2025年8月25日月曜日

高瀬川 北葛沢二ノ沢

 
















 良い川には良い沢が集中している。北アルプスの南北に勝ち割ったように流れる黒部川と高瀬川。この2つの川での沢登りはどれも楽しく飽きない。いずれも猛々しく豪とした川でその支流は厳しくも美しい。両河川の上流は継続遡行が可能な地形となっており、これを繋げるのもまた面白い。
 高瀬川の一支流である北葛沢であるがその支流の地形も興味を引く。支流の中で最も長いのが二ノ沢である。北葛沢の核心を登ってから入渓するハードルの高さか、本流を遡行して満足してしまうのか、二ノ沢を登ったという話は聞かない。本流の遡行が素晴らしいことを知り、二ノ沢もきっと楽しいのだろうと期待が高まる訳である。

 二ノ沢遡行の前に本流の核心をこなすが、やっぱりこれが悪い。ゴルジュ内の左岸をホールドがそこそこ細かいうえに岩が脆い個所のあるフリークライミングとなる。ふー、と一息つく間もなく二ノ沢出合が滝となって出合う。これを見ると入渓を躊躇う気も分からなくもない。しかし出合の滝は意外に快適に登れて嬉しい。そこから両岸が高い河原にで何かでたらヤバい雰囲気となりやっぱり暗がりに大滝が架かる。暗狭に架かる二段15m滝は壮観で池ノ谷ゴルジュのようだ。取り合えず内部に入り観察したところ、垂壁を登ると傾斜が緩みコーナー状となり意外にやれそうだ。しかし、これまた本流に匹敵する悪さのフリークライミング。立木を利用して垂壁を登ってみると(流木が無いと下部は割とむずいボルダリング)緩傾斜帯は岩が脆い逆相フェース。一瞬積んだと思ったものの、カムとピトンを要所で効かせつつ何とかこなす。ぼろ岩テラスでのビレイポイント作成で再度積みかけたが探求の末マイクロカムとピトンでばっちり作れた。そこからボロイクラックを避けて右へトラバースしやっぱり悪いフェースを登ってブッシュ帯へ。この時点でクライミング的にお腹いっぱいだが、その後も小難しい小滝が出てきて嬉しいやら苦しいやら。巻きが容易な二段大滝が現れたりして全体の演出も余念がない。
 最初の屈曲点付近から川原が出始め気分的に楽になる。途中に取水堰堤か何かの人工物跡を発見し驚愕する。この地形では隧道を掘削したと思われるが建設時期も目的も謎である。右俣に入ると黒沢へと抜ける沢が美しい滝となって二つ合わさる。これを登ろうかと思っていたが固いスラブが続き難しそうだ。本流1870m付近で水が涸れスラブっぽい雰囲気になる。水がないこと、足回りがフェルトで登りづらいこと、トラブルがあったこと、本流で何か出たら時間がぎりぎり、天気が悪くなりそうなこと色々な理由から左岸尾根を藪漕ぎして黒沢へエスケープすることに。上部で岩壁帯が出てくるがブッシュが使えるので問題ない。あとは下降しやすい黒沢をのんびり4時間くらいかけて下る。

 二ノ沢は実は本流よりも水源の標高が高く後半パートも長い。しかも後半ガレが続く本流よりも浸食された形状の谷筋は中々プレッシャーがある。長さのある好ルートなのでいずれまた訪れよう。それにしても高瀬川流域に生息する冷水で繁殖する藻類は一体何者なのだろうか。湧水の沢や水の冷たい時期になると激ぬめりになるあいつら。そもそも北アルプスの藻類っておよそ何種類生息していて、いかなる多糖類がヌルヌルさせてて、どのような条件で増殖しているのだろう。他の山には暖かいほうが増殖してぬめる藻類もいる。遡行者と一番接触している彼らは謎に満ちている。

<アプローチ>
北葛沢入口付近にある路側帯に駐車して入渓。二ノ沢の幕営地点としては1250m~1450mの区間の適時、1600m付近である。他はあまりいいところは無さそう。
黒沢上部は水が涸れている。下降は容易で殆ど歩きだが水が出てくるとフェルトだろうが関係なく異常にぬめる。懸垂下降は大滝と最後の最後で合計2回くらいする。本流を詰め上げて一泊二日で黒沢を下降するとなると割と頑張る必要がありそう。水が出てきたら黒沢はいい雰囲気なので二泊三日で登るつもりの方がゆったりできるかも。三人パーティーでロープ1本だと一泊二日では無理だろう。どうしてもやりたい場合は複数本ロープ持参で戦略的にルートを進める必要がある。

<装備>
カム小さいのから#2まで一式、ピトン各種多め。足回りはラバーソール。荷揚げ用の30mロープを持って行き難しいクライミングの時に使った。クライミングシューズが有ってもいい。

<快適登攀可能季節>
8月~9月。残雪が多い時期だと上部は雪渓歩きになるはず。とはいえ、時期が遅いと寒い。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

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