2024年8月22日木曜日

高瀬川 七倉沢














 日常的な宿題は勿論、夏休みや冬休みの宿題は全くやったことが無いが、自由研究という課題が初等~中等教育で与えられていることは知っている。学習指導要領が示すその意義・目的は知らないのだけれども、恐らく数学を含む自然科学、社会学、文学、芸術など本人の関心を持った事案に対して探求活動を行い、その成果物を提出するものと推測する。ダンス、音楽、インスタレーションといった成果物が容認されているのかは分からない。
 その自由研究の題材として最適ではないかと思うのが、「北アルプス南東面に分布する花崗岩について」だ。北アルプスの南というのは篭川以南を指し、東面というのは三俣蓮華、槍ヶ岳以東と定義する。なんで最適であるかというと、この山域は殆ど花崗岩なのだが、訪れてみるとビミョーに性質が異なる気がするのである。例えば有明山の花崗岩と高瀬川上流の花崗岩は風化度合いが違う。さらに細かく述べると唐幕の岩と東沢二ノ沢の岩も違う。課題として全然違うものを扱うより、ちょっぴり違う事をつぶさに調査する方が面白そうだ。夏休みが40日くらいで、雨が降らない日のみ活動したとしても25日間は確保できるので体力さえあれば相応の研究が出来るはず。雨の日は先行研究調査でもすればいい。
 さて、七倉沢である。七倉沢は後立山でも日帰り可能でポピュラーな沢のようなので研究最初の1本としては良いのではないかと思う。入渓すると白く輝く花崗岩が眩しい。ちょっとした小滝を楽しみながら登っていくとボルトが連打されたスラブ滝。あるものは使わせていただき登る。下部の岩の割れ目に沿って赤色の鉱物が含まれていてアート要素強め。まき散らされた紅色はさながらジャクソンポロックのドリッピングである。谷筋は段々と険悪な雰囲気を漂わせて時折ロープの使用を要する。どの地点であったか忘れたが、側壁が黒色の安山岩っぽい雰囲気になってくる。側壁が余りに立派なのでこれを冬に登ったら結構面白いんじゃないかと思わせる。1750m地点より先は変なスノーブリッジが断続的に続いていたので、すごすごと帰った。寡雪の8月に遡行したのだが雪が残っていたことを考えると、残雪がすべて消えるのは9月~10月なのだろう。1770m左岸ルンゼから広がる壁は花崗岩のようだったのだが果たして。
 途中までしか遡行していないが、風景と遡行内容は申し分なくエンタメ性は高いので楽しい沢であった。しかし、これを初等教育時点で行うのは難しい。9年間義務教育の自由研究を全て「The road to the granite of the Northern Alps」と称した研究にするのはどうだろう。序盤と中盤はトレーニングと事前文献調査及び観察手技とデータ処理手法の習得に充てる。トレーニングは歩きの登山から始まり、フリークライミング、山岳地のクライミングや沢登りを野外活動編として毎年活動する。併せて先行研究調査として登山道や入渓点での観察調査を毎年行って、精神と体力が充実してきた8年目と9年目には各沢を稜上まで遡行して実地調査である。保護者が40日間付き添うのは難しいので、近所の友人を1人から2人巻き込むことも検討したい。実際のところ、体力・知力・判断力等々が養える総合教育として最適なのではないか。夏休み終了間際の保護者の皆さん、初年度は研究ビジョンを表した計画書の提示のみでOKだと思うので是非取り組んでみてください。

<アプローチ>
七倉の駐車場に駐車して七倉岳へ続く登山道への道を少し歩いて入渓。入渓して直ぐのL字堰堤は右岸を大きく巻く。下降は登山道が楽。

<装備>
カム少々、ピトン各種。ラバーソールの方が圧倒的に有利な沢である。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。残雪が多い時期だと上部は雪渓歩きになるはず。とはいえ、時期が遅いと寒い。雪渓歩きを行う前提ならば7月がいいかも。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

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