやもやした気分で下山。ミドルの足音は左膝の痛みとして明確に聞こえ始めている。

<アプローチ>
宇奈月ダムからしかるべきところを歩き、吊り橋を渡り嘉々堂谷出合いまで歩く。吊り橋を渡ってから他にも入渓する方法はあるが普通は解らないし、やらない方がいい。幕営適地は意外に多い。30m滝を越えてから標高700mくらいから再びゴルジュ状になりたじろぐが、突入しても幕営可能箇所は適時出てくるのでOKだ。良く解らなかったので筆者らは640mくらいのところに泊まったが、快適なところだった。下山は登山道を利用するか、片貝川へ下降する。いずれにせよ車2台無いと面倒。残念ながらとちの湯からの尾沼登山道は廃道となっているようだ。

<装備>
カム0.3~1.0、ピトン少々。足回りはラバーでもフェルトでもいいかも。

<快適登攀可能季節>
8月~10月 水量、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし

<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。

<博物館など>
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。

<グルメ>
よか楼:昨今話題の町中華。コスパという卑しい概念を持ち出さなくても味で選べる良店。ジビエ料理も時折そろえる。

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