2018年2月27日火曜日

唐沢幕岩 西壁ルンゼ





西壁ルンゼは唐沢幕岩の中でもフリークライミングを楽しめる好ルート。西壁は幕岩の中ではスケールの小さい岩場で、登攀時間が短く済むので手軽に取り付く対象として丁度良い。氷結状態によって内容は大きく変わりそうだ。筆者らが登攀した際には氷の発達が今一つで、下部はスカした氷と草付きを味わった。遠めでペラペラに見えた上部の氷は意外にしっかりしており、変化に富んだアイスクライミングを楽しめた。

取り付いたタイミングは寒気が比較的強い年の2月下旬であったが、正面壁、西壁いずれも氷の発達は非常に寂しい状態であった。観察すると雪は非常に乾燥しており、しもざらめ化している。周囲の積雪は少ない。そして、この壁の構成は長いスラブで上部の雪田から末端までの距離は長い。氷が発達するには相応の融雪による水の供給が必要なのであろう。唐沢幕岩は北西面で風が強く日当たりが悪いため、雪は壁に付着しにくく雪温は維持されやすいと考えられる。寒波では低温の北西風が吹きつけ水の供給が為されないために氷の発達が望めないのではないか。さらに、筆者らが取り付いたシーズンは稀に見る里雪型寒波の年であった。総合すると暖冬でありながら、積雪量が程々ある年がこのスラブ壁のチャンスなのかもしれない。また観察を続ける楽しみができた。

千差万別変幻自在の自然には感心するばかりである。ほんの少しの違いのように思える事がまったく違った状況を生み出す。地球の表面に満ちる104.5°に曲がった分子の振る舞いを想像すること、これも冬期登攀の大きな魅力の一つだ。翻って、成人の質量は65%は水分子由来である。それゆえ、水についての知見を深める事は人間を知る事といっても65%は間違いではない。冬期登攀とは実に人間臭いキュートでポップな遊びだとしみじみ感じながら攀じるのである。

<アプローチ>
高瀬ダムの手前から唐沢を詰める。そこそこ雪崩の危険がある。堰堤にかかった梯子を登るのが核心。大町の宿は右稜に向う小ルンゼの右岸にある。トポでは大町の宿から右稜を越えてアプローチが記載されているが、唐沢本谷側からも取り付く事ができる。その方が自然な感じがする。下降は懸垂で同ルートを下降するのが安牌。富山市内から葛温泉まで下道でおよそ3時間くらい、糸魚川まで高速を使うと2時間30分くらい。

<装備>
トライカム適当、ピトン少々、アイススクリュー7~8本くらい(凍っていれば)。

<快適登攀可能季節>
2月~3月。ベルグラが発達しているほうが風情があるとおもう。寒波の入り具合では3月なのだろうか。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

<温泉>
上原の湯:400円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。600円。
みみずくの湯:白馬にある日本有数の強アルカリ泉。入って損は無し。

<グルメ>
昭和軒:大町駅近くにあるカツ丼の店。大盛りはプラス100円で凄い量が食べられる。

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