2016年8月23日火曜日

庄川 釿谷







富山周辺で沢登りをやってきて、面白い谷の条件が朧げながら解ってきた気がする。その内容を以下に列挙する。

<地質>
・流紋岩(凝灰岩含む)の谷は期待大。地形や水量の多寡によらず当たりが多い。
・花崗岩の谷は非常に急峻であるか水量が豊富でないと土砂だらけになる。ただし古期花崗岩(毛勝岳花崗岩)のように生成年代が1億年以上古ければ堅い岩のスラブを楽しめる場合もある。
・立山溶岩台地の谷は小さくともザクロ谷のように緑の苔が生えて綺麗。
・飛騨帯変成岩の谷は予想しにくい。いってみて片麻岩が優位ならば楽しい事が多い。さらに方解石が豊富だと面白い形の石や滝が有る。
・堆積岩の谷は年代が古く変成を受けている場所に面白いところが多い。新しいところは土砂が多い場合が多い。

<地形>
・地形図で急峻に見えても平均的にずっと同じ傾斜であれば雪崩土砂によるゴーロが多い。
・大きめの支沢(一本調子)が同じ標高で数多く入っている場合は下部から土砂が多く、上部は荒れている事が多い。
・数少ない南面の谷は寒暖の差による雪崩土砂が多く谷自体が浅い事が多い。

まだ県内総ての谷を調査したわけではないので断言は出来ないが上記のような傾向にあると考えている。更なる情報・見解をお持ちの方、ご教授いただければ幸いである。

さて、庄川支流の釿谷である。以前より庄川本流を横断せねば取りつくことが出来ない場所の特殊性と刃物系の名称から興味は持っていたものの地質、地形どちらの面を考慮しても面白い谷である可能性は非常に低いと考えていた。しかし、自分の目で確かめるまで絶対は無い。近くの大芦倉谷、小芦倉谷はどちらも良渓であった。そして1/25000地形図区画「鳩谷」には間違いが多々ある事が解ってきた。そこでようやく重い腰をあげて、ライフジャケットを装着し庄川を渡る気になったのである。

息を切らし上陸して直ぐに「ああ、やっぱりか」とため息が漏れる。谷は土砂に埋まり踝までしか水が無い。そして地形図でゴルジュ状になっている下部の谷筋はそれほど狭くない。堪らず最短の支流を詰めて尾根に上がろうとするが、水量が少なすぎて藪が繁茂しており水が流れる不安定な足元でのヤブコギを強いられる。さらに上部は倒木が多くなり脛を強打しまくる。誠に容赦ない沢である。尾根に逃げると、急峻な地形のためか藪は少なくスムーズに巡視路に出る事が出来た。

楽しいばかりが自然そのものである訳は無いし僕もそれを求めてはいない。奇声を発し全力で悪態を突くことが許されるのも山だからであり、それはとても自由で素敵な時間である。僕は自由に笑いたいのだ。でなければ怒りたいのだ。そして自ら推察した因果性を検証する事ができて、とても有意義な時間を過せた。ありがとう釿谷。

<アプローチ>
国道156号は九十九折で時間が掛かる。値は張るが五箇山ICまで高速利用がお勧め。白川郷道の駅近くのトンネル横から小道に入り、釿谷の向かいまで車を入れる。斜面を降り庄川を泳いで取り付く。尾根まで出ると送電線巡視路があり有家ヶ原まで綺麗な道が続いている。車の回収は国道を歩く。五箇山、白川郷、利賀周辺は送電線巡視路が縦横に付けられている。どの巡視路も美しい自然林の尾根を辿る事が多く、歩いていて非常に気持ちが良い。今回もブナ林に癒された。秋の紅葉シーズンに巡視路を繋いでハイキングをするととっても楽しいと思う。その際には地図とコンパスで現在地をよく確かめて。

<装備>
ライフジャケット、浮き輪(庄川横断用)基本的にロープは必要ないような谷

<快適登攀可能季節>
7月上旬~10月中旬。紅葉の時期に行きたい。梅雨明け直後だと残雪があるし、真夏ではオロロに発狂する。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

<博物館>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。
囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していた。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。


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