2019年1月19日土曜日

不帰東面 Ⅲ峰C尾根






Ⅲ峰東面のA,B,Cリッジ群は3月以降の雪が安定した時期に登られる事が多い。その方が快適で楽しい登攀が望めるので合理的だ。しかし、人間サイドの合理性と自然の摂理は何の相関性もない。虎穴入らずんばの精神で立ち向かわねば解らないことも沢山ある。難しいのは、虎穴かと思っていたら、虎だけでなく龍も居て大変恐ろしい思いをする可能性もある点である。大事なのは穴を見て中に何が住むか判別できる能力なのだろう。

C尾根は序盤に二つの岩峰を有し、そのどちらも普通に難しい。2つ目の岩峰のチムニーでは楽しいクラッククライミングが味わえる。その後に続く雪稜もすっきりしていて美しく、変化に富んだ面白いルートだ。厳冬期、風の影響を強く受ける稜線直下の東面となれば雪の付着は著しい。気温の上昇は大きくないので雪の沈降が遅く、登高は慎重に成らざるを得ない。登路設計での雪崩しにはスコップが有効だ。雪稜登攀は道具が進歩しても変わらない時代を超えた難しさがあり、それこそが醍醐味である。

不帰は西面と東面にクライミングエリアを有する貴重なエリアである。その両方を一度に登る事でまた違った味わいが出るものである。例えば霧氷の発達なんか興味深い観察対象である。不帰周辺は越中側からガスが発生しやすい上、風も良く通る地形のため霧氷が発生しやすい。過冷却水が風によって岩に当たり霧氷が発達するわけだが、その形成に温度、湿度、風向、岩の凹凸などがどのように関係しているか調べたら面白そうである。山で考えた後、家で行う実験としてはアクリル板の箱の中を冷却して、その中へ加湿器を使って水滴を送り込み扇風機で風を送ったら面白い実験ができそうだ。その中にジオラマ模型を作って東面・西面を再現し、積雪状況も再現できたら更にいい。となると少し大きな温調管理が可能な部屋と人工降雪機(雪質が調整可能なもの)が必要である。おおっ何だか山に行かずとも、山の事がわかるようになりそうだ。もう山なんか行くよりも家で実験だ!そのためにまず稼ぐための仕事だ!といって山登りを卒業する諸兄が多いか、というとそんな事は無く、もっと人の繋がり関連、所謂大人らしい事情で卒業していく。きっと私はいつまでも虎穴が有れば入りたいし、入らなくなってもどこの穴に何が生息しているか調査するだろう。無理なものは無理なので、今後は虎の穴の善き住人伊達直人を目指す事を目標としよう。

<アプローチ>
唐松本谷かDルンゼを下降する。唐松本谷の方が雪庇の張り出しが少なく下降し易いが、直ぐ隣が別の支尾根なので暗いと間違えるかもしれない。Dルンゼを下降すれば隣がC尾根で間違いないので間違いにくい。概念図通り谷が広まってから3本のリッジが平行している。

<装備>
カム少々、トライカム少々、ピトン少々、スコップ

<快適登攀可能季節>
12月下旬~4月。雪が付いてからが面白い。3月以降が登り易いのは間違いない。

<温泉>
みみずくの湯:日本有数の強アルカリ泉です。周辺の温泉は有名。入って損は無し。
倉下の湯:みみずくの湯を含む白馬八方温泉とは源泉が異なり、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉。価格も同じ600円なので気分応じて入り分けられる。

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