尾添川荒谷は不遇な谷である。数多の名渓がある白山山域で詰め上げる中で標高は高くなく、登り終わってから入山口へと戻れる谷が存在しない。加えて登山道は無いし、廃道化した長い林道があるばかりときている。そして意外に長い行程は日帰りでは長いし、泊りだと持て余すことになり上部まで訪れる人が少ないのも無理はない。ところがどっこい、名前に反して渓相は美しくシャワークライミング、ちょっと悪い巻き、快適な幕営と総合的に沢登りが楽しめる良渓なのだ。
入渓して直ぐに堰堤が連続するが、右岸にあるドアを開けて隧道を登れば簡単に巻くことができる。序盤はゴーロ滝の合間に美瀑小滝が続く。そして岩質は飛騨帯変成岩でお隣の手取川右岸の沢と同じであることにも注目したい。一旦平らになる手前の700m付近はゴルジュ小滝のシャワーが爽快だ。どこだったか忘れてしまったが、右岸を嫌らしい巻きで交わした10mくらいの滝があったはず。傾斜が強く不安定なブッシュをホールドにして乗り越した。さー、あとはのんびりかなぁ。なんて思っていたら美的ゴルジュになってきて退屈させない。ゴルジュ内は全て突破可能で慣れていればロープは不要だが、適宜お助けヒモを使った方が安全だろう。1000m地点で穏やかな川原となり、今度こそ終わりかと思わせてから訪れる小滝、大滝、ミニゴルジュの素晴らしさよ。不思議なことに最後まで深い釜を持った小滝がありちょっと泳いだりしていい気分。のんびり出発してゆっくり登っていたら1174m付近二俣で時間切れ。それでも十分な充実感であった。
荒谷は全く荒れていない美谷であった。富山からはそんなに遠くないので初級沢からもう一つ踏み込む対象として是非訪れてみてほしい。日帰りが不安ならば幕営して楽しむのも良き計画だ。遠方から来る方ならば目附谷への入渓路バリエーションとして何卒ご活用願います。
<アプローチ>
スノーシェッドの合間にある荒谷出会いの駐車スペースを利用する。沢慣れしたパーティーならば、早立ち日帰りで1174m右俣~左俣を下降して林道を使って下山できるだろう。相応に充実するはず。荒谷中の幕営適地は1000m地点と1174m付近の二俣。車が二台無い場合は同ルート下降か林道を歩いて下降する。林道は車は全く通ることはできないが、歩くことはできる。ただし、現状それなりに藪っぽい。目附谷へ向かう林道の途中から登山道マークがあるが当然そんな道はない。ただし、この尾根は藪がそれほどでもなく意外に歩きやすいので下降可能。車が2台あれば小嵐谷を下降するのも面白い。また、カマボコ谷を下降すれば目附谷へと入れるので継続遡行の出だしにはぴったりだ。
<装備>
カム少々。ピトンも有ったらいい。
<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが酷い地域なので注意。
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