2016年9月12日月曜日

小川支流 尾安谷












典型的な富山の悪い沢である。南面花崗岩の沢よろしく、倒木や土砂が多い。綺麗だとか癒し等の柔らかい言語表現が一切必要ない男気溢れる硬派な沢だ。流芯の磨かれた岩はちょっとした小滝でも手こずるし、大きめの滝を登るとなれば人工登攀やプアな支点でのフリークライミングとなる。下から見ても支点が取れるかさっぱり解らない中、一手一手進めるのは冒険的で心拍数の上昇が心地よい。滝は沢山あるので遡行者の登攀能力次第で幾らでも冒険ごっこが出来るのがこの沢の良いところといえる。連瀑帯で巻きを選択すれば沢ヤの感性が問われる。いかに楽に最短で安全なラインを素早く登るか、沢へ下降をすべきか巻き続けるべきか。地形を読み解く様はさながら謎々解きのようでこれもまた面白い。加えて季節に応じた植生の変化も感じられ趣があるものだ。

近年、再び突破系ゴルジュがブームとなってきている。道具の進化と遡行者のフリークライミング能力の向上により、流芯登攀突破が相対的に容易になったためだろうか。そこで思うのは、尾安谷のような「悪い沢」にも足を運んで欲しいという事である。大きな滝を記録に反して登攀を選択する高揚感や、生物としての勘を試される巻きは沢登りの濃厚なエッセンスだと思う。ゴルジュ突破はあくまで沢登りの一面である。詳細な記録を参照して登るとなれば、俄然観光っぽくなってしまうのだろう(それも楽しいけどね)。情報過多の昨今、人気の無かった巻き中心の沢にはまだ冒険は眠っているのかもしれない。

<アプローチ>
小川温泉駐車場に車を止めて林道を30分ほど歩き入渓。下山路は忠実に谷筋を詰めた場合、北側の相又谷へ下降する。合理的で楽なのは1094mピーク北側のコルから一本下流側の沢へ下降するライン。下降の沢は懸垂など一切要らないので1時間半程度有れば林道に戻る事が可能。このつめ上がる場所より上流もミニゴルジュの景観が楽しめるので、見てくると面白い。尾安谷中に快適な幕営適地は少ない。筆者らは770m付近にある25m大滝の巻き最中に見つけた平坦地に幕営した。

<装備>
カム一式、ピトン各種、ボールナッツの一番小さいサイズが有効であった。足回りはラバーソールが有効かもしれない。ただ、下降の沢はコケコケで滑った。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。南面とはいえ7月は残雪が残っている事が多い。標高が低い巻き中心の沢なので
10月位に紅葉を楽しみに行くと虫も少なく良いかもしれない。

<温泉>
小川温泉不老館:湯治用の旅館で日帰りは500円で入れる。豪華な旅館が横にあるがそちらは入った事はない。

<博物館>
下山芸術の森発電所美術館:時おり興味深い展示をやっている。冬季は休館するので注意。
魚津水族館:歴史有る水族館で主に県内に生息する魚を展示。こじんまりとしているが魅力的な水族館。可愛いPOP解説も面白い。
魚津埋没林博物館:でっかい木が沈んでいるだけなのだが、なぜか趣がある。
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。謎の置物も気になる。

帰りには生地の道の駅で新鮮な魚を買って帰るのもいい。

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