2024年9月17日火曜日

蛇谷 ジライ谷











 白山蛇谷支流の沢は言わずもがな素晴らしい。のだが、歩行禁止、自転車も禁止の有料道路とその開門時間制限のため登山者を寄せ付けない雰囲気に満ちている。日帰りが基本となるのも遠方からの登山者を遠ざける一因なのだろう。遡行内容が絶品なだけに惜しいものである。

 ジライ谷は取り付きにくい蛇谷支流群のなかでも、料金所ゲート手前であるため組し易い。遡行内容も蛇谷の中では易しめでありながら纏まっており期待を裏切らない。序盤は大岩の合間を縫ったクライミングで基本エンヤコラ系の登りとなる。シャワークライミングもあるので暑い日が良いだろう。ザラザラの岩肌が足底に吸い付くようで気持ちい。下部は飛騨帯変成系の岩だが、上部は流紋岩質となり少しだけヌメリと脆さが出る。標高1000mからはスラブ滝連瀑帯となる。右岸から巻き登りしたが、スラブ系の沢らしく甘くない。ここから中盤は気持ちの良い小滝登りと時々現れるナメを楽しもう。1418mピークに向かおうとしたら悪い滝が出てきたので少し戻って尾根を乗越す別の沢から途中谷へ降りる。上部は非常に降りやすいの助かる。途中谷は登られることは多くないけれども散発的に出現する滝の形は面白いのでこの山域の入門には悪くないかも。最後に堰堤が2つ出てくると取水導水の巻き道が現れ林道に出る。

 沢慣れしたパーティーならば早立ちして昼には終了するだろう。よく考えると富山からは海谷に向かうのと同じ距離と時間である。スタートが遅くなっても一泊するつもりで気軽に訪れるのもいいかも。

<アプローチ>
ホワイトロード(旧スーパー林道)の料金所手前のゲートが7:00~19:00に締まるようになっている。初日はどんなに早くても7:00からしか車が入れないことに注意。なお、前日からゲート内に入っていれば問題なく早立ちできる。或いは早朝にゲート手前に駐車して自転車で中宮展示館へ向かうのもいいかも。中宮展示館に車を駐車して蛇谷本流を少し歩いて入渓する。下降は途中谷が無難である。途中谷の下降は取り立てて難しくはないものの、慎重なクライムダウンと複数回の懸垂下降を要する。

<装備>
カム少々、ピトン数枚。足回りはフェルトでもラバーでも大丈夫

<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが酷い地域なので注意。

<博物館>
中宮展示室:一般的な日本の動物に関する展示は普通だが、中宮の歴史が面白い。出づくりでの生活や学校といった近代山人の生活を垣間見れる。昔から発刊している「白山の自然誌」は地域を概観するには好適で全号PDFで無料閲覧可能。いい時代だなぁ。

<温泉>
中宮温泉露天風呂:歴史1300年という由緒ある温泉で24時間入浴可能。ただし、洗い場やシャワーは無くもちろん石鹸も無い。飲用温泉としても用いられており、胃腸の霊泉と呼ばれる。確かにおいしい。源泉かけ流しなので体を綺麗にするというより温泉に浸かって楽しむスタイル。

2024年9月10日火曜日

中御所谷本谷










 中央アルプス屈指の名渓と称される中御所本谷である。屈指というのは指折りという意味なので、手足含め20位以内のランカーという事になるのだが、日本人の慣用的には5位乃至は10位以内ではないだろうか。中御所谷への名声は聞くもののあんまり乗り気にはなっていなかった。強制的に乗り物を使わされる感があり、しかも頭上から丸見えとなると積極的にならない人が多いはず。そういう訳で、中御所本谷だけの為に訪れるのは勿体無いと考え、継続遡行スタイルで臨むことに。皆が行くから易しいと高を括っていたわけだが・・・

 日暮の滝という粋な名前の付いた大滝登りから遡行が始まる。いきなり思っていたよりもちゃんとクライミングとなり、意外~と思ったらそこから滝に次ぐ滝、美瀑揃いの沢屋天国である。しかもどれも大きくてロープなしで登るには嫌らしい雰囲気で油断ならないと来ている。順層かと思いきや逆層になってみたりするので、情報無しでは安易にロープなしで取り付くのは怖い。アプローチが良い名渓にありがちな残置が少ないのも心地いい。中盤のゴルジュ大滝連瀑は圧巻である。ここは唯一踏みあとがしっかりしていて気楽に見物できた。気持ちの準備をしていないので疲れてきたころにロープが要らない快適連瀑となる。そして最後は岩場に囲まれたカール内の絶景に飛び出す感動のフィナーレ。お花畑最盛期の7月だったなら更に素晴らしかった事だろう。

 中央アルプスの谷は詳しくないけども内容的には1番に成り得るのではないだろうか。全然簡単ではないので沢慣れした人も確実に楽しめる。他の沢からの継続は勿論楽しいけど、宝剣岳の岩場へ継続も魅力的だ。沢登りとクライミングを併せて週末を遊ぶのが良いと思う。そういえば、ロープウェイに乗ってみたら眺めも良いしビューンと速くて面白いものだった。並んで乗るこの感じはもしかしたら、もしかしてディズニーランドに似ているのでは。たまには乗り物乗車も発見があってよい。

<アプローチ>
一般的にはしらび平駅までバスを利用して遊歩道を歩いて入渓するそうだ。筆者らは梯子ダルから継続したので、濁沢を下降してそのまま取り付いた。上部に人が沢山常駐しているので、沢の水は飲まない方が良さそう。下山はロープウェイを使うとあっという間。

<装備>
カム一式、ピトン少々。足回りはラバーが有利。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。標高が高いので秋は寒さに注意。

太田切川 梯子ダル













 登山大系は空前絶後の名著であるが、何が面白いかというと愛に溢れた印象的なフレーズが随所に見られる点にある。その愛は偏愛そのものなのだが、ルートガイドというその特性を鑑みて自制抑制的に発露している点がくすぐられる。中央アルプスの概説においては「岩稜の北アルプス、森林の南アルプス、渓谷の中央アルプス」の文言が冴えわたる。そんな事言っている人にはついぞ出会ったことが無い。大体、北アルプスにも南アルプスにも名立たる渓谷があるではないか。中央アルプスにも森林だって岩稜もある。そう、ただ中央アルプスと沢が好きな人が書いているのである。他にもすべての渓谷を何かにつけて礼賛する雰囲気が漂っており、ポジティブなバイブスで登山者を好きな山へ誘う作戦が丸見えだ。

梯子ダルは伊那谷を代表するルートとして挙げられているので、富山からでも行く価値があるのだろうと察したわけである。ダルというのは信濃では滝を指す言葉のようで、黒部にも何々のタル沢といった地名がある。ちなみに谷は西日本、沢は東日本と使い分けられており、その境目が剣・黒部である点も忘れてはならない。梯子ダルというのは梯子のように滝が連なる意なのであろう。梯子ダルはいきなり見栄えのする大滝で出合っている。左から登れると美しいのだが、水圧に負けそうなので見た目の悪いボロ壁から取り付いた。ちょっと怖いけど困難は無い。それから2000mくらいまで滝に次ぐ滝で直登したり巻いたり、程よい難しさが続く。直登する滝は問題ないが、巻きはラインを誤ると少し面倒なことになるかも。2000mから先はガレとなったのち、ぼさっとしたカール状地形に消える。沢慣れしているパーティーならば早立ちすれば割と余裕で日帰りできるだろう。折角富山から遠出するのであれば檜尾岳まで登ってから太田切川へ下降して継続遡行、濁沢を下降して中御所谷方面へ継続などしたい。

伊那谷を代表するルートである梯子ダルは本当に素晴らしい沢であった。登山大系は他にも中央アルプス屈指、第一級、変化に富んだ、遡行者を失望させない等、誘い上手な書きっぷりなので中央アルプスへの意識は高まるばかりである。特に失望させないということはどういう事なのか(面白いならそう言えばいいのに)検証したいところだ。

<アプローチ>
空木岳登山口の駐車場(スキー場)に駐車する。そこから歩くかバスに乗って檜尾橋まで行き、取水堰堤への道を利用して入渓。幕営適地は中間部に相応の場所はある。滝場を抜けてからはガレとなるのでいいところは無い。梯子ダルだけを登るのであれば早朝発日帰りで登るのが良い。下山は登山道を降りるのが楽。筆者らは中御所谷へ継続したので登山道の2520mのコルから濁沢へと降りた。この下降は酷いガレだが難しくは無い。

<装備>
カム一式、足回りはラバーが有利。ピトンは使わなかった。クライミングシューズは要らない。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。標高が高いので秋は寒さに注意。

2024年8月27日火曜日

瀬波川 瀬波倉谷








 山登りでは予断が適切でなければ危険である。将来を予見し妥当と推量する行動を選択するのが基本筋。しかし、あんまりにもマージンを取りすぎると何もできなくなり、ちっとも面白くない。

 瀬波倉谷の地形図だけを見て面白そうと予想するのは困難である。傾斜はそれ程強く記載されていないし、高低差も高々550mだ。短いし面白くなさそう。と予断を許すと勿体ない。入渓して直ぐに硬い岩盤が露出し深い釜があることに驚く。北側の直海谷川の上流域に近い岩質だろうか。集水面積が小さいものの、ゴルジュもナメもあり貫禄のある渓相である。小滝のクライミングは簡単なので水を浴びながら楽しく進める。水流は幾つも分かれているが、今回は851mのハチブセ山を目指す。最後は藪漕ぎが少なそうなルンゼを嗅ぎ分けて進むと登山道へ出る。この稜線は888.6m三角点のあるオンソリ山へも登山道が拓かれておりアプローチは良い。そして稜線の植生は多様な植物が残る原生林風なので歩いていて面白い。ここは四季を通じて歩いたら多くの発見が有りそうな道である。富山県西部~白山山域の標高1500m以下の森があらゆる山の中で最も好きな場所かも知れない。

 登山道を使って下降をしたところ、遡行を含めて大体2時間半で登山活動が終了した。これほどライトで充実するルートも多くはあるまい。日の長い時期であれば出勤前に登山することも可能なのでは。雨の日や白山里の温泉旅行と併せてなど多くの場面で楽しめるだろう。

<アプローチ>
ハチブセ山の登山口となる白山里の近く駐車スペースを利用する。下山は登山道を利用するのが楽。

<装備>
沢慣れしていれば何もいらない。

<快適登攀可能季節>
5月~10月。オロロが酷い地域なので注意。

<温泉>
白山里:瀬波川から最寄りの温泉。こじんまりした綺麗な温泉で450円とリーズナブル。地元の野菜が大量かつ安価で売っていていい。

2024年8月22日木曜日

高瀬川 七倉沢














 日常的な宿題は勿論、夏休みや冬休みの宿題は全くやったことが無いが、自由研究という課題が初等~中等教育で与えられていることは知っている。学習指導要領が示すその意義・目的は知らないのだけれども、恐らく数学を含む自然科学、社会学、文学、芸術など本人の関心を持った事案に対して探求活動を行い、その成果物を提出するものと推測する。ダンス、音楽、インスタレーションといった成果物が容認されているのかは分からない。
 その自由研究の題材として最適ではないかと思うのが、「北アルプス南東面に分布する花崗岩について」だ。北アルプスの南というのは篭川以南を指し、東面というのは三俣蓮華、槍ヶ岳以東と定義する。なんで最適であるかというと、この山域は殆ど花崗岩なのだが、訪れてみるとビミョーに性質が異なる気がするのである。例えば有明山の花崗岩と高瀬川上流の花崗岩は風化度合いが違う。さらに細かく述べると唐幕の岩と東沢二ノ沢の岩も違う。課題として全然違うものを扱うより、ちょっぴり違う事をつぶさに調査する方が面白そうだ。夏休みが40日くらいで、雨が降らない日のみ活動したとしても25日間は確保できるので体力さえあれば相応の研究が出来るはず。雨の日は先行研究調査でもすればいい。
 さて、七倉沢である。七倉沢は後立山でも日帰り可能でポピュラーな沢のようなので研究最初の1本としては良いのではないかと思う。入渓すると白く輝く花崗岩が眩しい。ちょっとした小滝を楽しみながら登っていくとボルトが連打されたスラブ滝。あるものは使わせていただき登る。下部の岩の割れ目に沿って赤色の鉱物が含まれていてアート要素強め。まき散らされた紅色はさながらジャクソンポロックのドリッピングである。谷筋は段々と険悪な雰囲気を漂わせて時折ロープの使用を要する。どの地点であったか忘れたが、側壁が黒色の安山岩っぽい雰囲気になってくる。側壁が余りに立派なのでこれを冬に登ったら結構面白いんじゃないかと思わせる。1750m地点より先は変なスノーブリッジが断続的に続いていたので、すごすごと帰った。寡雪の8月に遡行したのだが雪が残っていたことを考えると、残雪がすべて消えるのは9月~10月なのだろう。1770m左岸ルンゼから広がる壁は花崗岩のようだったのだが果たして。
 途中までしか遡行していないが、風景と遡行内容は申し分なくエンタメ性は高いので楽しい沢であった。しかし、これを初等教育時点で行うのは難しい。9年間義務教育の自由研究を全て「The road to the granite of the Northern Alps」と称した研究にするのはどうだろう。序盤と中盤はトレーニングと事前文献調査及び観察手技とデータ処理手法の習得に充てる。トレーニングは歩きの登山から始まり、フリークライミング、山岳地のクライミングや沢登りを野外活動編として毎年活動する。併せて先行研究調査として登山道や入渓点での観察調査を毎年行って、精神と体力が充実してきた8年目と9年目には各沢を稜上まで遡行して実地調査である。保護者が40日間付き添うのは難しいので、近所の友人を1人から2人巻き込むことも検討したい。実際のところ、体力・知力・判断力等々が養える総合教育として最適なのではないか。夏休み終了間際の保護者の皆さん、初年度は研究ビジョンを表した計画書の提示のみでOKだと思うので是非取り組んでみてください。

<アプローチ>
七倉の駐車場に駐車して七倉岳へ続く登山道への道を少し歩いて入渓。入渓して直ぐのL字堰堤は右岸を大きく巻く。下降は登山道が楽。

<装備>
カム少々、ピトン各種。ラバーソールの方が圧倒的に有利な沢である。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。残雪が多い時期だと上部は雪渓歩きになるはず。とはいえ、時期が遅いと寒い。雪渓歩きを行う前提ならば7月がいいかも。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

2024年8月21日水曜日

中房川 深沢右俣

 










 有明山は四季折々登っても楽しい山だと思う。春はシャクナゲ、夏は沢登り、秋は紅葉、冬はクライミング。高すぎず、低すぎない標高に付けられた変化に富む登山道も魅力的だ。

 深沢右俣は花崗岩の美しいナメ滝と豪快な大滝が連続する出色の谷である。集水面積が少ないため水量は少ないが、これにより水の流れが速くない。これがナメを美しく際立たせている。ナメの箇所は開けた地形でスケールを感じられるのが良き演出である。ゴルジュ地形も序盤と終盤に配されており嬉しい。どの滝も楽しいクライミングだが草付きを掘り起こしてネイリングすることに成れていないとランナウトする。目ざとく草をはがしてピトンを打ち込んでいこう。右俣へ入って直ぐの大滝を越えてから崩壊箇所が多くなる。ガレとザレが堆積していて危ないのでビレイヤーの位置には注意したい。詰めがヤバそうな地形図の書きっぷりだけども実はそうでもなく割合快適に山頂に到達できる。

 中だるみすることない切れのある沢であった。沢登りシーズンが長い地域なので、初夏~晩秋の期間でも登る印象は変わるのだと思う。緑きらめく初夏と山燃える秋にも登ってみたいものだ。

<アプローチ>
観音峠の駐車スペースに車を止めて斜面を適当に歩いて入渓。幕営適地は右俣へ入ってからすぐの大滝を登ってから直後に現れる台地。進み過ぎるとガレがひどく不快と思う。下山は登山道が無難。中房川へ降りると早いが、黒川沢側へ降りると随分時間がかかる。沢慣れしている者同士で日帰りで登るのが快適なんじゃないかと思う。

<装備>
カム一式、ピトン各種(アングルやユニバーサルがよく効く)。ラバーソール、フェルトソールどちらでも行けるが、ラバーソールの方に利があるかも。クライミングシューズを持って行く方がいい。

<快適登攀可能季節>
6月~10月。雪の少ない地域の低山ゆえシーズンは長い。夏はブヨが多い地域なので、秋が良いかも。

<温泉>
しゃくなげの湯:かつてあった公共日帰り温泉施設が無くなってどでかい温泉となった。入浴料は土日と平日で異なる。

すずむし荘:単純弱放射能温泉(ラドン温泉)でさっぱりとしたお湯。内湯、露天ともに綺麗で快適である。