2023年9月19日火曜日

黒部川 サンナビキ谷右俣
















富山県は超ざっくり申し上げれば花崗岩からなる土地である。その主たる役者は飛騨帯由来の花崗岩、ジュラ紀に形成された毛勝花崗岩、滝谷よりも新しい世界最新花崗岩の可能性もある黒部川花崗岩が挙げられる。このほかにも十字峡閃緑岩、猫又花崗岩、黒部別山花崗岩等々、花崗岩類は実に多い。皆さん気が付いただろうか。県東部の谷はこれらの花崗岩類が隣り合って混在していることに。境界には発見という魔物が住む。出かけよう自らの眼で楽しむ好奇心の旅へ。

サンナビキ谷に入渓してまず驚くのは側壁の高さと巨岩の数々である。岩盤の岩を観察すると結晶片岩や片麻岩で飛騨帯の特性を持った岩が多い。谷の入り口から花崗岩が優位である嘉々堂谷とは大きく異なるのが興味深い。磨かれた岩はラバーソールが有利である。下部廊下で最大のポイントは一見ショボく見える大岩が三条の流れをなす小滝といえよう。右側の水流しか弱点が無いので下部をフリー、上部をハングしたクラックを人工登攀で登る。水流を受けながら登るので水量次第で突破の成否が分かれるはず。その後の3段大滝の巻きは楽勝で問題ない。その後は取水堰堤まで大岩をエンヤコラするが微妙にクライミングなので疲れる。取水堰堤を過ぎると俄かに岩質が変わり始める。772mを過ぎ嘉々堂谷と似た花崗岩が現れ始めると谷の浸食形状が鋭利になりリッジとルンゼが幾重にも折り重なった側壁となる。この花崗岩は片貝の花崗岩に似ているので毛勝花崗岩に近いのだろうか。ここから上部ゴルジュの始まりだ。筆者らは残雪が全くない好コンディションで良い感じに巻いたり、登ったりすることができたので772mから1000mまで大体4時間半で抜けた。たまたま順調にいった訳だが、バナナを剥いたら中がサンマといった予想外の展開になると平気でプラス数時間となり得るので判断は的確かつ迅速にしたい。1000m付近を右に入り駒ケ岳を目指す。ここから入ってしばらくする連瀑の滝が意外に悪いので気を抜かずに臨みたい。1200mからは快速モード渓相である。飛騨帯の石灰珪質片麻岩が多くなり始めると残り標高500m以上を残して水が伏流する。益々オラオラと進むとあっという間に駒ケ岳である。

沢登り的にはサンナビキ谷といえば左俣だろうが、右俣も観察対象としては大変面白い。左俣はまた次回。

<アプローチ>
詰めあがる方向によって下山は片貝か宇奈月となる。筆者らは車二台で一台を宇奈月の僧ヶ岳登山口へデポして宇奈月へ降りる事とした。黒部峡谷鉄道の鐘釣駅で下車して美山荘の近くから黒部川本流へと下降する。出平ダムは土砂で埋まっており、バックウォーターはサンナビキ谷まで到達していないことが多くなっている。幕営箇所は二俣、右俣へ入ってすぐのところ、772m支流の付近がある。772m以降は良いところが無い。宇奈月へスムーズに下山するには1000m付近で左岸支流へと入り駒ヶ岳へと目指すのがいい。上手い事水流と溝を当てられるとヤブコギは無く登山道へ出られるだろう。筆者らは初日に772mで泊まり、一泊二日でちょうどよく下山することができた。

<装備>
カム0.3~1.0、ピトン少々。足回りは圧倒的にラバー有利。

<快適登攀可能季節>
8月~10月 水量、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし

<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。

<博物館など>
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。

<グルメ>
よか楼:昨今話題の町中華。コスパという卑しい概念を持ち出さなくても味で選べる良店。ジビエ料理も時折そろえる。

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